企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2018シーズンの最終回は朝日新聞社です。同社は、採用選考の時期を前倒し、長年手書きだったエントリーシートをWEB提出に変え、ビジネス部門では時事問題を問う独自の筆記試験を廃止するなど、2018年卒の採用試験からやり方を大きく変えました。変更の狙いは? それでも変わらないことは? じっくり聞きました。(編集長・木之本敬介)
■記者、ビジネス、技術
――2017年入社の採用実績を教えてください。
朝日新聞社は記者、ビジネス、技術の三つの部門別に新卒採用をしていて、記者が51人、ビジネス16人、技術11人の計78人です。男女別では、男性47人、女性31人。院卒は全体で17人です。
2018年卒採用も、同じくらいになると思います。
――2018年卒は春の採用試験が終わったところだと思いますが、今年も秋採用を実施しますか。
はい。記者部門とビジネス部門は毎年2回の採用試験を実施しています。秋といっても夏休み中ですが、留学から帰った人や、進路を考え直そうという人を歓迎しています。もちろん、春受けた人の再チャレンジも大歓迎です。春と秋の採用人数は記者部門では7対3くらいですね。
――近年、技術部門の採用をかなり増やしていますね。
新聞社の技術職は、かつては記者がパソコンで打った原稿を本社に送って紙面化し、印刷、配送するシステムの構築と運用が主な仕事でした。今はそれに加えて、アプリ開発などの技術が重要になってきたので採用を増やしています。今後は人工知能(AI)による取材や記事執筆など、メディアの形が変わるでしょう。このため人工知能や自然言語処理分野の研究者も採用しています。言語の分析に詳しい人は理系と文系の融合分野の学部にもいるので、理系と限定せずに探しています。
――技術部門には学校推薦制度もあるんですね。
推薦と一般公募、両方ありますが、今では推薦のほうが多いですね。大学によって、学部推薦も研究室推薦もあります。
――そもそも、学生は新聞社に技術系の仕事があることを知らないのでは?
新聞社のアプリ開発などを知ってもらうため、積極的に大学を訪問して説明しています。「朝日新聞オンライン・プログラミングチャレンジ」というハッカソン(IT技術者が一定時間缶詰めになってソフトウエア開発などのアイデアを競い合うイベント)や、ワンデーインターンシップも開いてアピールしています。
――記者は文系が多いでしょうが、理系出身者はどのくらいいますか。
2017年入社は51人中3人が理系です。理系の知識を生かして科学医療部で働く記者もいますが、政治部や社会部にも理系出身者がいます。理系の記者志望者には、専門分野を極めつつも幅広い関心がある人が多いですね。
――新聞社は記者のイメージが強いと思います。ビジネス部門の仕事を学生にどう説明していますか。
「職種のデパート」といわれるくらい幅広い職種があることを話します。経営コンサルタント的な仕事をする販売局や、広告プランナー、イベントプロデューサー、展覧会のキュレーター、WEBデザイナー、不動産ディベロッパーなど、専門性の高いさまざまな仕事があると紹介すると驚かれますね。
いま注目されているのは、メディアビジネス局です。2016年に広告局を改編しました。新聞広告だけではなく、デジタルやテレビにも関わるし、多彩なイベントも行います。クライアントの情報を複数のメディアを組み合わせて伝える広告会社の仕事に近づきつつあります。
株式会社 朝日新聞社
独自の筆記試験やめたビジネス部門が人気 選考早めて春休み中に
■筆記試験廃止
――エントリーの数は?
プレエントリーは全部門合わせて1万を超えますが、2017年卒の春採用のエントリーは2000人ほどでした。
――エントリー数を増やす対策は?
2018年卒採用から、ビジネス部門では長年続けていた会社独自の筆記試験をやめて、テストセンター形式のSPI(適性検査)を導入しました。記者も含めて、エントリーシート(ES)はずっと手書きでしたが、WEBエントリーに変えました。いずれも受けやすくするための対策です。
今までは認めていなかった複数部門の併願も、今年からできるようにしました。
この結果、2018年卒の春採用のエントリー数は、記者部門では前年の4割増、ビジネス部門では8割増えました。
――そんなに増えたんですか。記者部門でも独自の筆記試験をやめたらもっと増えるのでは?
