ニュースのポイント
NHKの籾井勝人会長が就任して1年がたちました。籾井会長のその後の発言に加え、インターネットの活用や海外向け情報発信の強化を盛り込んだ中期経営計画が注目されています。「公共放送」から「公共メディアへの進化」を打ち出したNHKの課題を探ります。
今日取り上げるのは、総合面(3面)の「NHK 問われる公共感覚/籾井会長 就1年/『幹部、過剰に会長忖度』の声/受信料制度 改革進まず」です。
記事の内容は――籾井会長は1年前の就任会見で政治的中立性が疑われた「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」などの発言を撤回したが、考えを変えたとは言わず、若手職員は「会長の考えを幹部が過剰に忖度(そんたく)する動きがいたるところで起こっている」とみる。籾井氏は力を入れる国際放送に関連し、首相の外遊で日本への理解が進んでいるとの見解を記者会見で示すなど、公共放送トップなのに政府寄りの発言が目立つ。15日にまとめた中期経営計画ではネットの積極的活用を打ち出したが、肝心の受信料制度の議論は先送りした。世界の公共放送では、英BBCが肥大化批判で業務縮小を迫られたり、ドイツで受信料制度がネット時代に合わせて改正されたりするなど、「公共」の範囲の再定義が進む。民間ではできないサービスとは何か、テレビ受像機がある世帯から集めた受信料をネットサービスに使っていいのか、など課題は山積している。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
そもそも公共放送とは何かについては、1年前に「マスコミ志望者必見!NHK会長発言で考える『公共放送』」(2014年1月29日の今日の朝刊)で書いているので、読んでみてください。
中期経営計画は3年に一度まとめるもので、籾井会長ら執行部の計画案を
NHK経営委員会が議決しました。2020年に「最高水準の放送・サービス」を実現することをビジョンとして掲げ、今回の計画がその「第一ステップ」。骨子は以下の通りです。
■NHK中期経営計画の骨子
・正確な報道、豊かで多彩なコンテンツ(番組)
・インターネットの活用を強化
・国際放送で世界への発信を強化
・受信料の支払率を76%から2017年度末には過去最高の80%に
・衛星契約の割合も47%から50%に
・3年間で計1000億円の増収。240億円を新放送センターのために積み立て
籾井会長は、インターネット展開について「時代の趨勢(すうせい)」と語り、将来的にはネットでも番組を積極的に流す方針を明らかにしました。来年度から一部の番組を放送と同時にネットでも無料で流す実証実験を始めます。ネットを利用する視聴者にとってはとても便利になりますよね。でも、実現に向けてはハードルがあります。今の受信料制度はテレビがある世帯から集めた受信料を、主に「放送」番組の制作にあてることになっています。ネットを利用しない視聴者もいますから、ネットサービスの拡大は放送を基幹とした公共放送のあり方を変えることになるわけです。このため、NHK経営委員会は、ネット時代に対応した新たな受信料制度の研究を進め、2020年までに国民的合意形成に努力するよう注文を付けました。
国際放送の強化は、籾井会長の強い意向で盛り込まれました。いまNHKは海外の2億8000万世帯で視聴可能ですが、認知度が低いため、現在172億円の予算を来年度は262億円に増やして地方の産物を紹介する番組や大型ニュース番組などを編成。北米やアジア地域に狙いを定めて放送する方針です。国際放送には35億円の公金も投入され、自民党からは「国益に資する放送を」との要望が出ています。総務相が放送内容を要請できる仕組みもある中で、政権からの距離や独立性が問われています。
メディアを目指すみなさんはもちろんですが、私たちの受信料で運営され、影響力も大きいNHKがどうなるかは国民全体の関心事です。今後の籾井会長の発言や展開を注目しましょう。
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