2016年01月06日

サウジvs.イラン 中東2大国の対立「イロハのイ」

テーマ:国際

ニュースのポイント

 中東の2大国、サウジアラビアとイランの対立が深まっています。両国はイスラム教のスンニ派とシーア派の中心的な国として長年対立してきた歴史があります。内戦、紛争をいくつも抱えている中東の情勢はとても複雑ですが、だからといって知らなくて済む話ではありません。日本にも影響がありますから、就活でも、どこかの場面で話題にのぼるかもしれません。そんなときに「難しいのでわかりません」という訳にはいきませんよね。今回のサウジ、イラン対立問題をきっかけに、中東問題のイロハを学びましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、1面の「サウジ、イランと断交/各国 仲介の動き」です。総合面(2面)の「いちからわかる!」、同(3面)の「中東 崩れる均衡」、国際面(13面)「シーア派抗議 飛び火」、オピニオン面(16面)「社説・サウジとイラン/中東安定に向け和解を」も関連記事です。
 記事の内容は――サウジアラビアとイランの対立に関して、ロシアやトルコが対話を仲介する考えを表明した。サウジによるイスラム教シーア派指導者ニムル師の死刑執行に対し、シーア派を国教とするイランは猛反発。首都テヘランで群衆がサウジ大使館を襲撃した。サウジはイランとの外交や経済関係の断絶を発表。バーレーン、スーダンも断交を表明。クウェートは駐イラン大使を召還し、アラブ首長国連邦(UAE)も召還を発表した。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 記事にあるように、今回の対立の発端は、サウジで反政府デモを主導したシーア派指導者の死刑が執行されたことです。怒ったイランの群衆がテヘランのサウジ公館を襲って放火するなどしました。これに対してサウジがイランと断交したわけです。背景事情を解説します。

◆スンニ派とシーア派 イスラム教の2大宗派で、世界に約16億人いる信徒の約9割がスンニ派。シーア派は約1割に過ぎないが、イランやイラクでは多数派を占める。イスラム教の開祖である預言者ムハンマドの後継者をめぐって違いが生まれた。指導者はムハンマドの血縁に限ると主張するシーア派に対し、こだわらずに信者の話し合いで選ばれた者がなるべきだとするのがスンニ派。コーランを聖典とし、聖地メッカを巡礼、年に1回断食(だんじき)するといった信仰の基本は変わらない。

◆サウジとイランの対立 スンニ派とシーア派の盟主をそれぞれ自任するサウジとイランは長年、覇権争いを続けてきた。王制だったイランは1979年に起きたイスラム革命で、イスラム法学者を中心とする共和制に。以来、これこそが正しい国のあり方だとして、各地のシーア派に武器や資金を援助してきた。サウジにも原油を産出する東部にシーア派が多く住んでいる。今回の発端の反政府デモも2012年に東部で起きた。

◆シリア内戦と「イスラム国」(IS) シリア内戦では、アサド政権を支えるイランに対し、サウジは反体制派を支援しており、両国の代理戦争でもある。シリアとイラクの一部を支配する過激派組織ISはスンニ派だが、サウジもイランも敵対している。今回のサウジ、イラン断交がISへの攻勢に影響するという見方もある。

◆イランの核開発問題合意 イランは長年、核兵器開発を疑われてきたが、昨夏、米英独仏中ロ6カ国と「包括的共同行動計画」で合意。国際的な経済制裁も解除される方向だ。図にあるようにサウジは米国の同盟国だが、米国とイランが接近するにつれてサウジは米国と距離を置き始めた。イランの核問題については「『イラン核合意』日本への影響、やさしく解説」(2015年7月15日の「今日の朝刊」)参照。

 遠い中東の話ですが、日本にとっても対岸の火事ではありません。サウジ、イランとも産油大国です。今は世界的に原油の供給過剰による原油安が続いているため、今回の断交宣言後も原油市場はほとんど反応しませんでしたが、日本は原油の8割を中東からの輸入に頼り、その大半がイランとアラビア半島を隔てるホルムズ海峡を通過しています。核問題合意でイランによる海峡封鎖の心配は減りましたが、いつどんな影響が及ぶかわかりません。商社、エネルギーなど輸入に直結する業界志望者に限らず、中東情勢のニュースをしっかりチェックするようにしてください。

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