
電気やガスなどの自由化が進むエネルギー業界にあって、東京ガスはいま大きく変身しつつあります。採用でも新しい試みをしています。(編集長・木之本敬介)
■採用人数と職種
──2017年春入社の新卒採用人数を教えてください。
「文系職」と「理系職」があわせて111人、現場のリーダーなど各分野のエキスパートを目指す「プロフェッショナル職」が62人。大学、大学院卒を合わせた数字です。
男女比は文系では半々くらいです。応募時には男性7対女性3くらいですが、結果的に入社するのはほぼ半々です。2016年春入社では初めて女性が半数を超えました。一方で理系は大学に女性が少ないこともあり2割くらい。プロフェッショナル職は今のところ圧倒的に男性が多いですが、徐々に女性も増えてきています。
──理系職と文系職はいわゆる「総合職」ですか。
総合職・一般職という区別はしておらず、会社への貢献のタイプで分類しています。入社後の貢献タイプは「ジェネラル」「ビジネス・フェロー」「エキスパート」の3タイプあります。「ジェネラル」は各分野の専門を磨きつつ、部門を横断して全社的に活躍するイメージ。「ビジネス・フェロー」は、ある分野で日本を代表する第一人者というイメージで、いわゆる研究職が多いです。入社時は、ジェネラルとビジネス・フェローは同じ枠組みで採用し、採用時には「文系職」「理系職」と呼んでいます。
「エキスパート」は生産部門や導管部門の現場や事務職など、ある分野で長く働き、専門性を高めていきます。前述の「プロフェッショナル職」は入社すると貢献タイプが「エキスパート」になります。大卒、大学院卒の「プロフェッショナル職」での採用は2014年入社から導入しました。
──なぜ「プロフェッショナル職」を導入したのですか。
もともと現場の仕事に就く社員は高卒の人の割合が多いのですが、業務内容が工事会社の方々を束ねたり、役所等と折衝したりと、役割が高度化してきています。コミュニケーション力や現場をまとめて推進する力が必要となったことから、高い能力を持ったリーダーを育てるために大卒の採用をするようになりました。
必要な人数は確保できていますが、理系学部出身の学生からの人気が思うほど伸びていない点が課題です。インフラを技術で支えるためには、理系の学生にもっと関心を持ってほしいと思うのですが、学生に職種の違いを伝えきれていない思いがあります。
──文系は女性の比率が上回ったそうですが、女性の方が優秀?
一般的な印象では、女性の方が「やりたいこと」が明確ですね。男性の場合、良くも悪くも「絶対にこの仕事をしたい」というより、東京ガスの社風や経営理念、人柄にひかれて、という人が多い印象です。やはり具体的に「私はこういう仕事がしたい」というイメージを語る人は迫力があって、「よく考えてくれているな」と思います。
一方で、あまりに一つの仕事のイメージが強すぎると、入社してから苦労するかもしれません。必ずその仕事をすぐにできるとは限りませんから。東京ガスは、LNG(液化天然ガス)を調達して船で運び、LNG受入基地でガスや電力に加工してお客様にお届けする「バリューチェーン」が強みで、幅広い仕事があります。さらには2020年に向けて、これまでの「(ガス事業を軸とする)富士山型経営」から、「(数々の山々が連なり多くの頂上がある)八ケ岳型経営」への転換を目指しています。具体的には海外事業やエンジニアリング事業、不動産事業、LPG(液化石油ガス)などのリキッドガス事業、暮らしサービス事業など、新たな事業の柱を増やしていこうとしているところです。その中である程度「私はこういうことをやりたい」という希望を自分自身の価値観で語ってくれる人は魅力的ですが、「これしかやりたくない」と言われてしまうとミスマッチの可能性を心配してしまいますね。
──どんな学生がいましたか。
たとえば理系の女性で「食に興味があり、厨房機器の開発をしたい」という人がいました。食や暮らしに関する希望は、女性に比較的多いですね。ただ、私たちはメーカーではないので、大人数で機器の開発をするわけではありません。もちろん希望を明確に持つのは良いことですが、そのうえで、東京ガスが目指すところや、お客様にどういう価値をお届けしようとしているかという点にも共感できるなら、「この会社でいろんなことを体験してみよう」と思って入社した方が楽しめるよ、と面接では話すようにしています。もちろん、希望通りの配属になることも十分にあります。
──理系採用にも営業職があるんですね。
「技術営業」と呼んだ方がいいかもしれません。私も理系で、営業を希望して入りました。理系が70人入社すると20人程度は営業を担当します。たとえば、お客様の建物の建て替えの話があった場合、新しいエネルギーシステムを提案します。「コージェネレーションシステムを設置していただき、発電時の排熱を使い、空調システムをこのように設計したら高効率で経済的なメリットがありますよ」といったプランですね。そこに当社から供給する電力を組み合わせたり、それらのシステム、機器を東京ガスグループの資産として保有してサービスを提供するスキーム「エネルギーサービス」を提案したりします。お客様のそばで、技術力を含めたコミュニケーション力を発揮して、「お客様に自分を買ってもらう」という面白さがあります。
営業には大まかに言って、マンションや一戸建ての「家庭用」、工場などの「産業用」、それ以外の都市エネルギーの「業務用」と3部門があります。先ほどの例は業務用分野のものです。どの部署にも理系・文系ともにいますが、「家庭用」が一番文系の比率が高い。「産業用」は理系が多く、「業務用」がその中間という感じです。
──「理系の営業職」は珍しいですね。
システムエンジニアもお客様のところに行って営業することがありますよね。それのエネルギー版と考えれば分かりやすいと思います。
私は大学でエネルギー・環境系の研究室にいたのですが、研究開発そのものより、お客様の前で自分が提供したエネルギーがどう使われているかを見て、効果が分かるような仕事を希望していました。東京ガスの「技術営業」はまさにお客様に自分の技術力を提供でき、お客様も喜んでくれる仕事だと思い、魅力を感じました。その点に憧れて入社しました。
──営業職で入社して、その後研究職に転じることは?
「ジェネラル」の社員は5年に一度くらいは異動するので、いろんな部署を経験します。ただ、営業から研究職への異動は多くはないですね。逆に、研究職から営業系の職場への異動は比較的ありえます。一言で「技術営業」といっても、お客様に直接営業を行う営業担当のほかに、後方支援をしたり、営業部門の中でお客様に提供する技術開発をしたり、種類がいろいろあります。