2017年05月16日

日本郵政が野村不動産買収へ? 百貨店、マスコミも不動産で稼ぐ

テーマ:経済

ニュースのポイント

 日本郵政が不動産大手の野村不動産ホールディングス(HD)の買収を検討しています。郵便と金融の会社がなぜ?と、意外に思う人もいるでしょうが、日本郵政は全国の一等地に大規模な郵便局を持っています。これらを商業施設やオフィスビル、マンションなどに再開発する事業を展開する狙いです。百貨店や大手マスコミにも、不動産業を事業の柱にしようとする会社があります。意外な会社が手がける不動産業を知りましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(7面)の「日本郵政、M&Aに強気/野村不動産も視野」と同「民営化後初の赤字/3月期 豪子会社減損響く」(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
(写真は、2017年3月期決算発表をする日本郵政の長門正貢社長=左=と市倉昇専務)

民営化後初めての赤字

 日本郵政の2017年度3月期決算は、純損失が289億円となり、2007年の郵政民営化以降初めて赤字となりました。2015年に買収したオーストラリアの物流子会社トール社の業績が悪くなり、4000億円もの損失を計上したためです。通販の拡大でゆうパックの取り扱いが増え、郵便局で扱うかんぽ生命の契約も伸びる一方、国内の低金利の影響で金融部門は売上高が減りました。2018年3月期は4000億円の純利益を予想していますが、柱である郵便事業は人口減少や若者の手紙離れで郵便物が15年連続で減少。金融事業も低金利が長引いて大幅な業績拡大は見込めません。

ビルとマンション開発、両方のノウハウが魅力

 そこで日本郵政は新たに不動産開発を、郵便、金融と並ぶ収益の柱に育てる考えです。すでに東京、名古屋、福岡で、もともと郵便局だった場所を「JPタワー」(写真は東京・丸の内のJPタワー)として再開発。それぞれのビル内で大型商業施設「KITTE(キッテ)」を運営しています。商業施設だけでなく、東京・目黒、大阪・豊中などの住宅地では、他社との協業で分譲マンションも開発しました。同社は全国に2万を超す郵便局や遊休地などたくさんの土地を保有しています。商業ビルやオフィスビルと、「プラウド」ブランドのマンション開発の両方のノウハウを持つ野村不動産と組むことで再開発や立て替えを進める考えとみられています。買収額は数千億円規模の大きな買い物ですし本格交渉はこれからです。今後に注目してください。

百貨店も不動産で稼ぐ

 大型の都市開発や商業施設開発は、大手のディベロッパー、大手不動産会社、鉄道会社などさまざまな業界が関わります。最近では、松坂屋銀座店跡地で開業した複合商業ビル「GINZA SIX」(写真)が話題です。伝統ある百貨店「松坂屋」の看板はなく、運営するJフロントリテイリングは、241店のショッピングモールやオフィスを入れた不動産業に注力しています。百貨店は主力の婦人服の販売が振るわず、売り上げ不振に苦しんでおり、Jフロントは不動産事業を利益の柱に位置づけました。GINZA SIXの開業で、2018年2月期の不動産事業による売上高を前年比2.4倍の125億円と見込み、商業施設パルコの利益と合わせて全体の営業利益の3割弱を不動産で稼ぐ計画です。高島屋も新宿の「タカシマヤタイムズスクエア」に「ニトリ」を誘致するなどし、営業利益の3割強が不動産収入。従来の「百貨店業」から、売り場を有力テナントに貸して稼ぐ「不動産業」に注力する流れです。

大手メディアも

 マスコミ業界にも、不動産業を柱の一つにする企業があります。TBSは2008年に再開発した東京・赤坂の「赤坂サカス」の不動産事業収入が経営を支えています。新聞社では、かつて読売新聞東京本社があった銀座の土地はいま商業施設「マロニエゲート」になり、有楽町駅前の読売会館には「ビックカメラ」が入り、関連会社などが運営しています。

 朝日新聞社も、もともと東京本社があった場所は商業施設「有楽町マリオン」となり、テナント収入を得ています。明治時代からの銀座の拠点も「銀座朝日ビル(仮称)」として再開発中。2017年秋完成予定で、3~12階に米ホテル大手ハイアットの新ブランドが入ります。大阪では、大阪本社があった中之島に高さ200メートルのツインビル「中之島フェスティバルタワー」(写真)が今年4月に全面開業しました。多くの商業施設、ホテル、オフィスからの収入が朝日新聞社の経営を支えます。

本業以外も面白いかも

 「人事のホンネ」でインタビューした朝日新聞社の山口智久・採用担当部長は、ビジネス部門には不動産ディベロッパーのような専門的な仕事もあると紹介。そのうえで、「『全然知らなかった会社に入ってみたら、結構面白いことをやっていた』ということもあります。何をやりたいのか悩みながら入ってもらっても、きっと社内で面白いものが見つかると思います」と話しています。各企業の本業以外に目を向けると、会社の違った魅力が見えてきますよ。

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