こちらは続けます。やはり、世の中に幅広い関心があるかどうかを知りたいと思っています。小論文試験も続けます。(※記者部門も、2019年卒採用から独自の筆記試験にかわりSPI3による選考に、小論文試験は選考過程の途中での実施に変更した。)
――記者の職種は、一般の記者のほかに「専門記者」がありますね。
校閲記者、写真記者、グラフィックデザイナーがあって、それぞれ若干名の募集です。校閲記者はテレビドラマ「校閲ガール」のおかげで学生の反応がよくなりました。文章が非常に好きな人が多いですね。
いずれも学部の指定はしていませんが、グラフィックデザイナーは美術大の学生の応募が多い。新聞社のデザインの仕事はすべてパソコンで行いますが、操作は仕事をしながら覚えればいいので、入社時には絵が描けるセンスがあれば大丈夫です。
カメラマンは、写真を専門に学んだ人より普通の学部の学生が多いですね。
写真とグラフィックデザイナーは、実技試験も行います。
――記者部門で、ESと筆記試験を経て面接に進む率は?
半分弱くらいですね。
■スケジュール前倒し
――採用スケジュールを教えてください。2018年卒の春採用は選考日程を前年より早めたんですよね。
記者部門は、ESのダウンロード開始が2月17 日で締め切りは3月10日、筆記試験は3月26日でした。その後、面接を進めて4月中には内々定を出しました。ビジネス部門は少し遅れて選考を進めています。
――なぜ早めたんですか。
まずは学業への配慮です。時間に余裕がある春休み中に選考を進めたほうがいいと考えました。幸い、学生の多くは、早い段階で志望を固めてくれているので、早めに内々定が決まれば残りの学生生活を有意義に過ごせます。秋採用も今までどおり授業のない夏休み中に選考します。授業などのある時期は避けたいと考えています。
志望度が高い人は早めに決めて春採用を受けてもらい、まだまだ考えたいという人にもチャンスを残すという二段構えですね。
――選考時期を早めたことについて、学生の評判は?
「対策が間に合わない」と戸惑う声が多くありました。ただ、内々定者には「これで卒論に集中できる」と喜んでもらえています。来年は今年と同じ時期に実施する予定なので、しっかり準備をしていただければと思います。
■ES
――WEBエントリーにして、ESの質問項目も変えましたか。
記者部門はデジタルに関する設問を加えました。デジタル報道に生かせるスキルや経験、アイデアを聞く設問です。「朝日新聞は紙の新聞に加えてデジタルにも力を入れていく」というメッセージを込めています。デジタル分野で何をしたいのかきちんと意識してもらいたい。
新人記者は最初、地方総局に配属になりますが、今後は東京本社のデジタル編集部にも若干配属する予定です。配属を決める際の判断材料にもします。
――他の項目はあまり変わらない?
変わりませんね。重視するのはやはり、志望動機と今まで取り組んできたことの二つですね。
――語学力はどの程度重視していますか。
ESに記入する欄はありますが、参考程度です。
――ビジネス部門のESには「自由記述欄」がありますね。
写真やイラストで自分をアピールしてもらっています。今回WEBエントリーにしたので、パワーポイントを活用した人もいました。この欄は、普段の姿が見られるので社内の評判はいいですね。
普段の姿といえば、本当は面接に「リクルートスーツで来ないでください」と言いたい。あるいは「あなたらしい服装と髪型で来てください」とか。女子学生の髪形はみんな同じですからね。内定した後に普段着を見ると、革ジャンを着てくる女子がいたりして、「この学生は結構ファンキーだったんだ」と分かるときがあります(笑)。
――「普段着で来て」とは言わないのですか。
どうしようかと思っています。「あなたらしい格好」と指示したら、学生はどう対応すべきかマニュアル的に考え込んでしまうかもしれないので。
――学生が面接に自分らしい服装で来たら?
「今日はどうしてその服で来たんですか」というような質問をして、人柄を知るきっかけになりそうですね。
――エントリーの数は?
プレエントリーは全部門合わせて1万を超えますが、2017年卒の春採用のエントリーは2000人ほどでした。
――エントリー数を増やす対策は?
