ニュースのポイント
皇后美智子さまのことばに感動しました。15年前の講演ですが、今日の記事で一部が紹介されていたので全文に初めて目を通しました。「子供の本を通しての平和――子供時代の本の思い出」をテーマに、平和への思いを、ご自分のことばで、静かに丁寧に語っています。自らの体験に基づく説得力と、洞察と優しさに満ちた心に染み入る文章です。
今日取り上げるのは、オピニオン面(17面)の作家・高橋源一郎さんの論壇時評「皇后陛下のことば 自分と向き合って伝える」です。
高橋さんは、美智子さまが1998年の国際児童図書評議会ニューデリー大会で行った基調講演の原稿を偶然読み、体が震えたという。個人的な戦争と疎開の不安な経験、そして子どもの悲しみや絶望について語る中で、「読書は、人生の全てが、決して単純でないことを教えてくれました。私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。人と人との関係においても。国と国との関係においても」ということばが記憶に焼き付いたと言います。それをきっかけに、今年の誕生日に宮内庁記者会の質問に寄せた回答など、美智子さまが書くもの、語ることばを探すようになりました。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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美智子さまは講演で、多くの書名や作品名とともに「自分史」をひもとくように語りました。子どものころに本から感じた不安、悲しみ、喜び、美しさ、そして身につけたことを、温かく易しいことばで表現。豊かな思い出と例示がたくさん盛り込まれていて、とても説得力があります。
この講演は、インドの核実験という当時の政治情勢からビデオ出演となりましたが、感動的な内容が大きな反響を呼び、本や大学の英語の教科書にもなりました。長い原稿ですが、宮内庁のホームページで全文を読むことができます。ぜひ目を通してみてください。
今日の記事を書いた高橋さんは最後に、美智子さまのことばを大きく取り上げた理由について触れた中で、今回「論壇時評」で取り上げた人たちのことばには特徴があるように思ったからだと書いています。
「ジャーナリズムで使われることばが、どれほど真摯(しんし)なものであっても、自分たちとは無関係であるように感じる。自分たちとは『遠い』ところで、話されるように感じるのである」
しかし、美智子さまをはじめとする人たちは、「『社会の問題』を『自分の問題』として考え、そして、それを『自分のことば』で伝えることができる人たちだった。そして、そのようなことばだけが、遠くまで届くのである」と結んでいます。
エントリーシートや面接で求められるのは、採用担当者に、社会の中で自分がどう活躍できるか伝えることです。活躍する姿をイメージしてもらえれば成功です。自分の体験や自分が感じたこと、考えたことを相手に伝えられるか。「自分のことば」を探してください。
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