2014年07月18日

どうなる「ベネッセモデル」…ダイレクトマーケティングの今後

テーマ:社会

ニュースのポイント

 通信教育大手ベネッセホールディングス(HD)の顧客情報流出事件で、データを不正取得した容疑者が逮捕されました。情報管理や名簿ビジネスの問題点が明らかになり、事件の波紋は広がっています。顧客情報をもとに電話やダイレクトメール(DM)、電子メールなどでセールスする「ダイレクトマーケティング」と呼ばれる手法は、ベネッセに限らず広く行われていますが、そのあり方が見直されるかもしれません。

 今日取り上げるのは、経済面(8面)の「揺らぐベネッセモデル/情報流出 会員獲得困難に」です。1面「ベネッセ、200億円分補償/容疑の元SE逮捕」、2面「時時刻刻・情報管理 見えぬ答え」、同「いちからわかる!・個人情報の売買は違法じゃないの?」、社会面(39面)「名簿ビジネス暗躍」も関連記事です。

 記事の内容は――ベネッセの経営モデルが曲がり角にさしかかっている。同社はアンケートやイベントなど全国各地で子どもたちの個人情報を集め、成長の過程にあわせて継続して活用する「継続営業」で成長してきたが、情報流出で信頼は失墜し、新たな個人情報の収集は難しくなっている。今回流出したのは、通信講座「こどもちゃれんじ」や「進研ゼミ」など26サービスの顧客情報760万件。同社は主に、①「たまごクラブ」「ひよこクラブ」などの雑誌購読者へのアンケート②スタンプラリーやクイズラリーなどの子ども向けイベント――の二つの手法で個人情報を得てきた。小学校入学前の子どもは「こどもちゃれんじ」、小学生から高校生までは「進研ゼミ」に誘うDMや電話で効率的な会員獲得につなげてきたが、イベントは当面の間の中止を決定。新たな情報は得にくくなるなど状況は厳しい。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 今回流出したのは1993年1月~2013年12月生まれの子どものデータですから、みなさんの中にも情報が流出してベネッセからおわびの手紙が届いた人がいると思います。自分の個人情報が知らぬ間に転売されて、突然電話がかかってきたりDMが届いたりすることに怒りや不安を感じている人もいるかもしれません。

 テレビ、新聞、雑誌などのマスメディアを使った「マスマーケティング」に対し、DM、メール、電話などで一人ひとりの顧客に直接情報を提供し販促する手法を「ダイレクトマーケティング」と呼びます。消費者ニーズの多様化、細分化が進み、ダイレクトマーケティングの重要性は高まっています。ベネッセは自社のアンケートなどでコツコツと集めた個人情報をもとに、一人ひとりのライフステージに合わせたダイレクトマーケティングを展開してきました。顧客情報を名簿業者から買う企業も多い中、良心的な集め方と言えるかもしれません。ところが、その苦労して集めた情報が、外部会社の悪意を持った派遣社員によって持ち出されてしまったわけです。ベネッセは情報管理体制をどう見直すのか、それが信頼回復につながるのか、イベントでの個人情報収集を再開するのか、あるいは新たな情報収集方法を見いだすのか――目が離せません。

 ベネッセだけの問題ではありません。消費者に直接売り込むBtoC(Business to Consumer、「B2C」とも)企業の多くが顧客情報に関するデータベース(DB)をつくり、ダイレクトマーケティングに活用しています。ベネッセのような教育産業のほか、化粧品、食品などの通販会社を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。住所、年齢、誕生日、職業、年収などの個別データがあるほどきめ細かなビジネスを展開できるからです。ただし常に情報流出のリスクもあり、今日の2面には過去に情報流出で補償した主な企業の一覧が載っています(企業名は当時、流出規模には可能性も含む)。
2003年 ローソン(流出規模56万人)
ファミリーマート(18万人)
2004年 ソフトバンクBB(452万人)
サントリー(7万5000人)
2005年 オリエンタルランド(12万人)
2009年 三菱UFJ証券(149万人)

 今後も、企業にとってダイレクトマーケティングの重要性が小さくなることはないでしょうが、顧客情報の管理と活用のあり方は、今回の事件で見直されることになるかもしれません。政府は名簿業者の規制強化など個人情報保護法の改正を目指しています。さまざまな業界に関わる問題です。みなさんも、新聞記事などで今後の展開に注目してください。

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