2018年卒採用から、ビジネス部門では長年続けていた会社独自の筆記試験をやめて、テストセンター形式のSPI(適性検査)を導入しました。記者も含めて、エントリーシート(ES)はずっと手書きでしたが、WEBエントリーに変えました。いずれも受けやすくするための対策です。
今までは認めていなかった複数部門の併願も、今年からできるようにしました。
この結果、2018年卒の春採用のエントリー数は、記者部門では前年の4割増、ビジネス部門では8割増えました。
――そんなに増えたんですか。記者部門でも独自の筆記試験をやめたらもっと増えるのでは?
こちらは続けます。やはり、世の中に幅広い関心があるかどうかを知りたいと思っています。小論文試験も続けます。(※記者部門も、2019年卒採用から独自の筆記試験にかわりSPI3による選考に、小論文試験は選考過程の途中での実施に変更した。)
――記者の職種は、一般の記者のほかに「専門記者」がありますね。
校閲記者、写真記者、グラフィックデザイナーがあって、それぞれ若干名の募集です。校閲記者はテレビドラマ「校閲ガール」のおかげで学生の反応がよくなりました。文章が非常に好きな人が多いですね。
いずれも学部の指定はしていませんが、グラフィックデザイナーは美術大の学生の応募が多い。新聞社のデザインの仕事はすべてパソコンで行いますが、操作は仕事をしながら覚えればいいので、入社時には絵が描けるセンスがあれば大丈夫です。
カメラマンは、写真を専門に学んだ人より普通の学部の学生が多いですね。
写真とグラフィックデザイナーは、実技試験も行います。
――記者部門で、ESと筆記試験を経て面接に進む率は?
半分弱くらいですね。
■スケジュール前倒し
――採用スケジュールを教えてください。2018年卒の春採用は選考日程を前年より早めたんですよね。
記者部門は、ESのダウンロード開始が2月17 日で締め切りは3月10日、筆記試験は3月26日でした。その後、面接を進めて4月中には内々定を出しました。ビジネス部門は少し遅れて選考を進めています。
――なぜ早めたんですか。
まずは学業への配慮です。時間に余裕がある春休み中に選考を進めたほうがいいと考えました。幸い、学生の多くは、早い段階で志望を固めてくれているので、早めに内々定が決まれば残りの学生生活を有意義に過ごせます。秋採用も今までどおり授業のない夏休み中に選考します。授業などのある時期は避けたいと考えています。
志望度が高い人は早めに決めて春採用を受けてもらい、まだまだ考えたいという人にもチャンスを残すという二段構えですね。
――選考時期を早めたことについて、学生の評判は?
「対策が間に合わない」と戸惑う声が多くありました。ただ、内々定者には「これで卒論に集中できる」と喜んでもらえています。来年は今年と同じ時期に実施する予定なので、しっかり準備をしていただければと思います。
■ES
――WEBエントリーにして、ESの質問項目も変えましたか。
記者部門はデジタルに関する設問を加えました。デジタル報道に生かせるスキルや経験、アイデアを聞く設問です。「朝日新聞は紙の新聞に加えてデジタルにも力を入れていく」というメッセージを込めています。デジタル分野で何をしたいのかきちんと意識してもらいたい。
新人記者は最初、地方総局に配属になりますが、今後は東京本社のデジタル編集部にも若干配属する予定です。配属を決める際の判断材料にもします。
――他の項目はあまり変わらない?
変わりませんね。重視するのはやはり、志望動機と今まで取り組んできたことの二つですね。
――語学力はどの程度重視していますか。
ESに記入する欄はありますが、参考程度です。
――ビジネス部門のESには「自由記述欄」がありますね。
写真やイラストで自分をアピールしてもらっています。今回WEBエントリーにしたので、パワーポイントを活用した人もいました。この欄は、普段の姿が見られるので社内の評判はいいですね。
普段の姿といえば、本当は面接に「リクルートスーツで来ないでください」と言いたい。あるいは「あなたらしい服装と髪型で来てください」とか。女子学生の髪形はみんな同じですからね。内定した後に普段着を見ると、革ジャンを着てくる女子がいたりして、「この学生は結構ファンキーだったんだ」と分かるときがあります(笑)。
――「普段着で来て」とは言わないのですか。
どうしようかと思っています。「あなたらしい格好」と指示したら、学生はどう対応すべきかマニュアル的に考え込んでしまうかもしれないので。
――学生が面接に自分らしい服装で来たら?
「今日はどうしてその服で来たんですか」というような質問をして、人柄を知るきっかけになりそうですね。
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2024/11/21 更新
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