2015年09月17日

安保法案、国民の多数が反対なのになぜ通る? 民主主義を考える

テーマ:政治

ニュースのポイント

 昨日の夜、国会周辺に行ってきました。雨の中、何万という人たちが集まり「安保法案廃案」を叫び続けていました。みなさんと同じ学生の姿も多く見ました。世論調査では半数以上の人が安全保障関連法案に反対しています。そんな中で今日、法案が国会で可決されようとしています。国民の多数が反対している法案が、国民が選んだ国会議員の賛成多数で通る――なぜこんなことになるのでしょうか? 民主主義について考えます。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、1面トップの「安保 採決巡り緊迫/参院委 総括質疑に野党抵抗」です。ほかにも総合面(2、3、4面)、社説(16面)、社会面(38面)に関連記事が載っています。
 記事の内容は――安全保障関連法案を審議する参院特別委員会で与野党の対立が激化している。自民、公明両党は特別委で採決し、17日中に参院本会議での成立をめざすが、法案に対する根強い世論の反対を背景に野党は徹底抗戦する構え。国会議事堂の前では市民や団体による反対のデモが続いた。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 国会での与野党の激突が続いています。これまでの経緯を振り返ります。
 安倍首相は2012年末の政権復帰後、憲法9条改正を視野に、憲法改正手続きを緩める96条改正を唱えました。しかし世論の理解が得られないとみると、9条の解釈変更に方針を変更します。2014年7月、これまで政府が認められないとしてきた集団的自衛権の行使を認める閣議決定をし、2015年5月、これを盛り込んだ安全保障関連法案を国会に提出、4カ月近くにわたって議論されてきました。この間、安保法案について多くの憲法学者ら専門家が「違憲」と指摘して反対を表明。国民の間にも反対論が広まり、国内では異例の大規模デモが国会周辺などで行われるようになりました。

 2014年12月には衆院総選挙があり、自公の与党が圧倒的多数の議席を獲得、第3次安倍政権が発足しました。国民の信任を得た政権が提出した法案が、国会で採決されようとしているわけです。安倍首相は「選挙で選ばれた議員で審議を深め、決めるときには決めていただきたい」と言います。民主主義は最後は多数決という理屈です。たしかに、民主主義の手続きとして一見、瑕疵(かし)はなさそうです。

 昨年末の衆院選、投票に行った人も行かなかった人も思い出してください。あのとき安倍首相は自ら「アベノミクス」解散だと銘打ちました。自民党の選挙公約には「切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を速やかに整備する」とあるだけで「集団的自衛権」の文字もなく、大きな争点にはなりませんでした。少なくとも、安保法制の整備を期待して自民、公明の与党に投票した人は多くなかったと思います。与党に投票した人が安倍政権に何をやってもいいと「白紙委任」したわけではありません。
 集団的自衛権を行使したいのなら、憲法9条を改正するのが王道でしょう。あるいは、安倍首相が安保法制を争点に掲げて解散・総選挙に訴えていれば、今のような混乱は起きていなかったと思います。

 一連の経緯からは、選挙公約マニフェストのあり方、選挙戦のテーマの重要さが改めて問われます。私たち有権者が各党の政策をいかに見極めるかが重要ということでもあります。
 マスコミ以外の採用試験では、政治的テーマについて面接で問われることはあまりないと思いますが、安全保障法制は日本の大きな転換点です。デモの先頭に立つ学生団体「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基さんが「一人ひとり」や「個人として」と繰り返すように、みなさんも一人ひとりしっかり考えてください。

 安保法制や集団的自衛権の中身については、これまで以下のコラムで書きました。過去の記事もすべて読めます。
◆戦後日本の大転換! 安保法制ってなんだ?(2015年5月12日)
◆「日米ガイドライン」ってなに?なぜ、どう改定?(2015年4月28日)
◆【重要!】「集団的自衛権」容認を決定 「不戦の国」から「普通の国」へ?(2014年7月2日)
◆大テーマ!日本の未来左右する「集団的自衛権」ってなんだ?(2014年5月16日)

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