2016年03月03日

「子どもの貧困」にみる数字の力…数字を使いこなせる人が就活に勝つ

テーマ:就活

ニュースのポイント

 6人に1人の子どもが貧困状態にあると言われています。「平成27年版子供・若者白書」によると、子どもの相対的貧困率は1990年代半ばから上昇し、2012年に16.3%と過去最悪になりました。「6人に1人」というのはこの結果から弾き出された数字です。この数字が社会に与えたショックは大きく、2013年には「子どもの貧困対策法」が成立しました。そして、この法律に基づき作られたのが「子供の未来応援基金」です。子どもの貧困を解消するための支援策の一つですから、歓迎されこそすれ、批判されるようなものではないと思いますが、その基金が国会でやり玉に挙げられてしまいました。なぜでしょうか。(副編集長・奥村 晶)

 今日取り上げるのは、総合面(4面)の「子ども貧困基金 2億円使い寄付2千万円/民主・蓮舫氏『費用対効果悪い』」です。
 記事の内容は――子どもの貧困対策のために寄付を募る「子供の未来応援基金」をめぐり、民主党の蓮舫代表代行は2日の参院予算委員会で、費用対効果の悪さを指摘した。2億円以上の税金を用意して呼びかけているのに、集まった寄付は約2千万円。蓮舫氏は「2億円を基金に入れれば良かった」と訴えた。基金は2015年10月に創設、集まった資金を子どもの支援活動をするNPOの支援などに充てる計画。政府はポスターの制作やフォーラム開催のほか、インターネット広報関連などで約2億円の予算をあてるが、寄付は2016年2月現在で約1949万円しか集まっていない。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 みなさんは「相対的貧困」とはどういう状態を指すのかわかりますか。「相対的貧困」は、モノやお金がないだけでなく、普通とされる生活が送れない、人間らしく生きる力や機会が奪われた状態と言われます。
 2015年12月には日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる試算で、「子供の貧困」を放置すると、1学年あたり、経済損失は約2.9兆円、政府の財政負担は1.1兆円増えるという調査結果が公表され、大きな話題になりました。子ども時代の経済格差は教育格差を生み、それが将来の所得格差につながり、その結果、貧困状態を放置された子どもが社会に出ると、十分な生活費を稼げなかったり、社会保障に頼ったりする可能性があり、社会全体としても損失が大きいという話です(右は「子供未来応援基金」の広報ポスター。ミッフィーでおなじみのディック・ブルーナ作品を起用=内閣府提供)。

 「最近、給食代を払えない家庭がいっぱいあるらしいよ」といったあいまいな情報より、「6人に1人の子どもが貧困」「放置すると財政負担1.1兆円」などと聞くと、これは大変な問題だ、ということが多くの人にわかりやすく伝わります。数字の力は偉大ですね。

 就活でも、自分の強みや志望動機などを「○○のイベントで300人動員しました」「1年間でTOEICの点数を530点から800点に上げました」など、数字を使ってアピールすると、より説得力が増すものです。実際、「人事のホンネ」に登場した大手IT企業の採用担当者も、求める人材について「数字的な根拠を常に持ち、論理的な思考力を働かせられる人」と話しています。

 さて、今回の「子供の未来応援基金」です。2億円使って2000万円しか集まっていない……。数字を使ったわかりやすい批判です。確かに寄付の仕組みがスタートしてまだ半年も経っていません。大手スーパーのレジなどで寄付が受け付けられるようになったのはこの3月からです。政府による広報活動によって、寄付をするという行動までは起こさなかったけれど、「子どもの貧困」について考え、自分の身の回りでできることはないか、と支援に乗り出した人もいるかもしれません。それは数字には表れません。

 それでも私自身は、この「たった2000万円」という数字は、この国の大人全員に突きつけられた刃(やいば)のように感じました。この国の大人たちは本気で子どもたちの明るい未来のことを考えているのか、と。

 現時点で、寄付金の多寡だけを取り上げるのは数字の適切な使い方とは言えない気がしますが、極端な数字だったからこそ新聞記事にもなり、私を含め、この記事を読んだ大人が、危機意識をより強く持てたとしたら、これまた数字の効能といえるかもしれません。

 これからの就活、社会人になってからのビジネス、さまざまな局面で数字による説明が役立つことがきっとあります。そのとき数字を一面的に捉えず、論理的に使いこなせるか、手始めに自分のこれまでを数字を使って表現する練習を始めてみましょう。

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