2014年01月23日

ケネディ駐日米大使に学ぶ 相手の意見をきく力

テーマ:国際

ニュースのポイント

 キャロライン・ケネディ駐日米国大使が朝日新聞のインタビューに応じ、日本と中韓両国の関係改善を促しました。また女性の経済的地位の向上、日米間の学生交流の拡大などへの意欲を語りました。とくに印象に残ったのは、賛否両方の意見があることは健全で、そこから会話が始まれば良いとの発言です。大使の考え方は、外交関係だけでなく、みなさんの周りの人間関係、そして就活でも生かせそうです。

 今日取り上げるのは、1面トップの「歴史問題、中韓との和解促す/ケネディ駐日米大使インタビュー」です。
 記事の内容は――ケネディ大使は、安倍首相の靖国神社参拝について「米国は地域の緊張が高まることを懸念しており、首相の決断には失望した」と述べる一方、「米日両国は、引き続き両国関係を前進させることに焦点を合わせていく」とも語った。「歴史と和解について話したい」と自ら切り出し、「過去の問題」を克服するには加害者、被害者双方の「勇気が必要だ」と強調した。沖縄県の米海兵隊普天間飛行場の移設問題、日本の集団的自衛権の行使容認、中国の防空識別研設定、環太平洋経済連携協定(TPP)などについて、米政府の見解を表明。重点的に取り組みたい課題として「歴史と和解」に加えて、「女性の経済的な地位向上と政治参加」「日米両国間の学生交流の拡大」をあげた。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 歴代の米国駐日大使で、ケネディさんほど注目された人はいません。初の女性大使ということもありますが、1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領の娘であり、多くの政治家を輩出した名門ケネディ家の超有名人だからです。ハーバード大を卒業後、弁護士資格を得て、非営利の活動や慈善事業にかかわってきました。すでに成人した3人の母親でもあります。これまで政治経験はありませんが、2008年の大統領選で当時劣勢だったオバマ氏を「私の父のような大統領になれる」と支持し当選を後押ししたこともあり、オバマ大統領が駐日大使に指名したと言われています。昨年11月に着任後、さっそく東日本大震災の被災地や被爆地・長崎などを訪問し、大きな話題になっています。

 ケネディ大使のインタビューは、総合面(2面)の「失望超えて『日米前進』」に解説記事が、オピニオン面(19面)の「これからの日米/アジアの緊張懸念 立場の違いを正直に話す関係に」に一問一答が載っています。大使は自らの使命について「公のために尽くすこと、より公正な米国を実現すること、より平和な世界をつくることです。大使の任期を通じて、その実現を目指し懸命に努力するつもりです」と語り、強い意欲を示しました。

 安倍首相の靖国神社参拝に「失望した」との米国大使館談話に対し反発の声が寄せられたことについては、「強固な関係の特徴は、お互いの立場の違いについて、正直に話し合えることです」と同盟国だからこそ率直に言い合うべきだと語りました。さらに「確かに、多くの方々から様々な意見が寄せられました。民主主義国家で働くことの素晴らしさは、皆さんの意見を聴けることです」と、多様な意見こそが民主主義の価値だとも言います。

 大使は18日、ツイッターに「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています」と書き込みました。追い込み漁は和歌山県太地町で行われている伝統漁業。このツイートには多数の賛否両論の返信が寄せられましたが、インタビューでは「この問題では賛否両方の返信がありました。とても健全なことです。他の課題でもツイートすることは重要で、そこから会話が始まれば良いと思います」とも語りました。ここでも、自分の意見ははっきり主張する一方で、違う立場の人の意見にも耳を傾ける。賛否両論を出し合うことから話し合いは始まると言うのです。とても大切なことだと思います。

 私たちも、こうしたケネディ大使の姿勢に学びたいものです。いま日本と中国、韓国の関係は最悪です。自分の主張を言うだけでは、100回繰り返しても何も変わりません。お互いに相手の立場、意見に耳を傾けることから、関係改善を始めたいものです。なかなか折り合えないこともあるでしょうが、この姿勢がなければ、外交関係は成り立ちません。

 採用選考で行われるグループディスカッションも実は同じです。朝日新聞社の採用試験でもグループディスカッションがあります。他人の意見に耳を傾けず持論を一方的にまくし立てる人は、発言の内容がどんなに優れていても、高い評価は受けないでしょう。世の中は多様な意見で成り立っています。自分の意見を言う、違う意見を聴く、それを踏まえたうえでまた意見を言う。実は「きく力」がとても大切です。

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