2014年07月02日

【重要!】「集団的自衛権」容認を決定 「不戦の国」から「普通の国」へ?

テーマ:政治

ニュースのポイント

 日本の歴史が変わる重大なことが決まった日です。安倍内閣が「集団的自衛権」の行使を認める閣議決定をしました。戦後69年間、自国を守る「専守防衛」に徹してきた日本が、海外での武力行使もできる「普通の国」に変わろうとする大きな転換点です。

 今日取り上げるのは、1面トップの「集団的自衛権 閣議決定/9条崩す解釈改憲/海外で武力行使容認」です。総合面、国際面、社会面などにも関連記事がたくさん載っています。
 記事の内容は――安倍内閣は、他国が攻撃されたときに自衛隊が一緒に反撃する集団的自衛権の行使を認めるため、憲法解釈を変える閣議決定をした。安倍首相は、憲法9条の解釈で集団的自衛権の行使を禁じてきた歴代内閣の積み重ねを崩し、憲法の柱である平和主義を根本から覆す解釈改憲を行った。

 政府は自衛隊発足以来、自国を守る個別的自衛権の武力行使に限って認めてきた。しかし、閣議決定された政府見解では、日本が武力を使う条件となる「新3要件」を満たせば、個別的、集団的自衛権と集団安全保障の3種類の武力行使が憲法上可能とした。首相が「憲法上の明確な歯止め」と強調した新3要件は抽象的な文言で、ときの政権がいかようにも判断できる余地を残している。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 集団的自衛権の行使容認については、5月16日の今日の朝刊「大テーマ!日本の未来を左右する『集団的自衛権』ってなんだ?」でも基本的な構図を説明しました。賛否両論があるとっつきにくい問題ですが、とても大事なテーマです。

 今回の閣議決定は、戦後一貫して禁じてきた海外での武力行使に道を開くものです。ポイントとなる新3要件は以下の内容です。
①我が国に限らず、密接な関係の他国が攻撃された場合でも、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある
②(危険を排除する)ほかの適当な手段がない
③必要最小限度の実力行使にとどまる

 これらを満たせば、その国と一緒に自衛隊が反撃できます。とても高いハードルのように見えますが、行使に具体的な歯止めをかける規定はありません。時の首相、政権の判断で行使できるわけです。安倍首相は「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからも決してない」と語りましたが、将来の首相が「参加する」という判断をするかもしれません。

 日本は戦後、憲法9条によって「日本は集団的自衛権を持っているが、行使できない」としてきたため、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争などに参加してきませんでした。アジア・太平洋で先の戦争を起こした反省を原点にした「不戦の国」の誓いに基づき、戦後は戦闘で1人の犠牲者も出さず、1人も他国の兵士を殺さずに済んできました。

 今回の解釈変更は、日本を戦争ができる「普通の国」にしようという動きとも言えます。今日のオピニオン面の「声」欄には、閣議決定反対の投書が多い中、「犠牲者ゼロは自慢になるのか」とする閣議決定支持の投書が載っています。自衛隊はこれまで1人の犠牲者も出さず、1人も他国の兵士を殺していないというが、湾岸戦争では命がけで戦う多国籍軍を傍観していただけで、イラクの復興支援活動でも自衛隊は他国による警護を想定していました。「それは、本当に自慢すべきことなのでしょうか」との主張です。

 「不戦の国」を貫くのか、「普通の国」に変わるのか。とても重い課題です。今日の3面で植木千可子・早大教授はこう語っています。「戦後日本では、国民全体で安全保障について悩み、考える機会が少なかった。国民一人ひとりが主体的に考えることを習慣づける必要がある。日常的に海外のニュースに関心を持ち、世界で何が起きているのかを知ることが大切だ。何よりも、戦争をするしないを決めるのは、国民の責任だという自覚と気概を持つことが大事だろう。こんなはずじゃなかったのに、というせりふは、私たち民主主義国家の国民には許されない」。集団的自衛権の問題をひとごとで済ましてはいけません。

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