ニュースのポイント
ビールの世界市場で大きな動きがありました。最大手ベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI)が、2位の英SABミラーを買収することで基本合意しました。日本のビールメーカーにも大きな影響がありそうです。グローバル化の時代ですから、世界市場の情勢にも無関心ではいられません。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「ビール世界首位、2位買収/ABI+SAB=シェア3割/海外、巨大化の傾向/日本大手、展開見極め」です。
記事の内容は――ABIは13日、SABミラー買収で基本合意したと発表した。売上高は単純合計で8兆円超。実現すれば世界シェア3割を占める巨大ビール会社が誕生する。ABIの買収提案額は約680億ポンド(約12兆4000億円)にのぼり、食品業界の買収・合併では過去最大。両社が正式合意に向けて進んでも、事業を展開する各国で
独占禁止法(独禁法)の許可を得る必要も出てくる。日本では大手ビール4社が100%近いシェアを占め、ABIやSABミラーもあまり知られていない。少子高齢化などでビール消費が減り続け、酒税の仕組みも複雑な日本市場を海外勢が業界再編の対象にしてこなかったためだが、今回の買収は日本にも影響しそうだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
ABIは世界のビール販売量の2割を占める巨大メーカーで、日本では「バドワイザー」「コロナ」「ヒューガルテンホワイト」などのブランドで知られています。これまで、次のような大型買収を続けて大きくなってきました。
2004年 ベルギーのインターブリューとブラジルのアンベブが統合してインベブに
2008年 米アンハイザー・ブッシュを約5.5兆円で買い現社名に
2012~2013年 メキシコ首位のグルボ・モデロを買収
そのABIが2位SABミラーを買収すると、表にあるように、続くハイネケン(オランダ)を大きく引き離して圧倒的なトップを占めることになります。ところが、一部企業が市場を独占すると公正で自由な競争ができなくなり市場の健全な発展を妨げるとして、各国には独占禁止法があります。今回、ABIは世界での大きなシェア獲得のために買収に乗り出しましたが、シェアが高い欧米や中国では独禁法をクリアするために一部事業を売却せざるを得ないだろうとみられています。
日本のビール市場は、世界でも珍しくABIなどの大手による買収がなく、キリン、アサヒ、サントリー、サッポロの大手4グループが激しいシェア争いを繰り広げてきました。ただ、今回の大型買収は、その日本市場や各メーカーにも変化を促しそうです。記事の後段では、日本メーカーへの影響について触れています。整理すると、
①海外企業買収のチャンス到来=ABIとSABミラーが販売量の大半を占めることになる欧米や中国などで独禁法に対応するため事業売却を迫られる可能性が高く、日本の大手にとっては事業拡大のチャンス
②日本企業も買収の対象になる可能性=世界的な再編が落ち着くと、これまでは対象外とされていたに日本に矛先が向くとの見方
もし買収が国内大手に及べば、国内のビール市場の様相は激変するかもしれません。キリンホールディングスの磯崎功典(よしのり)社長は記事で「全部終わった後、世界地図が変わって、日本だけ変わらないのはあり得ない」と危機感を語っています。これからは、国内市場のシェア争いだけでなく、世界市場の動向にも目を配る必要があります。関連報道に注目してください。
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