人事のホンネ

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【特別編 Part5】
面接で聞かれる!チームへの適性 「周りを巻き込む力」ある?

2018年05月22日

 面接で多くの企業はチームワークをとれる人か、チームへの適性を確認します。前回の特別編Part4で取り上げた「コミュニケーション能力」にも関わりますが、たいていの仕事はチーム作業だからです。ひとりで完結する仕事はほとんどないでしょう。だから、企業はあなたがチームでどんな働きができる人かを見極めようとします。どんなことを聞かれるのか把握したうえで、自分の体験を振り返って準備してください。「人事のホンネ」特別編の第5回はチームワークについてまとめます。(編集長・木之本敬介)

(写真は、「朝日学生キャリア塾」での面接特訓の様子)

「ひとりでできる仕事はひとつもない」

 まずは、なぜチームワークが大切なのかについて。

JR東海】鉄道業にはひとりでできる仕事はひとつもないので、チームワークと協調性が非常に重要です。東海道新幹線を例にあげると、車掌や運転士は花形で人気職種ですが、それだけではなく車両を整備する人、駅で切符を売る人、夜勤で線路の補修をする土木の人、電気関係の人、本当にいろいろな人の協力がないと新幹線は走りません。チームワークの大切さを感じられるかどうかはとても大事です。

東京ガス】当社の仕事はチームワークが基本です。リーダーシップを強調しても、協調性をアピールしてもいいが、「お客様にガス、電力、エネルギーを安全に、安定して供給する」使命を果たすには、チームワークは不可欠です。

ファーストリテイリング】当社は店舗でも本部でも、いろいろな人とチームになって仕事をすることが多い。店長になると30人、50人の部下ができるし、グローバルなら様々な国の人と仕事をしなければなりません。ですから、チームで一緒に仕事をすることに対しての適性、そういう仕事をやりたいかどうかを重視します。

一匹オオカミよりグループの体験

 では、チーム作業に向いているかどうか、どうやって確認するのでしょうか。やはり、一番聞かれるのは学生時代の経験(ガクチカ)です。

ヤマト運輸】面接では、サークルでもアルバイトでも、何かしらの集団の中でどういう役割をしてきたかを聞きます。我々の仕事も単独よりチームで動くので、チーム内での動きは見ます。必ず引っ張るタイプの人間が欲しいということではなく、フォローする人も必要です。チームで何か困難があったときにどう対処したのか、どういう動きをしたのかには興味があります。

【JR東海】学生時代に集団生活みたいなことはしていたほうがいい。ひとりでバックパッカーをしていたとか、とてつもない大きなことをやってきたという人と、地味だけれどアルバイトやサークルなどのグループで活動していた人がいたとします。一見派手な経験をしてきた人が良さそうですが、仮に地味だったとしても、何かグループの中でチームワークの大切さを知ったという学生に魅力を感じます。
大学に限らず中学・高校でもいいんですが、一匹狼でやってきたことよりグループで何をやってきたのかを聞くことが多いですね。大きなことをやってきたとアピールする学生もいますし、もちろんそういう行動力、瞬発力も大切ですが、それだけで友だちの話が一切聞こえてこなかったりすると「大丈夫かな?」とやや心配になります。鉄道業をみんなで支えているという使命感や誇りに共感できる学生は、どこかでチームワークを大切にする生活をしてきたと思うので。

仲間内でなく多様な人といかに関わったか

三井不動産】どの面接でも、学生時代、ときに困難に直面することがあっても、真摯に向き合い多様なメンバーと一緒に何かを成し遂げた経験をしているかどうかについて聞くことが多い。私たちの仕事は当社の社員だけですることは少ないからです。たとえば「ららぽーと」をつくる場合、ゼネコン、デザイナー、代理店、あるいは弁護士などいろんな方と、長い時間をかけて一緒に進めます。プロジェクトに関わっていただく方とときに利害が衝突することはあるかもしれませんが、それを自らの力で乗り越えて、社内外の多様なスペシャリストを束ね、プロジェクトを成功に導くのが当社の仕事です。
 「ゼミの幹事長」「サークルのリーダー」といった肩書きは必ずしも必要ありません。気の合う仲間内だけではなく、多種多様なメンバーといかに関わってきたかを聞きます。ボランティアでも、地域コミュニティでの活動、海外の経験でも何でもいいのですが、様々な価値観の人たちと交わって何かを成し遂げてきた人。そういう人が当社に向いていると思います。
 たとえば「海外留学中に、得意な野球やサッカーで地元の学生も含めたチームを作りまとめてきた」「部活やサークル活動で、みんなで意見を戦わせながら優勝や成功に導くために努力した」「地域の祭りなどで他の大学や年代の違う人と交流して、一つのことを成し遂げた」といった学生がいました。

 前回のコミュニケーション編でも出てきましたが、仕事は仲の良い友だちと楽しくできればいい、というものではありません。世代やときに国籍、立場や価値観、意見の異なる人たちをまとめていく力が求められます。

「ひとりでやりました」は困る?

帝国ホテル】協調性を見ます。会社でひとりでできることは限られています。自分の決断でやるにしても、サポートしてくれた人の存在を認識しているかどうか。「全部自分でやりました」「私は何でも自分ひとりでできるんです」というのでは困ります。「周りを巻き込んで大きなことを達成する力」を重視しています。

第一生命】第一生命は、人財育成の方針として「プロフェッショナル&チームワーク」を掲げています。プロフェッショナルは、専門性を身につけるのはもちろんのこと、自立心と向上心を持って積極的に変革に挑戦できる人財です。チームワークは、多様な個性を発揮し、周囲を巻き込みながら成長できること。この二つを兼ね備えた人財を発掘したいと思っています。

デンソー】(ESの「集団の中でどういう役割を果たすことが多いですか。エピソードも」という欄では)「周囲に働きかける力」を知りたいんです。デンソーはチームワークを大切にする会社です。仲間と共に夢を実現するために、どのような想いや姿勢で取り組んでいるかを確認しています。


三菱ケミカル】学生時代に何に取り組んで、何を成し遂げたか。ひとりではなく、みんなを巻き込んだかを見ます。「ひとりで黙々と」というより、組織に入ってマネジメントしたとか陰ながらサポートしたとか、人としての幅を広げる取り組みをしてきたかを確認したい。「人を巻き込む」の実践ができているかどうかも興味深いところです。

 「ひとりで成し遂げた」は立派ですが、さほど求められていないようです。リーダーシップを重視する会社もありますが、周りが見えていない人は歓迎されません。「周り、人を巻き込む力」がポイントです。サークル、ゼミ、アルバイト、ボランティアなどでそんな体験を積んできた人は多いと思います。単に頑張った、成し遂げたと言うのではなく、アピールの仕方を工夫して周りとの関わりを強調してみましょう。きっと面接官に響きますよ。

みなさんに一言!

【デンソー】まずはチームワークの会社です。グローバル15万人の一人ひとりがモチベートされ、能力を引き出され、生かされている。ひとりの天才の会社じゃなく、チームでやるのが特徴です。IT系などいろんな会社が自動車業界に参入する中、一握りの人だけがスポットライトを浴びるのではなく、みんなが活躍していると思える状況をつくることが勝ち残るシナリオでもあると思っています。

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