2016年01月21日

どうして株安? 世界経済の動きを読み解く

テーマ:経済

ニュースのポイント

 日本の株価の下落が止まりません。20日の日経平均株価は今年最大の下げ幅となり、昨年の最安値を下回りました。同時に日本企業の輸出には不利な円高も進み始めました。「株安円高」は、日本企業の業績に大きな影響を与えます。どうして株価が下がっているのか。世界経済の様々な事情が絡んでいます。株安の原因をやさしく読み解きます。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、1面の「東証 昨年最安値下回る/円急騰 1年ぶり115円台」です。経済面(9面)の「株空売り 過去最高水準/東証年末から2600円安/投機筋も圧力」も関連記事です。
 記事の内容は――20日の東京株式市場は売り注文が膨らみ、日経平均株価の終値は前日より632円18銭(3.71%)安い1万6416円19銭だった。昨年の最安値を下回り1年3カ月ぶりの安値。株価が大きく値下がりしたのは、原油安が進んだからだ。産油国の財政が悪くなるので、それらの国の政府系ファンドが持ち株をさらに売ったとみられる。外国為替市場では比較的安全な資産とされる円を買う流れが強まり円が急騰。ロンドン市場では一時1ドル=115円90銭台をつけ、約1年ぶりの円高水準となった。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
(グラフは1月19日付朝刊)

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 昨年の日本の株価は乱高下(らんこうげ)したものの、年末の終値は1万9000円を超えて19年ぶりの高値でした。ところが年が明けると、20日までの12営業日のうち値上がりしたのは2日だけ。年末の終値と比べると2600円以上値下がりしました。21日午前は値上がりしていますが、今後の動きは予断を許しません。

 図を見ながら読んでください。株安の直接の原因は、記事にもあるように原油安です。原油の価格は、米国などの「シェール革命」でシェールオイルの生産が急増し供給過剰気味だったところに、中国など新興国や欧州の景気減速でエネルギー需要が伸び悩み、急落してきました。さらに、先週末に決まった産油国イランへの経済制裁解除で原油の供給過剰が続くとの見方が強まり、さらに値を下げています。原油安が続くと、中東などの産油国は収入が減って財政が悪くなるため、これらの国の政府が運用する「政府系ファンド」は日本などの株式市場で買っていた株を売り始めました。これがエネルギーのほとんどを輸入に頼る日本では、多くの企業にとって原油安は当初は「追い風」だったのですが、回り回って世界の景気が冷え込んでしまっては元も子もありません。

 為替相場も影響しています。世界の政治や経済が不安定になると、比較的安全な資産とされる円は買われて「円高」になります。中国などの経済減速などで中国の人民元など新興国の通貨の価値が下がっていることも相対的に円の価値を高めています。日本には輸出で稼ぐ企業が多いため、輸出に有利になる「円安」は株高に、不利な「円高」は株安につながりやすい傾向があります。

 もう一つ、世界経済の転換点となったのが、昨年12月の米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げです(12月18日の今日の朝刊「米利上げ 就活も左右する?」参照)。それまではゼロ金利で世界の投資マネーはお金を預けてももうからないため、世界の株などに投資してきましたが、新興国経済の減速もあり、このお金が米国の金融機関などに集まり始めたのです。

 世界の経済は様々な事情が絡み合い、影響し合っていることがわかりますね。一つひとつの動きに日本企業も関わり大きな影響を受けていますから、世界経済の動きを知ることは業界・企業研究でもあります。志望業界への影響も考えてみましょう。

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