2013年10月03日

ANA対JAL 羽田増便枠が決着

テーマ:経済

ニュースのポイント

 来春から増える羽田空港の国際線発着枠の配分が、全日本空輸(ANA)11便、日本航空(JAL)5便で決着しました。公的資金で再生したJALが大きな利益を上げていることから、ANAに多く配分することで競争環境のゆがみを正すねらいがあります。羽田の国際線は「ドル箱路線」といわれており、長期的には両社の業績に大きな影響を与える可能性があります。

 今日取り上げるのは、経済面(9面)の「羽田国際便発着枠 ANA11 JAL5/国交省が傾斜配分/もうけの差1200億円」です。
 記事の内容は――国土交通省は来春増える羽田空港の国際線発着枠のうち11をANAに、5をJALに配分すると発表した。国交省は羽田の国際線が1便あたり年10億円の営業利益を生み出すと試算しており、20年間で本業のもうけを示す営業損益に1200億円ほど差がつく傾斜配分だ。2010年に経営破綻(はたん)したJALの再生に公的資金が投入されたため、国交省は「競争環境のゆがみが一定程度是正される」と説明した。JALは「不公正で、到底承服できない」として同省に詳しい説明と決定取り消しを求める考えだ。今回の配分では、自民党の国会議員らがANA優遇を国交省に強く働きかけてきた。背景には、JAL再生を当時の政権与党として主導した民主党への反感がある。同省幹部は「政治家の意向は無視できない」と話した。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 ANAとJALは、国内航空業界で長年しのぎを削ってきたライバルです。JALは、1951年に政府主導の半官半民の企業としてスタート。当初は国際線を一手に担い、ナショナル・フラッグ・キャリア(国を代表する航空会社)とも呼ばれましたが、1987年に完全に民営化されました。ANAは、1952年に日本ヘリコプター輸送として発足、当初は国内線のみでしたが、1986年に国際定期便の運航を始めました。かつては「国際線といえばJAL」「国内線に強いANA」という構図でしたが、今は双方で激しい競争を繰り広げています。

 両社の力関係に大きな変化があったのは2010年。JALが、運行トラブルによる客離れとリーマン・ショックの影響を受け経営破綻しました。当時の民主党政権が指名した京セラ名誉会長の稲盛和夫氏のもとで徹底的な合理化が進められ、上場廃止後わずか2年半で東京証券取引所に再上場するなど、経営再建に成功しました。再生には3500億円の公的資金が投入され、会社更生法の適用で、5215億円の債務(借金)が帳消しになったことから、2013年3月期の純損益は、ANAの431億円に対し、JALは1716億円と大差がつきました。営業利益率15.8%は世界の主な航空会社の中でも群を抜いて高い数字です(ANAは7.0%)。このためANAホールディングスの伊東信一社長は「公的支援によるJALの再生が競争環境をゆがめており、発着枠は我々に多く配分するべきだ」と訴え、対するJALは「2社の一方しか就航しない路線ができると競争が起きず、運賃が高止まりする」として均等配分を求めていたのです。

 羽田の国際線発着枠は来春、現在の年間6万回から9万回に増えます。1日当たり約40便。うち15便は海外の航空会社に配分されます。今回決まったのは、米国との協議で先送りされる分を除く16便の配分です。都心から近い羽田の国際線は確実にもうかるといわれます。当面は追加の増枠予定はなく、国際線の発着枠は一度決まると原則として見直されないため、今回の決定はANAの経営にとって大きなプラスです。ANAとJALはそれぞれ、スターアライアンスワンワールドという国際航空連合に加盟していますが、今回の決定は両連合の力関係にも影響するかもしれません。航空業界志望のみなさんは、ライバル2社の今後の出方に注目です。

※朝日新聞デジタルの無料会員は1日3本の記事全文を、有料会員になればすべての記事を読むことができます。ぜひ登録してください。

アーカイブ

テーマ別

月別