ニュースのポイント
新しい安全保障法制について自民、公明両党が合意しました。「専守防衛」の理念のもと、海外で武力行使をしない原則を貫いてきた自衛隊のあり方を変える戦後日本の安全保障の大転換です。個々の法案は複雑で難しい内容ですが、一人ひとりが考えなければならない大きなテーマです。詳しく知らなくても、大きな枠組みと方向性については理解して、自分の考えを言えるようにしておきましょう。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、1面トップの「『専守防衛』変質/安保法制11法案 自公が合意/集団的自衛権の要件明記/14日閣議決定/自衛隊活動 拡大にリスク」です。他にも関連記事がたくさん載っています。
記事の内容は――自民、公明両党は11日、新しい安全保障法制を構成する11法案の内容で正式に合意した。日本の防衛から国際貢献まで「切れ目のない対応」を掲げ、自衛隊の海外での活動の内容や範囲を拡大する。「専守防衛」の理念のもと自衛隊に課せられていた様々な制約が取り払われる。安倍内閣は11法案を「平和安全法制」と名付けた。14日に閣議決定後、国会に提出し7月下旬の成立をめざす。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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戦後の日本は、海外で武力行使をしないことを原則とし、自衛隊の海外派遣に厳しい制約を設けてきました。海外の紛争から一定の距離を置き、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争などで日本が武力行使することはありませんでした。今回の安保法制が成立すると、日本の存立が脅かされることなどの要件はつけたものの、最終的には自衛隊が海外で武力行使する可能性が出てきます。
今日のオピニオン面(15面)で、法政大学教授の湯浅誠さんは、海外で自衛隊が他国軍を後方支援する「国際平和支援法」について、「『平和のための戦争』はありでしょう、という名前だ。これを『ようやく普通の国になった』とみるのか、『かつて来た道』ととるのか」と語っています。今回の改革は、海外で武力行使をしてこなかった「不戦の国」から、「普通の国」に生まれ変わろうとする一歩とも言えるわけです。大転換ということはわかりますよね。朝日新聞の社説(14面)は「(法案は)名称に『平和』を掲げてはいるが、その内実は、憲法が定める平和主義を踏み外すもの」と批判しました。
安倍晋三首相は4月の米議会での演説で「戦後初めての大改革です。この夏までに成就させます」と述べました。日本での国会審議はこれからなのに、一連の安保法制の成立を米国に約束したのです。オピニオン面で北海道大大学院准教授の中島岳志さんは「政府・自民党は矢継ぎ早に新たな提案をし、国民を『もはや何がわからないのかすらわからない』という状態に追い込んで、一気に法案を通そうとしている」と指摘しています。
賛否両論があり正解はありません。でも、国民がわからないまま、知らないまま決まってしまうのは良くありません。これから安保法制に関する国会での議論が本格化し、たくさんの記事が載ります。みなさんも、何が変わろうとしているのか、大きな流れを知ったうえでニュースに接し、自分の意見を持てるようにしてください。
これまでに書いた「【重要!】『集団的自衛権』容認を決定 『不戦の国』から『普通の国』へ?」(2014年7月2日今日の朝刊)と、「『日米ガイドライン』ってなに?なぜ、どう改定?」(2015年4月28日)も読んでみてください。
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