ニュースのポイント
カレーチェーン「CoCo(ココ)壱番屋」を展開する壱番屋(愛知県一宮市)の冷凍カツで発覚した廃棄食品の横流し問題を受けて、食品にかかわる企業が再発防止策を講じています。一方で、まだ食べられるものが捨てられる「食品ロス」を減らす試みも広がっています。食品、流通、小売りなどを志す人にとっては大事な業界・企業研究の題材ですが、他の業界にも関係する会社があります。社会貢献にもつながるテーマです。(編集長・木之本敬介)(ロゴは、食品ロスを減らすために博報堂がつくったマーク=同社提供)
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「食品廃棄 向き合う企業/現場確認 値引き『レスキューシール』」です。
記事の内容は――壱番屋は今後、廃棄委託の際には①包装から出し生ごみと混ぜる②できない場合は最終処理まで社員が立ち会い目で確認する、といった再発防止策を取る。横流しは約60品目で確認され、冷凍食品のニチレイやみそのマルコメも似た対策を公表した。環境省も再発防止策の検討に入り、処理の監視を強化したり、転売できない形で廃棄にまわるよう排出業者に要請したりする。より根本的な対策として廃棄量を減らすことも要請する構え。国内の事業者から出る食品廃棄物は、農水省によると2013年度時点で1927万トン。2008年より17%少ないが、さらに減らすことをめざす。賞味期限や消費期限が近い値引き商品に「フードレスキュー」のシールをはり、「捨てられる前に買って」と勧める取り組みが大手スーパー、イオンの葛西店で始まった。シールをつくった博報堂の担当者は「お得なだけでなく社会貢献につながると訴えたい」と話す。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
問題をおさらいします。愛知県の産廃業者が、壱番屋から産業廃棄物として処分を依頼された冷凍カツやフライドポテト、総菜を卸売業者に横流し。スーパーの店頭に並びました。カツには異物混入の恐れがありました。産廃業者からカツを買って転売した岐阜県の業者の施設からは、ほかにも108品目が見つかり、マルコメやニチレイなどの商品も含まれていました。
食品が廃棄される理由は、規格外や過剰在庫、商品のリニューアルで店頭から撤去する「定番カット」、外食産業での仕込み過ぎなど様々です。さらに、「3分の1ルール」という食品業界の商習慣があります。製造から賞味期限までの3分の1を過ぎた商品は小売店へ納品できず、小売店は3分の2を経過した時点で店頭から下げるというもの。賞味期限が3カ月なら、2カ月を目安に「販売期限切れ」で返品や廃棄にまわります。かといって、スーパーや問屋にとって「品切れはお客様への裏切り」で、品切れを恐れて在庫を多くしがちだといいます。
1月末、朝日新聞の声欄(大阪本社版)に、京都府のコンビニ経営者からの投書が載りました。
「私の店では、1日に捨てる商品の額が1万円を切る日はほとんどありません。年間では大変な金額。出来るだけ廃棄を少なくする努力はしますが、そのために陳列商品まであまり少なくし過ぎると、競合他店にお客さんが移ってしまいます」「全国に何万店もあるコンビニで同様のことが繰り返されているのでしょう」
食の「安心・安全」は絶対に守られなければなりませんが、貧しくて日々食べるものに困っている人もいる中で、食べられるものが大量に捨てられている現状は変えなければいけません。食品流通システムや商習慣、賞味期限を見直したり、新しい仕組みをつくったりすることが必要でしょう。「フードレスキュー」もその一つです。また、ヤフーは先週、季節外れや賞味期限が近い商品をオークションサイト「ヤフオク!」で売り出すと発表しました。「食品ロス」を減らすため定価より30~90%安く販売します。
今日の記事には、食品ロスを減らすための法律が今月成立したフランスの取り組みが紹介されています。大型スーパーに、まだ食べられる食品の廃棄を禁じ、所得の低い人らに食品を配る慈善団体への寄付を義務づける内容。違反には罰金を科します。スーパー大手カルフールは、プライベートブランド400点の賞味期限を延長したり、寄付先の慈善団体との連携を強化したりしています。
日本でも、家庭や企業で余った食品を集めて生活に困っている人に届ける「フードバンク」という取り組みが全国で広がっています。「食品ロス」を減らすためには、フランスの試みも参考にしながら、政府や自治体、多様な業界、企業、NPOなどが協力して取り組む必要があります。身近な問題ですから、食品や流通業界志望者に限らず、どうしたらいいかを考えてみてください。
今日の朝刊の31面には、朝日新聞社とベネッセコーポレーションが実施している「語彙・読解力検定」の記事が載っています。6月の検定の受け付けが3月1日に始まります。3年生の就活には間に合いませんが、1、2年生のみなさんは今年受けておくと、エントリーシート(ES)や面接に生きますし、来年書くESでアピールすることもできます。オススメです。
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