2014年07月03日

日本原作のハリウッド映画公開!裏にはクールジャパン戦略

テーマ:文化

ニュースのポイント

 トム・クルーズ主演のハリウッド映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」が明日公開されます。原作は日本のライトノベル。その裏には、日本の出版社による米国へのSF小説の売り込み戦略がありました。

 今日取り上げるのは、2面の「ひと/ハリウッド映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』の原作者 桜坂洋さん(43)」です。
 記事の内容は――10年前に発表したSF小説がハリウッド大作の原作に選ばれた。宇宙人との戦争の渦中にいる主人公が、同じ時間を繰り返し生きる能力を身に着け、だんだん戦闘技術が向上していく物語。人生を何度でもやり直せるという発想はもちろんゲームから来ている。桜坂さんは「引きこもりのゲーマー」を自称する。地道に活動してきたライトノベルの作家が、突然世界の注目を浴びることになったが、「そう簡単に性格は変わらない」と、現代のシンデレラボーイは今日も自宅でひょうひょうとゲームにいそしむ。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 トム・クルーズさんが先週、この映画のPRのため、大阪、福岡、東京の3都市を1日で駆け抜け、話題になりました。今日の36面には映画の全面広告が載っています。「一つの物語が新しい扉を開く。日本から、世界へ。」「日本のSF傑作がいま世界を驚かせる!」「原作の日本の小説の持つ、独創的な設定と構造にすっかり魅了されました 主演トム・クルーズ」など、「日本発」を前面にうたったキャッチコピーが並んでいます。

 この原作者が「引きこもりのゲーマー」だったというところが、今日の記事の面白い点ですね。ゲーム、アニメ、ライトノベル、アイドルなど世界に誇る「クールジャパン」の多くが、独特の「オタク文化」から生み出されているのですね。

 日本発といえば、ハリウッド版のゴジラは今夏の話題作ですし、カプコンのゲームから生まれた「バイオハザード」シリーズ、タカラトミーの玩具を映像化した「トランスフォーマー」シリーズなど、多くのヒット作が生まれてきました。これまでは組織的に売り込んでいたわけではありませんでしたが、今回の「オール・ユー・ニード・イズ・キル」は日本の出版界の戦略が功を奏したようです。

 5月27日の夕刊に「日本のSF 北米でじわり浸透/出版社、翻訳増やし支持拡大」という記事が載りました。記事によると、米国のSF小説の年間最優秀作に贈られる賞の特別賞に2011年、2014年と日本人の作品が選ばれました。「オール・ユー・ニード・イズ・キル」を含め、北米でのちょっとした日本SF人気の裏には、在米出版レーベルの翻訳事業があります。母体は、集英社と小学館などが出資している出版社「ビズ・メディア」(本社・米サンフランシスコ)。「ワンピース」「ドラゴンボール」などの人気マンガを英語圏で翻訳・出版し、日本のマンガ・アニメを広めてきましたが、「SFも受け入れられるのでは」と2009年にSF・ファンタジー出版部門を立ち上げました。以来、「バトル・ロワイヤル」(高見広春)、「ブレイブ・ストーリー」(宮部みゆき)など30作品以上を翻訳・出版、ロングセラーに結びついた作品もあり、他にもハリウッド映画化の話が進むといいます。

 社会面(37面)には、出版大手KADOKAWAが日本のクールジャパン戦略を後押しするという記事があります。あわせて読んでください。

 こうした努力でクールジャパンビジネスはこれから広がる可能性があります。映画であれば、出版社、広告会社、映画配給会社、映画館、書店、テレビ局、新聞社など、さまざまな業界が関わります。好きな映画やアニメ、小説がどんなビジネスに結びつく可能性があるか、考えてみてください。

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