2017年03月17日

アメリカが3カ月ぶり追加利上げ 日本にどう影響?

テーマ:経済

ニュースのポイント

 大学生だと、金利の上げ下げにはあまり関心はないかと思います。でも、実社会では、金利が景気や会社の経営や暮らしぶりに大きな影響をもたらします。アメリカの中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)が、3カ月ぶりの追加利上げに踏み切りました。このニュースが日本にどんな影響をもたらすか、ごく簡単に解説します。金利は経済の基本です。関心を持つようにしましょう。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)

 今日取り上げるのは、総合面(3面)の「米、0.25%追加利上/FRB、景気過熱に懸念/日銀は緩和継続」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

日本だけ出口見えず

 今の世界の金利情勢をおおざっぱに説明しますと、少し前まで、アメリカも欧州も日本もゼロとかマイナスとか史上最低の金利水準でした。これは、2008年のリーマン・ショックのあとのデフレから抜け出せないため、中央銀行が金利を下げてお金を使わせ、物価を上げようとしたのです。アメリカは物価が上がり始め、2015年12月に約9年半ぶりの利上げに踏み切り、今回は3回目の利上げになります。欧州は、欧州中央銀行が1年前にゼロ金利に下げ、今は物価が上昇する気配も出てきたので利上げの機会を探っているところです。
 一方、日本は日銀がゼロ金利政策を続けていましたが、デフレから脱却できず、昨年2月からはマイナス金利政策にしています。ただ、それでも物価上昇の気配がなく、日本は利上げがみえない状態です。利上げに転ずるのを金融緩和政策の「出口」といいますが、まだ出口が全く見えないのは日本だけとなっています。
(グラフは9面に掲載された日銀の金融政策と物価上昇率の関係を表したものです)

理論的には「ドル高円安」に

 アメリカが利上げをすると、日本にはどんな影響があるのでしょうか。理論上は、為替が「円安ドル高」になります。アメリカと日本の金利差が大きくなるわけですから、金利の低いところから金利の高いところへお金の流れが加速します。つまり「ドルがより買われて高くなり、円がより売られて安くなる」ということになります。円安になると、輸出企業はもうかり、輸入企業は経営が厳しくなります。また、輸入品の値段が上がりますので、日本国内の物価が上がります。他にもアメリカの利上げは、アメリカの景気が落ち着く方向に働きますので、日本にとってはお得意様の財布が少し締まるというマイナスも考えられます。

「織り込み済み」で理論と反対に

 ただ、現実は理論通りにならないことがよくあります。利上げの時期や幅を予想できれば、投資家や消費者は実際に利上げされるより早く、利上げを想定した行動に出るからです。「織り込み済み」という日本語は、こうした先取り行動があった場合に使われます。つまり、アメリカで利上げがあっても、理論と反対に「円高ドル安」になることもあります。これは実際の利上げの前に、投資家や消費者が「円を売ってドルを買う」行動をすませていることを示しています。為替などの世界は「生き馬の目を抜く
」ような厳しい世界ですので、人より早く行動しようとするため、理論よりも早く結果が表れるわけです。

日本の金利上げはいつになるのか

 金利の動向で日本人として最も関心を持たないといけないことは、日銀がいつ利上げに向かうかです。日銀は、アベノミクスの中心政策として「異次元の金融緩和」をしています。ものすごい量の国債などを買って市中に出回るお金の量を増やし、金利を下げて物価を上げようという政策です。ただ、この政策は4年になりますが、まだ物価は上がりません。一方で、買える国債には限界があり、そんなに遠くないうちに行き詰まりそうです。国債などの購入量を減らして金利を上げるように政策転換すると、経済に大波乱が起きる可能性があるという専門家がいます。国債の値段が暴落して金利が跳ね上がるとか、借金財政がもたなくなってハイパーインフレになるとか、いろいろな波乱が予想されます。そうならないように上手に政策転換できるか、が大注目点です。
 金利といえば難しそうですが、みなさんもマイナスとかゼロとかの金利ってなんか変だなとは思いますよね。やはり今の日本の金利は異常なのです。ただ、異常が平常になってしまうと、なかなか正常に戻せません。日本は実はそんな深刻な経済構造を抱えているのだということを覚えておきましょう。
(写真は、東京にある日銀本店です)

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