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2020年12月04日

バフェット氏が株買った5大商社 コロナで業績や時価総額に差が【業界研究ニュース】

商社

 新型コロナウイルスが世界経済にダメージを与えています。日本の商社もダメージを受けています。ただ、影響の度合いは一律ではありません。伊藤忠商事三菱商事三井物産丸紅住友商事の5大商社をみると、消費者寄りの商品やサービスに強い伊藤忠などは影響の度合いが小さく、資源やエネルギーに強い住友商事や三菱商事などは大きな影響を受けています。市場の評価である株価もそれに伴って差がついてきました。世界で有名な投資家 ウォーレン・バフェット氏が率いるアメリカの投資会社は5大商社の株を買い進め、8月に各社の5%を超える大株主になりました。さらに9.9%まで買い進める可能性があると明らかしています。バフェット氏は、日本の大手商社の成長力がまだまだあると見ているようです。ただ、成長力にはばらつきがあるというのが当面の市場の見方です。

(写真は、コロナ禍で伊藤忠商事の岡藤正広会長CEO〈中央〉と鈴木善久社長〈左〉に本社に出迎えられた新入社員=2020年4月1日、東京都港区)

「ミネラルウォーターから通信衛星まで」

 日本には商社がたくさんあります。商社の業界団体である日本貿易会に加入している正会員会社は41社あります。ただ、加入しているのは比較的大きな商社で、規模の小さい商社はこれ以外にもたくさんあります。商社の仕事をたとえるときに昔は「ラーメンからミサイルまで」といいましたが、今は「ミネラルウォーターから通信衛星まで」という言い方をします。つまり、何でも扱うということです。何でも扱う商社のことを総合商社といいます。5大商社がそれで、これに豊田通商双日を加えて7大商社ということもあります。扱うものや取引する地域が限られている商社は専門商社といい、規模の小さい商社はほとんど専門商社です。

(写真は、デジタル分野での業務提携などで合意後に握手する三菱商事の垣内威彦社長〈左〉とNTTの澤田純社長〈当時〉=2019年12月20日、東京都千代田区)

住友商事は資源部門の損失で赤字に

 5大商社は2020年4~9月期の決算(中間決算)を11月に発表しました。5社とも純利益はマイナスになりました。純利益がもっとも大きかったのは伊藤忠商事で2525億円でした。ただ、伊藤忠商事でも前年同期に比べると12.6%のマイナスでした。次ぎに純利益が大きかったのは三井物産で1100億円、次いで丸紅が1016億円でした。業界トップの常連だった三菱商事は前年同期比64.2%のマイナスで866億円でした。もっとも苦しんだのが住友商事で602億円の赤字決算となりました。マダガスカルで手がけているニッケルの生産が新型コロナの感染拡大で停止となったことが赤字の大きな要因になりました。丸紅は2020年3月期には過去最大の1900億円超の赤字を計上しましたが、これは原油価格の下落を受けてメキシコ湾北海で進めている石油・ガス開発の計画を見直したことが大きな要因でした。住友商事も丸紅も資源部門の損失が足を引っ張って赤字になったと言えます。

(写真は、三井物産の安永竜夫社長)

伊藤忠は時価総額と株価でトップに

 純利益がもっとも大きかった伊藤忠商事は非資源分野を得意としています。最近ではコンビニエンスストアのファミリーマートに対し、株式の公開買い付け(TOB)を実施し、保有比率を50.1%から65.71%に高めました。最終的には94%まで高めることを目標にしており、ファミマを伊藤忠と一体化させる方針です。伊藤忠は昨年にはスポーツ用品大手のデサントに対してTOBをして傘下におさめています。こうした流通アパレルといった消費者に身近な分野に力を入れていることが逆風への抵抗力になっているようです。株式市場では、時価総額も株価も三菱商事を抜いてトップになりました。ちなみに株価の高さは12月4日時点でこの2社に続いて三井物産、住友商事、丸紅の順になっています。

(写真は、住友商事の兵頭誠之社長)

何かがダメなら何かがいい

 とはいえ、総合商社は業績の復元力もあります。扱っている商品やサービスが幅広く、事業内容も単なる売買の仲介だけでなく、プロジェクトの立案や管理もありますし、資金を融通する金融もあります。だから、「何かがダメなら何かがいい」という状態になります。これから地球環境問題への対応が世界の大きなテーマになりますが、石油や石炭といった化石燃料のビジネスには大きな逆風ですが、風力発電などの再生可能エネルギーの分野にも商社は入り込んでいて、こちらは活況になります。時代の流れに応じて社内で力を入れる分野を変えていけば、一方的に業績が悪くなることがないのも総合商社の特徴です。

(写真は、丸紅の柿木真澄社長)

働き方改革で先陣切る

 商社と言えば、徹夜もいとわず猛烈に働く男社会のイメージがあります。でもそれは少し古いイメージかと思います。たとえば、伊藤忠商事は数年前から朝型勤務奨励しました。また、飲み会は1次会だけ、それも午後10時までとする「110運動」を徹底しました。今の世の中の働き方改革先陣を切った形です。もちろん海外との商談などは文化や言葉の違いでストレスの大きな仕事であることに変わりはありませんが、サポート体制に力を入れるのも最近の傾向です。健康や家庭を大事にしたいと思っている人や女性にも門戸は開かれていますので、関心のある人は研究してみてください。

(写真は、早朝に出勤する伊藤忠商事の社員。午前8時までは軽食が無料で配られる=2020年7月21日、東京都港区)

 これまで「人事のホンネ」には以下の総合商社が登場しました。採用方法などは取材当時の内容です。
三菱商事
伊藤忠商事
双日
丸紅
三井物産

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