2019年12月09日

日米貿易協定はウィンウィン? 政府には成果「盛る」習性【週間ニュースまとめ12月2~8日】

テーマ:週間ニュースまとめ

 「桜を見る会」の問題が大きくなったため、目立たなくなったのが日米貿易協定の国会承認です。今夏に日米の話し合いがまとまり、来年1月には発効します。すごくすんなり進みましたが、協定の内容は問題を含んでいます。最も大きな問題は、本当に政府が言っているような「ウィンウィン(両者が勝ち)」なのか、という点です。世界の貿易に対する主流の考え方は、関税や量的な規制などの貿易障壁をできるだけなくすことが世界の経済にとって望ましいというものです。反論も存在しますが、ここではこの考え方に沿うことにします。日本政府は「日本もアメリカも今回の協定で関税を引き下げたので、ともに同じくらい得をした」から、「ウィンウィン」だと国民に向けてアピールしています。ただ、日本にとっての「ウィン」は、乗用車や自動車部品をアメリカ向けに輸出する際の関税が撤廃されることが前提です。しかし、アメリカは「引き続き協議する」としているだけです。乗用車や部品の関税撤廃を除くと、日本に農産物を輸出する際の関税が下がるアメリカの得のほうがずっと大きくなります。こうした外交交渉では政府は成果を国民に強調したがるものですが、今回はちょっと無理があるように思います。社会人になると、政府の外交交渉が自分の仕事に関係することがあるかもしれません。政府は手柄を「盛る」習性があるということを覚えておきましょう。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)

(写真は、日米貿易協定の署名式で握手する杉山晋輔駐米大使〈左〉とトランプ米大統領=2019年10月7日、ワシントン、代表撮影)

【社会】日本の15歳、自由記述苦手? 国際調査で読解力低下(12/3.Tue)

 79の国・地域の15歳ら約60万人が参加し、「読解力」「科学的リテラシー(活用する力)」「数学的リテラシー」を調べた2018年の国際的な学習到達度調査(PISA)で、日本の「読解力」の平均点が前回より低下し、上位国との差が広がったことがわかった。「科学」「数学」の2分野は、前回に続き最高クラスだった。経済協力開発機構(OECD)が3日、公表した。調査結果によると、文章や資料などから情報を理解・評価し、考える力を問う「読解力」は前回より12点低い504点(OECD平均487点)で、8位から15位に落ちた。OECDは、統計上、偶然とは言えない有意な低下だと分析。特に、自分の考えを根拠を示して説明する自由記述式の解答に課題がみられるという。

【国際】アフガンで銃撃、中村哲医師が死亡 現地で人道支援(12/4.Wed)

 アフガニスタン東部ナンガルハル州の州都ジャララバードで4日朝、同国で人道支援に取り組んできたNGOペシャワール会」(事務局・福岡市)の現地代表で、医師の中村哲さん(73)の乗った車が何者かに銃撃された。州政府によると、中村さんや運転手ら計6人が死亡した。長く医療支援や灌漑(かんがい)工事を続けてきた中村さんは10月、同国から名誉市民権を授与されたばかりだった。2008年に日本人スタッフ(当時31)が殺害される事件があったため、警備員を付けて活動していた。

【社会】リクナビと契約した37社に行政指導 三菱商事など公表(12/4.Wed)

 就活情報サイト「リクナビ」で、内定辞退率が同意なしに予測され、企業に販売された問題で、政府の個人情報保護委員会は4日、リクナビと契約した企業37社に個人情報保護法に基づく行政指導を行った。サイトを運営するリクルートキャリアに対しても、8月の改善勧告の内容に加え、2018年度の卒業生向けのサービスも不適切だったとして、2度目の改善勧告を行った。問題のサービスは、2018年3月に始まった「リクナビDMPフォロー」(現在は廃止)。企業から前年の内定辞退者のリストを受け取り、AI(人工知能)で内定辞退率を予測するアルゴリズム(計算式)を作成。次に企業からその年の志望者のリストを受け取り、志望者のリクナビの閲覧履歴にアルゴリズムを掛け合わせ、内定辞退率を予測していた。辞退率を算出されたのは2019年3月以降に約8万1000人、2019年2月以前に約1万4000人の合計約9万5000人。

【経済】日米貿易協定承認案、参院で可決 異例のスピード発効へ(12/4.Wed)

 日米貿易協定の承認案は4日午前の参院本会議で、自民、公明の与党と日本維新の会などの賛成多数で可決した。来年1月1日に発効する見通し。米トランプ政権にせかされるかたちで議論が進んだ協定は、実質的な交渉開始から8カ月半という異例のスピードで発効する。米国からの輸入では、牛肉などの関税が環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟国並みに発効と同時に引き下げられ、日本からの輸出品は工業品を中心に下がる。政府が「日米双方にとってウィンウィンな協定」と説明する一方、野党は自動車関連品目の関税撤廃の実現性などを疑問視していた。

【社会】行政文書が大量流出 納税記録などのHDD流出(12/6.Fri)

 納税などに関する大量の個人情報や秘密情報を含む神奈川県庁の行政文書が蓄積されたハードディスク(HDD)が、ネットオークションを通じて転売され、流出していたことが朝日新聞の取材で分かった。県のサーバーから取り外されたHDDのデータ消去が不十分なまま、中古品として出回っていた。県によると、データの消去から廃棄までを請け負った業者の社員が、転売に関与したことを認めているという。転売されたHDDは縦約15センチ、横約10センチ、厚さ約2.5センチ。少なくとも9個あり、この中に保存されたデータの容量は27テラバイトに上る。仮に画像を添付したメール1通を3メガバイトメガバイトとすると、900万通に相当する。神奈川県が調査を続けているが、情報流出の事案としては世界でもまれな規模に上る可能性がある。

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