ニュースのポイント
プロ野球の各球団は、球場を魅力的に改造して野球事業の黒字化をはかっています。入場料収入を増やすのはもちろん、球場内外でお金をもっと使ってもらうさまざまなアイデアを実行に移しています。「赤字の球団を黒字にしたいと思います。あなたならどうしますか」という問いは、就活の際、面接やグループ討論のかっこうのテーマになりそうです。練習問題として、いろいろと考えてみてはどうでしょう。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)
今日取り上げるのは、経済面(10面)の「そうだ 球場、行こう/DeNA、ハマスタ株取得/各球団 誘客にあの手この手/靴を脱ぐ座席・高さ36メートル観覧車・お好み焼きテラス」です。
記事の内容は――DeNAは21日、球団本拠地の球場運営会社「横浜スタジアム」(横浜市)への株式公開買い付け(TOB)が成立した、と発表した。28日付で連結子会社とし、球団との一体運営で野球事業の黒字化をめざす。「球場で稼ぐ」動きは、他球団にも広がっている。DeNAは家族で楽しめるイベントを増やし、靴を脱ぐ座席をつくるなど改修にも工夫をこらす。運営会社の買収は、球場での施策を矢継ぎ早に打ち出しやすくする狙いがある。楽天は、本拠地であるコボスタ宮城の大規模改修を進行中だ。目玉は高さ36メートルの観覧車で、約2億円かけて5月にお目見え予定。外野席一帯を公園のように整備して収容人数も増やす。広島の本拠、マツダスタジアムでは、お好み焼きなどを焼きながら観戦できるバーベキューテラスが人気。ヤフオクドームは貴賓室をイメージした豪華な観戦部屋をつくり、食事とともに企業などへ売り込む。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
日本のプロ野球の球団は、長らく親会社の広告塔と位置づけられてきました。ダントツの人気だった読売巨人など一部を除けば、球団は基本的に赤字でもいいという構造が定着していました。しかし、2000年代前半に1リーグ構想が真剣に議論された頃から、球団も黒字にならないと生きていけないという意識が強まってきました。そこで各球団の収入増への努力が出てきたのです。
まず、やるのは、入場者を増やすことです。その一つが、本拠地(フランチャイズ)を変えることでした。日本ハムは、2004年に東京から札幌に本拠地を移しました。2005年に新規参入した楽天は、仙台に本拠を置きました。それまで球団のなかった土地に球団ができると、熱いファンが急増しました。日本ハムは、あっという間に年間100万人を超える観客を集め、200万人近くに迫った年もありました。楽天も年々観客を増やし、昨年は152万人でした。
また、広島は2009年に新球場が完成し、以降入場者は着実に増えています。本拠地を移転したり、新球場に移ったりすると、新しいことをするいい機会になります。広島のマツダスタジアムでは、バーベキューをしながら野球を見ることができたり、寝そべって野球を見たりすることができる席を設けました。札幌ドームやコボスタ宮城は、グラウンドにせり出した観客席や子供を遊ばせながら野球を見られるキッズパークなどをつくっています。さらにコボスタ宮城は外野席に観覧車をつくることにしており、世界でも珍しい観覧車のある球場になりそうです。DeNAが球場を買収するのも、魅力のある球場に改修するためで、これから斬新なアイデアが出てくるものとみられています。
収入増には入場者を増やすほかに、グッズや飲食に力を入れたり、広告で稼いだりすることも必要になっています。テレビの地上波放送が少なくなり、放映権料に頼れない分、球場に足を運ぶお客さんを重視するという戦略は、どの球団も同じです。
アメリカでは、野球場のことを「ボールパーク」とよびます。まさに公園とか遊園地といった感覚です。そう考えると、まだまだ収入増につながるアイデアはありそうです。地面すれすれに目線のあるダッグアウトシート、サイクリングマシーンをこぎながら見られるジムシート、ドローンでの真上からの生映像を見られるドローンシート、風呂に入りながら見られる極楽シート。サービスとしては、ビールの売り子と5分間よもやま話のできるチケット、マスコットの着ぐるみを着て観客の前で面白いことができるチケット、ピッチャーが投球練習をしている間アンパイアができるチケット、外野手と外野スタンドでキャッチボールできるチケット、いろいろ考えられます。試合のショーアップとしては、投手はマウンド下からエレベーターでせり上がってくるとか、5回が終わると照明を消してグランド整備をする人たちにスポットライトを当てるとか、選手紹介の時にどうでもいい個人情報を付け加えるとか、強力な集音マイクで選手や審判、監督の声を披露とか、考えればいくらでも出てきます。
アイデア倒れも多そうですが、考えてみることが大事です。就活では、球団経営に限らず、あなたの経営感覚を問われることがあると思います。「こんな時、あなたが経営者ならどうしますか」と聞かれたときのために、時々「私ならこうする」ということを考える訓練をしておくといいと思います。
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