【プロフィール】
常見陽平(つねみようへい)
千葉商科大学国際教養学部准教授(労働社会学)/働き方評論家。リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年から千葉商科大専任講師、2020年から現職。働き方や就活に関する著書など多数。
●常見陽平・千葉商科大准教授に聞く「危険な大量採用企業を見抜く チェックポイントを押さえよう」はこちらから
自己分析は企業研究とセットで!
就活生が自己分析で悩んでしまう理由のひとつは、目的もわからず「自己分析を、とにかくやらなければいけない」と感じて始めてしまうからだと思います。そのため、たとえば「私は人を笑顔にしたい」とか「社会に貢献したい」とか当たり前だろうという結論しか出てこなかったり、自己分析それ自体が目的化したりする。浅い自己分析で、自分が分からなくなり迷走するのです。
自分にあった企業や職種を選ぶために自己分析はあります。「自分の価値観や行動特性を明らかにする」「自分のアピールポイントを明らかにする」といったゴールがあるのです。
ある程度自己分析したら企業と接点持とう
自己分析を深めすぎるのはあまり意味がありません。ある程度自分の価値観などを振り返り、自分のことが見えてきたら、企業の説明会に参加したり社員に話を聞く機会をつくったりして就活を進めることが大切です。自己分析は企業研究、選考対策とセットなのです。
自分はこういう力がある、こういう行動特性があると感じても、それが自分で想像する業界にだけあてはまるとは限りません。いろいろな企業と接し就職活動を広げていく過程で、「別の仕事のほうが向いているかも」と感じることもあります。そうすると、また自己分析に立ち返る。自己分析と企業研究は両輪で、行ったり来たりしながら進めていくものなんです。「自己分析を先にやらなきゃ!」となったら、沼にはまってしまいますね。
できればみんなで分析しあう
自己分析は指導者や友人、知人の助けがあったほうがうまくいきます。自己分析が大変だと感じている人は、周りの人とみんなでやってみるといいと思います。それぞれデータを持ち寄ったり、簡単なワークシートや診断ツールみたいなものを使ったりしてそれをもとに進めるといいでしょう。診断ツールも、心理状態や提供する会社によって結果が異なったりするので、ひとつの結果を鵜呑みにするのは避けたほうがいいでしょう。そのことを踏まえたうえで、診断ツールの結果を見てお互いにフィードバックしてはどうでしょうか。自分では気がつかなかった特性や強み、自分では弱みだと思っていたことが人から見たら強みだったということもあるかもしれません。過去、歴代の彼氏に会って自己分析のデータをもらったという学生もいましたね。
スマホの履歴を活用しよう
自己分析のマニュアル本は正直、あまり更新されていないと感じます。最新のツールをもっと活用すべきでしょう。そこでおすすめしているのがスマホの活用です。スマホは自己分析のツールを劇的に進化させたと思っています。
カメラロールを見返してみたり、SNSの書き込み履歴を見てみたり、大学に提出したリポートの原稿がクラウドに残っていたりするのでそれを見返したりするといい、という提案を僕はしています。そうすることで自分の成長や変化をとらえることができ、自己分析に役立てることができるでしょう。
自己分析は「働く人生を楽しくするため」
自己分析は就活のためではなく、「楽しく生きるため、働く人生を楽しくするため」と伝えています。人間は誰でも行動特性、もっといえば「くせ」があり、得意なことや不得意なことをもっています。それを知っておけば、人生をより楽しく送ることができるはずです。就活のためアピールポイントを考える必要がありますが、それは自分の行動特性、くせを知ってからです。
ただ自己分析を深めて自分の苦手なことばかりに気づいても、暗くなるばかりです。他の人の視点をとりいれることで新たな強みに気づくかもしれません。弱みは強みに変えてしまうこともできます。また、自分の行動特性を知ることでどうしてもやりたくない仕事に気づいたり、避けたいことに気づいたりもする。やりたくないことに気づくのも就職活動では大切なことです。
そして「自己分析を極めるまで企業と会うな」という考えは危険です。ある程度自分について考えたら、企業にあってショックを受けてきたらいい。自分の考えをその都度修正して、自己分析を磨いていけばいいと思います。
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