ニュースのポイント
日本商工会議所(日商)が、就職活動の繰り上げを提言しました。とりあえず来年から、大企業は採用選考の開始を今年より2カ月早めて6月にしましょうというものです。日商は、全国の商工業者が加盟している組織で、多いのは中小企業です。大企業の採用選考開始が8月からになったあおりを受けて中小企業の採用活動も長引いています。一方、大企業の集まりである経団連の中にも今年の就活の長期化には問題があると考えている企業がたくさんあります。来年からの6月開始が決まったわけではありませんが、就活時期の再見直しが動き出したのは間違いありません。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)
今日取り上げるのは、5面の「就活繰り上げ 日商提言/長期化是正へ『選考6月に』」です。
記事の内容は――日本商工会議所は15日、大企業の新卒学生の採用選考の開始時期を来年は6月に繰り上げるよう、政府や経団連に見直しを求める提言をまとめた。今年はこれまでの4月から8月へ後ろ倒しされたことで、学業に大きな影響を与えたとしている。日商の三村明夫会頭はこの日の会見で、「(就活の長期化は)想定しなかったことだ。このままで継続するのはまずいので、勇気をもって改定を提案した」と述べた。8月への後ろ倒しは安倍晋三政権が「学生を学業に専念させる」とし、経団連に見直しを求めたのがきっかけだ。経団連加盟の大企業は今年から会社説明会の開始を大学3年の12月から3月に、選考開始を大学4年の4月から8月にずらした。正式な内定解禁は4年10月のままで、選考期間が大幅に短くなっている。その結果、これまでは大企業、中小企業の順だった採用時期が、逆転する現象が起きた。大企業の内定を得た学生が中小の内定を辞退する例が増え、中小の採用活動は長引いている。一部の大企業が大学3年の夏からインターンシップといった形で実質的な選考を始めたことも、学生の就活が長引く一因になっている。日商は提言で、いまの大学3年生は「混乱を最小限にする」ため、選考開始を6月に早めるよう求めた。いまの2年生以下は、経済団体や大学、政府が参加する検討会で検証し、さらなる見直しが必要と指摘している。一方、経団連はこれとは別に加盟企業への調査を進めており、「日商の提言も踏まえ検討していきたい」という考えだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
私は8月14日のこの欄で「就活スケジュールは見直し必至?1,2年生は特に注意を」という原稿を書きました。今年のスケジュールは、当初のもくろみと違って就活の長期化という結果を招きました。「学業に集中させる」という目的は逆に、「一段と学業に支障が出る」ことになりました。この原稿で私は「1,2年生は、今年のスケジュールが自分の時には適用されないかもしれないということを頭の片隅に置いていてもいいと思います」と書きましたが、現実は私の予想より早く動き出したようです。
1,2年生については、経済団体や大学、政府が参加する検討会を開き、本格的な見直しをする方向で動いています。ただ、今の3年生は本格的見直しには時間がありません。だから、今年と同じスケジュールでおこなわれるのかと思いきや、日商の提言は、3年生から暫定的に選考開始を2カ月前倒しするよう求めたわけです。それだけ切羽詰まっていると思われます。
日商は、加盟企業に中小企業が多いため、主に中小企業の意見を代弁します。中小企業は、大企業が選考を始める8月より前に内定を出しましたが、大企業の内定をもらった学生は中小企業の内定を辞退し、結局、中小企業は秋になってもまだ採用活動を続ける事態になっています。これは学生も企業も疲弊するだけなので、大企業の選考開始を2カ月前倒しして、これまで通り採用時期を大企業、中小企業の順に戻したいということです。
日商の提言がそのまま経団連に採用されるかどうか分かりません。ただ、今年からの新スケジュールが学生にも企業の採用担当者にも悪評だらけだったことは間違いありません。従来の4月と新スケジュールの8月の間をとって「6月から選考開始」とするのは、暫定的な措置としては受け入れやすい案かなと思います。
問題は、今の2年生から始まりそうな本格的な再見直しスケジュールです。検討前から予想するのをお許しいただくと、私は自由化の方向に行くのではないかと見ています。経団連加盟企業だけが協定を結ぶのは、今の時代、無理があります。企業には経団連に入っていない人気企業がありますし、外資系企業や魅力的なベンチャー企業もあります。学生にしても日本の大学生だけでなく海外の大学生を同列で採用しようとしている企業が増えています。最低限守るべきことを申し合わせた上で、あとはご勝手に、とせざるをえないのではないかと思っています。
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