2015年12月25日

100兆円近い政府予算案で見える 日本の今と業界研究

テーマ:政治

ニュースのポイント

 2016年度の政府予算案が決まりました。総額96.7兆円と過去最大で100兆円に迫る巨額です。国の予算は私たちの日々のくらしに直結するだけでなく、今とこれからの日本を考え、みなさんが目指す業界・企業について考える材料がたくさん詰まっています。ポイントをわかりやすく解説します。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、1面の「膨張予算『痛み』先送り/来年度 過去最大96.7兆円案決定/遠い改革 将来にツケ」です。関連記事が、総合面(2面)「時時刻刻・参院選へ予算バラマキ色」、同(6面)「財政健全化 道険し」、特集面(9面)「96.7兆円 くらし直結」、オピニオン面(14面)「社説・予算と税制/国民を見くびるのか」に載っています。
 記事の内容は――政府が24日に決めた2016年度当初予算案は、一般会計の総額が96兆7218億円となり、4年連続で過去最大を更新した。企業業績の回復などで税収が増え、新たな借金となる新規国債の発行額は減らしたが、高齢化で年金や医療などの社会保障費が増えた。一方、来年の参院選をにらんだ予算も目立ち、膨らみ続ける予算に歯止めはかかっていない。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 国の予算は、あまりに巨額で自分にはあまり関係ない話と思う人もいると思います。でも、主な財源は私たちが払った税金ですし、その使い道は国民の生活を大きく左右します。まずは要点を押さえましょう。

 主なポイントは上の図表でまとめています。予算の3分の1を占めるのが、年金や医療、介護といった社会保障費です。高齢者が多くなっているのでどうしても増えるのですが、伸び率は抑えました。ただ、安倍政権が掲げる「1億総活躍社会」実現に向け、子育てや介護支援の予算は増やします。防衛費は、安倍政権の「積極的平和主義」や中国の海洋進出に対応するため、初めて5兆円を超えました。
 一方、予算の財源となる税収は、基幹税である法人税、所得税、消費税がいずれも伸びて57.6兆円になりましたが、歳出にはとても足りず不足分は新たな借金で賄います。その新規国債発行は前年より減らしましたが、それでも34.4兆円。予算の3分の1超を借金に頼る異常な状況が続きます。借金は、みなさんやもっと若い世代への負担の先送りだということを忘れないでください。

 さらに、就活で目指す業界や企業との関わりも考えてみましょう。「主な事業」の表を見てください。上のほうの項目から順に、人材サービス、医療・医薬品・介護、教育、建設・ゼネコン、住宅・不動産、自動車・電子部品、ロボット、食品・流通、旅行・観光、電機、防衛など多くの業界に関わる事業が並んでいることがわかると思います。

 予算案は、年明けの通常国会で審議され、可決されると4月から執行されます。その中身は、各省庁が国民の生活の維持や向上に必要だと考える事業を積み上げた結果です。現場で実際に予算を使うときには、役所が多くの民間企業に発注するので、企業にとって政府予算は大きな関心事。多くの企業が個別に、あるいは団体をつくって省庁や政党に自分の事業に関係する予算が増えるように要請するのはこのためです。また政府予算からは、いま国がどの分野に力を入れ、伸ばそうとしているかがわかります。

 たとえば、今回の予算案では医療費の増加を抑えるために、今は普及率が5割弱の後発医薬品(ジェネリック)の割合を8割に引き上げることを目指しています。医薬品業界にとっては大きな変革。予算案には、こうした業界研究のタネもたくさん詰まっているわけです。志望する業界に関わる予算の中身を詳しく調べてみると、ESなどに使える思わぬ発見があるかもしれませんよ。

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