ニュースのポイント
2020年東京五輪・パラリンピックのエンブレムが白紙に戻りました。盗作だったのかどうかの真相はわかりませんが、今回、佐野研二郎氏のデザインを白紙撤回に追い込んだのはネットでした。一般のネットユーザーがネットの画像検索で類似画像を見つけ、盗作疑惑がネットで一気に拡散するという構図です。佐野氏の家族への誹謗(ひぼう)中傷などがあったならそこは問題ですが、ネットが新たな「検証システム」として機能した一例と言えるのかもしれません。これを機にネットとの付き合い方も考えてみてください。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、五輪エンブレム問題の記事のうち、社会面(39面)の「『酷似』ネット次々追跡/疑惑指摘 即座に投稿/画像検索で発見か」です。
記事の内容は――東京五輪のエンブレム公表から1カ月。インターネット上では他の作品との「酷似」の指摘がやまず、「白紙撤回」に追い込まれた。ネット社会での徹底的な疑惑追跡に「自由な発想にブレーキがかかる」との声もある。1日、エンブレム使用中止のニュースが流れると、インターネット掲示板「2ちゃんねる」には、「お前ら大勝利!」「グッジョブ」など、疑惑を指摘してきた人たちをたたえる書き込みであふれた。7月24日に佐野氏の作品の採用が発表されると、ネット上では「(ベルギーの劇場のロゴに)似ている」といった書き込みが続いた。8月28日の会見後も、ネット上に「展開例の写真も盗作だった?」との書き込みが拡散した。ネットに詳しい慶応大学大学院の田代光輝・特任准教授は「(疑惑を指摘する人たちは)グーグルなどの画像検索機能や、『ピンタレスト』といった画像共有サイトを使ったのではないか」「相当数の人が関わったかつてない規模の検証行動だった」と言う。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
7月24日にエンブレムが発表された数日後、「2ちゃんねる」にベルギーの劇場のロゴを並べて「完全に一致!」と書き込まれたのが、「盗作」指摘の発端と言われています。佐野氏がデザイン監修したサントリーの景品は、海外デザイナーや日本人のブログの画像と比較して「パクリではないか」との声がネットで広がりました。佐野氏がイメージ画像に使った羽田空港や繁華街の写真が無断転用では、との指摘もネット上の書き込みでした。
8月18日の朝日新聞で「〈盗作〉の文学史」の著者で評論家の栗原裕一郎さんは指摘しています。
「SNSや、テーマに沿って集約するサイトがなければ、こんな騒ぎにはなっていなかった。ネットの検証能力の精度も上がっている」
今回の一方の主役が、ネットとネットユーザーだったのは間違いありません。ネットを使えれば誰でも検証作業に参加できるわけで、ある意味画期的なことです。新たなエンブレムの公募でも、大会組織委員会が決定した後に公表すれば、同じことが繰り返されるかもしれません。候補が複数ある段階で公表すれば、また多くのネットユーザーが検証してくれそうです。「誰でも参加」できる時代になりました。
ネットはいまや私たちの生活に欠かせません。「あさがくナビ」も、この「就活ニュースペーパーby朝日新聞」もネット上のサイトです。就活も、ネットなしでは企業情報を集められないし、プレエントリーすらできない時代です。ただ、就活関連のサイトにもいろいろあります。就活生の生の声を知るものとしては、自分の就活実体験を書き込む掲示板サイト「みんなの就職活動日記(みん就)」などが人気ですね。ただ、こうした書き込み掲示板に書かれていることが、すべて事実とは限りません。意図的な書き込み工作があるかもしれません。あまり振り回されない程度に、上手に付き合うようにしてください。
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