人事のホンネ

人事のホンネ

【特別編 Part4】
企業が最重視する「コミュ力」って? 面接ではここに注意

2018年05月15日

 「人事のホンネ」特別編の第4回は、採用選考で企業がもっとも重視するコミュニケーション能力(コミュ力)を取り上げます。でも、企業が求めるコミュ力って何だかわかりますか。「友だち多いし大丈夫」と思い込んでいる人もいるかもしれませんが、仕事で必要なコミュ力は単に「すぐ仲良くなれる」こととは違います。面接で注意するポイントをまとめました。(編集長・木之本敬介)

(写真は、「朝日学生キャリア塾」での面接特訓の様子)

「誰とも仲良くなれる」じゃない、大人と話せるか

 経団連の加盟企業アンケートによると、2019年卒採用で「選考にあたって重視した点」のトップは「コミュニケーション能力」で82.0%でした。続く「主体性」(60.7%)、「チャレンジ精神」(51.7%)、「協調性」(47.0%)などを引き離して15年連続の1位。複数回答ですが8割以上の企業が挙げていますから、コミュ力だけはないと仕事にならない、「採用の前提条件」とも言えそうです。

朝日新聞社】同じ大学に通っている友人は、育ってきた背景が似通っていると思います。でも社会で働くと、いろんな人と付き合わなきゃいけない。だから、大人と話ができるかは大事です。コミュニケーションというと、単に「誰とでも仲良くなれます」とか「親しみやすいと言われます」と言う人が多いが、そうではありません。人にとってつらいことをうまく伝えられるか、嫌なことをいかにしてやってもらえるかがビジネスのうえでのコミュニケーション能力。そういう能力の土台を見たい。「私はできます!」と言葉で言ってもだめ。いろんな体験に裏付けられていると説得力があって、「あ、そうだよね。こういう人だったらこういう仕事もできそうだよね」と納得できるんです。

相手の懐に入るコミュニケーション

 みなさんがふだん話をする大人は、親、先生、アルバイト先の社員など、あなたを知っている人たちだと思います。でも仕事では、初対面の人や社内外のさまざまな人とうまくコミュニケーションをとらなければなりません。その資質を見極めるために面接で聞かれるのは、やはり学生時代の体験です。

デンソー】グローバル企業ですから、海外の方と仕事をする機会が多くあります。ダイバーシティ重視で社内にもいろんな社員がいるので、相手に合わせたコミュニケーションとか、相手をモチベートして一緒にやる気になってもらうコミュニケーションをとれるかを確認します。(学生時代にチームのモチベーションを上げるためにやったこととかを確認する?)そういったことを聞きますね。「サークルで何か課題があって意見が合わないとき、あなたはどう行動しましたか」とか、「後輩一人ひとりに、あなたはどう成長を促していますか」とか。

三菱地所】チームワークと言っても、単に「仲良し」ということではありません。様々な立場の人をまとめていくので、相手の懐に一歩入れるコミュニケーションが必要なんです。相手が何を考えて何を大事にしているか、そこまで踏み込んで考えて、全員にとって100点じゃなくても、皆でつくる最高のものを目指して、何とか調整していくリーダーシップです。ただ、絶対的な権力や正解で引っ張っていくだけではなく、細やかに気配りをしたり、いろんなやり方がありますだから、「リーダーシップがある」と言う学生には、具体的にどんな行動や考え方のことを言っているのかを聞いています。

質問が分からなければ聞き返して

丸紅】きちんと会話のキャッチボールができるかどうかも重要です。質問の意図をきちんと理解してポイントをずらさずに回答をしながらも、自分自身のPRも含めて言いたいことをしっかりと伝えることができる人との面接は、会話が弾むものです。コミュニケーションと言うと、話す力に焦点が当たりがちですが、相手の立場に立って話ができるかどうか、つまり「聞く力」も大きなポイントです。商社の仕事で求められるコミュニケーションも同じなのではないでしょうか。

ソニー】私自身が面接するときは、短いやりとりを重ねることが多いですね。たとえば、「○○についてどう考えますか」と尋ねたとき、何を聞かれているかをきちんと把握してもらい、ポイントを外さずに的確な長さで答えてもらえるか。これも一つのコミュニケーション能力です。ある人がコミュニケーションで一番大事なのは「観察力」だと話していて、なるほどと思ったことがあります。要は、自分が伝えたいことが相手にちゃんと受け入れられているかどうか。「伝わったことが伝えたこと」だと。鍵になるのが、相手を観察することだ、という指摘です。しっかり伝えていくために、伝えるべき相手の状況をしっかり見ることですね。

 前回のグループディスカッションにもありましたが、「聞く力」もコミュニケーションの基本です。ただ面接では緊張もあって質問の趣旨がよく分からなかった、ということも。そんなときはどうしたらいいのでしょう?

【ソニー】「分からないけど何か答えないと」と思って無理に答えるより、「今の質問はこういう趣旨ですか」と聞き返してもらって全く問題ありません。正確なコミュニケーションをしようとしているわけですから。質問の趣旨を確認することは、実は、仕事をしていくうえでも重要なこと。(営業で相手の発言の趣旨が分からないまま話していたら)商談が成立しないですよね。だから、短いやりとりだとしても、しっかりした必要な情報を交換できることが、案外重要なんです。

話下手でも内定

コクヨ】面接では、話し方がうまい人が有利だと思われがちですが、3語か4語でも伝わるときは伝わってきます。饒舌に滑舌よく話すだけではなく、自分なりに思いを伝えてもらえればいい。目的意識が伴わず、しゃべりだけ良くても仕方ありません。(言葉に詰まってしまったら)自分のペース、自分の言葉で話してくださいと言います。(話がうまくなくても内定した人は)いますよ。結果としては、話が上手な内定者が多いのですが、言葉は足りないけれど自分なりに目的意識や軸があって、コクヨで取り組みたいことをしっかり持った人です。

 饒舌なだけでは通りませんし、話が苦手な人も諦めずに挑戦することが大事です。ただ、面接前にできることはあります。事前に練習するなど、精いっぱいの準備をしたうえで臨んでください。

テレビ朝日】今は核家族化が進んで、年が離れた人と話す機会が減っています。だから経営陣など年長者との面接で緊張のあまり話せない人もいる。普段からいろんな世代の人と話をする機会をもっておいた方がいい。友達言葉では役員面接をクリアできないでしょう。でも、言葉使いを都度気にしているようでは、言いたいことがうまく言えなくなる。面接は限られた時間です。その中で自分を出せないのはもったいないので、準備はしておいた方がいいですね。小手先の面接テクニックを磨くのではなく、自分をしっかり表現するための準備です。

みなさんに一言!

電通】最初の面談では、サービス業なのでコミュニケーション能力を一番に見ています。すぐ人と仲良くなれますという狭義のコミュニケーション能力じゃなく広義の能力です。要は、面談員の質問を素早く理解し、自分の考えを的確に簡潔にまとめて、分かりやすく説明できるかどうかというベーシックな面。あとは、イマジネーションというか洞察力。こう言うと面談員はどういう気持ちになるのか、だとするとどう伝えればいいんだろうなど、細やかな対応ができるかどうか。
 危険察知能力もありますね。「志望動機は?」と問われて、用意してきた動機を延々としゃべり続けたりしたら危険察知能力ゼロでしょう。面談員が飽きていることに気づかず、短い面談時間の中で5分間も志望動機をしゃべるなんてあり得ない。そういったことも含めてコミュニケーション能力なんです。

人事のホンネ

【特別編 Part4】