2015年09月18日

就活で「やばい」使うとやばい? 若者言葉に気をつけて!(一色清の「今日の朝刊ウィークエンド」)

テーマ:文化

ニュースのポイント

 文化庁の国語に関する世論調査の結果が出ました。「やばい」という言葉の意味を聞くと、10代の9割が「すばらしい」といった肯定的な意味で使っているそうです。中年以上だと「やばい」は「ひどく悪い」といった否定的な意味で覚えています。言葉は世につれ、ということでしょうが、若年層が高年齢層とコミュニケーションをとる時には、こうした意味にギャップのある言葉は使わない方がよさそうです。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)

 今日取り上げるのは、社会面(37面)の「『やばい』→10代9割『すばらしい』/『保』の右下は木?ホ?――世代でばらつき/国語世論調査」です。
 記事の内容は――「やばい」は「とてもすばらしい」――10代の9割が「やばい」をすばらしい、良い、おいしい、かっこいいといった良い意味で使い、10年前より肯定的な使い方が広がったことが、文化庁の国語に関する世論調査で明らかになった。調査は今年1月から2月にかけ、全国の16歳以上の男女3493人を対象に行われ、1942人が答えた。「本来は盗っ人仲間が隠語として使っていた言葉。肯定的に使うことで、より印象づける表現として広がっているのではないか」と同庁の担当者はみる。一方、70歳以上は5%しか肯定的に使っていなかった。いいか悪いか判断がつかないときに「微妙」と言うことがある人は全体で66・2%に達した。「相手への気配りを示し、自分の責任を回避するのに便利な言葉なので幅広い年代で使われている」と分析する。「うざい」は10代の8割近くが使う一方、30代以上は5割未満と年齢が上がるにつれ、控える傾向にあった。また、「おもむろに」という言葉を、本来の意味の「ゆっくりと」と答えた人は44・5%で、「不意に」と答えた人は40・8%だった。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 言葉の使い方は時代によって変わります。あの東進ハイスクールの林修先生は「『とても』は、昔は否定的な言葉の前につける言葉でした。それが徐々に肯定的な言葉の前にも使われるようになったのです。芥川龍之介も肯定的な使い方をしていますから、かなり昔の変化ですが」と言います。つまり、昔は「とてもよくない」はありましたが、「とてもいい」はなかったということです。

 他にも、私が最近気になるのは「全然大丈夫」といった表現です。今の若者は「全然」を単に強調する意味で使っていますし、かの夏目漱石も作品の中で「全然」という言葉を否定語ではない言葉とつなげて使っています。ただ私は、「全然」のあとには「ダメ」というような否定的な言葉でないとしっくりきません。

 「微妙」は新しい使い方が広まった例です。どちらかはっきりしない時に「微妙」と言いますが、それは「ビミョー」とカタカナで書いた方がしっくりする使い方で、昔はそんな使い方はありませんでした。
 「真逆」は、私は新語のような気がします。最近は、テレビでも正反対のことを「真逆」とよく言っていますので、定着しつつある言葉なのでしょうが、少なくとも私の若い頃にはない言葉でした。

 うちの子どもの小学生が最近よく口走る言葉は「かみってる」です。算数の難しい問題ができると「オレって、かみってる」と使います。どうやら「神がかっている」の略語のようです。最近、「神対応」とか単なる「神」とか、ネット上の言葉として「神」がよく使われますが、その影響のようです。

 こうした新しい言葉や言葉の使い方は、若者から広がります。それを「間違っている」として社会から駆逐しようとする必要はないと思いますし、だいたい駆逐できるものでもありません。言葉は変化するものとして受容するしかありません。ただ、就活では、変化途上の言葉は使わない方がいいでしょう。面接者は、大人です。最終面接までいけば、もう熟年者です。若者言葉は理解できないか、理解できても未熟者と見られるのは必至です。「御社はやばいと思っています」「英語は全然大丈夫です」「地方勤務はビミョー」などとは言わない方がいいと思います。

 また私自身の面接者経験から付け加えますと、重言といって意味が二重になる言葉も気になります。例えば、「機械をつくるメーカー」「志望業界を目指す」「今朝の朝刊」「まだまだ未熟」「危ないリスク」「お金を入金」「ディスカッションで議論する」などなど。割と気がつきにくい表現ですが、気がつく人は「言葉遣いがダメだな」と印象に残るでしょう。「就活ニュースペーパー」内の「ことばマイスター ナカハラハラハラ」でもこういったケースについて実際にいくつか例をあげて説明していますので、ぜひ目を通してみてください。

 私が新聞記者になって一年目に見つけた新聞に載った重言です。電車の架線にカラスがぶつかって、電車が止まりました。地元紙のカメラマンが線路上でカラスの死骸を見つけて、「これだろう」と思って写真を撮りました。夕刊に載った写真の説明文は「黒こげになったカラス」でした。カラスは最初から黒いのに、と気づいた人はこの説明文を忘れなかったでしょう。就活でも言葉づかいには気をつけましょう。

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