ニュースのポイント
会社に入ると、ふつうは厚生年金に入ります。高齢になったときには、厚生年金は頼りになる収入です。でも、従業員を厚生年金に入れていない会社もあります。本来は入れないといけないのに、保険料を負担するのがいやで、入れないわけです。厚生労働省はこの「加入逃れ」をなくそうと、加入指導を強化しています。みなさんが入る会社がもし従業員を厚生年金に入れていないと、高齢になったときに年金がなかったり、とても少額の年金しかもらえなかったりします。きちんとした会社ならそんなことはないのですが、念のため、入ろうとする会社の従業員が厚生年金に入っていることを確認しておいた方がいいと思います。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)
今日取り上げるのは、3面の「『厚生年金逃れ』9万社が加入/厚労省指導」です。
記事の内容は――厚生年金の加入資格があるのに入っていない約24万人の未加入が解消された。対象は9万事業所余りに上る。厚生労働省は「加入逃れ」を約200万人と推計し、国税庁の課税情報を共有して加入指導を強化している。日本年金機構が2日、年金業務を監視する有識者の部会に報告した。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
厚生年金は会社員や公務員約4千万人が加入している公的年金です。自営業の人が入っている国民年金に上乗せして払われますので、国民年金よりたくさんの金額をもらうことができます。
原資となる厚生年金保険料は、加入者と会社が半分ずつ払います。国民年金と同じ金額の部分は基礎年金と言いますが、こちらの保険料には国の税金が半分入っています。つまり、厚生年金は、自分が払う保険料に会社負担と国負担が加わっています。このため、平均年齢まで生きるとすれば、自分が払った分より、受け取る分の方が大きくなります。かつては、受け取る分が払った分の10倍くらいありましたが、高齢者の数が増えたりデフレになったりしてだんだん減っています。今の20歳の人は、2~3倍くらいと試算されています。それでも受け取る方がずっと多いのですから、厚生年金には入らないと損だと思います。
ところが、厚生労働省が調べると、従業員に資格があるのに事業者を入れていない「加入逃れ」が横行していて、約200万人が未加入と推計されました。こうした人は将来厚生年金は受け取れず、国民年金か無年金になります。厚生年金は平均的な収入の人で毎月39000円(雇い主も同額)の保険料を40年間払うと、月約15万6500円を受け取れますが、国民年金は月約1万6000円の保険料で、受給額は満額でも月約6万5000円です。
会社がどうして従業員を入れないかというと、保険料の半額を払わないといけないからです。「経営が苦しいのにそこまで面倒見切れない」というわけです。もちろん大企業の中に「加入逃れ」はまずないと思います。でも中小企業の中には、一定数はあるようです。厚生労働省が集中調査を進めているのは、79万もの会社です。すでに、そのうちの9万社が「加入逃れ」をしていたことを突き止めて、加入させたそうです。
中小企業に入る場合は、聞きにくいかもしれませんが、「念のための確認ですが、厚生年金には入っていますよね」という質問はしておいたほうがいいかもしれません。
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