人事のホンネ

株式会社電通

2015シーズン【第8回 電通】
「人との違い」を見せてほしい! 仕事はキツいけどスリリング!!

電通 人事局 採用部長 真道哲哉 (まみち・てつや)さん

2013年12月18日

■昨年の採用実績・職種
 ――2014年度入社予定の採用実績を教えてください。
 今の内定者の人数は公表出来ませんが、今年の4月に入社したのは136名。そのうち総合職が123名、アート職が13名です。男女比は7対3くらい。この10年ぐらいは女性が3割。電通は結構厳しいイメージがあるので応募者も男性の方が少し多い。理系は2~3割。残念なことに理系の学生の選択肢になかなか入れてもらえないんですよね。

 ――理系の職場はあるんですか。
 特に技術職的な職種はありませんが、全ての部署で活躍してますよ。なかでもクリエーターやプランナー(戦略部門)には理系出身者が多くいます。理系の人は仮説の立証やPDCA(Plan→Do→Check→Action)サイクルを使い慣れていますから。大学院卒は2~3割です。大卒と院卒で区別はしていません。

 ――エントリーの状況は?
 プレエントリーの人数は万単位ですが、これを増やすために採用広報に力を入れています。人材の多様性を求めていることもありますので。最近、採用広報はその企業のブランドイメージに影響するくらいに大きな存在になっています。就活生は社会人予備軍ですよね。たとえ入社に至らなかった学生でも社会人になってから電通と一緒に働いてみたいと思ったり、電通に転職を考えたりするかもしれない。計り知れない影響があると思います。
 エントリー人数は千単位。エントリーの課題はコピペできない内容にしています。本気じゃないと書けないようにややこしく。

 ――なぜ多様な人材が必要なのですか。
 電通でも広告以外のビジネスが増えています。広告には興味なくても、優秀で「コミュニケーションビジネス」に向いている人はいるはずです。そういう人たちにも受けてほしい。最近の学生は、「自分は理系だから」とか、「自分なんかとても受からないから」と決め付けがちです。そういう思い込みをせずにぜひ興味を持っていただきたいと思います。

 ――そのための戦略は?
 人を動かす心のツボを「インサイト」と言うんですが、僕たちはなんとかして就活生のインサイトに迫ろうとしています。例えば、「女性のための働き方を説明します」というよりは「女子会やります。スタッフも全員女性、講演する人も司会も女性、女性だけの説明会です」とした方が学生に響く。「理系でも電通には仕事がありますよ」というよりは「理系の学生と理系の社員だけを集めたイベントやります」の方が分かりやすい。いろんなやり方で、就活生の心にどうしたら響くかを考えるようにしています。
 以前の採用メッセージは「ヒトノココロヲウゴカスシゴト、ナンデモアリ。」でした。それを発している会社が就活生の心を動かせなかったら、「電通もできてないじゃん」って言われる。これが一番恐ろしい(笑)。自ら首を絞める話でもありますが、「自分たちにできなかったら学生に響かないよね、キレイゴトを言っても」っていうことですね。

 ――「就活生の心に響く」PRには、いつから取り組んでいるのですか。
 2009年くらいからです。我々は電通のビジネスを「コミュニケーションビジネス」と呼ぶべきだと考えているんですが、それに見合ったユニークさがあってしかるべきで、いままでのように通り一辺倒のものを作って、説明会をやって、エントリーって言うんじゃなく、就活生、あわよくば世間一般に「電通って面白い会社だな」と思ってもらえるようなスペシャルな企画をみんなで考えていく。1回目は「就活生の夢」という企画で、広告会社に入ったら何をしたいのか10文字で応募してもらいました。電通ビルのすべての窓のブラインドを開け閉めして、ビルの壁面を使って就活生へのメッセージを発信して朝日新聞さんでも取り上げていただきました。
 そのような、普通の採用広報じゃない電通ならではの仕掛けを毎年やっています。(ちなみに昨年は面談に臨む全ての学生に自己紹介をするためのオリジナル名刺を用意し、渡しました)ただ、どんなに評判が良くても同じことは二度やらないから結構きついですよ。今年はまだプランニング中です。あと一番大事なのは上から目線は当然、下から目線でもなく、いかに就活生と同じ高さの目線でコミュニケーションがとれるかですね。

 ――総合職で入ると、実際の仕事は主として営業ですか。
 7500人の社員のうち約1/4が営業ですが、今年から新入社員の初任配属はなくなりました。新聞局、ラジオテレビ&エンタテインメント局などのメディア担当セクション、ネットを中心にしたデジタル・ビジネス局、コピーライターやプランナーがいるクリエーティブプランニング局(CRP局)などで数年経験を積んで自分の強みを持ってから営業に行くようにしています。営業はある程度仕事が分かってからやった方がいいという考え方です。

 ――クリエーティブ部門を志望する学生も多いのでしょうね。
 もともとクリエーティブ志望の人はそれほど多くはありません。新入社員研修を受けてから、クリエーティブをやりたいという人が増えます。あとは、映像、スポーツビジネス、営業とか研修を通じていろいろな仕事に興味を持つようになります。グローバルビジネスに興味がある人もいます。一般の学生からは「電通はソフトバンクのCMを考えるくらいすごいアイデアがないとダメなんじゃないか」と、勝手に高いハードルがあると見られてしまう。よほどすばらしいアイデアの持ち主でなければ受けることすら出来ないんじゃないかと。そういうイメージを勝手に持たれてしまうのは残念です。

 ――実際は必ずしもそうではない、いろんなタイプがほしいということですか。
 実際いろんな人がいるし、いろんな仕事があります。アイデアは大事ですが、その出し方は後から学べます。新入社員研修の初日は「アイデア発想演習」というプログラムからスタートしますし、経験値を積むことである程度のレベルには達することが出来るものだと思います。

 ――アート職は主に美大出身者ですか?
 基本的には美大の出身者ですね。あとは一般の大学のデザイン系の学部で学んだ方なども入社しています。

 ――最近の新入社員はどんなタイプが多いのでしょう?
 一見いい学生が多いですね。おとなしくて。生意気な学生が減ってきているということでしょうか。あとは、ちょっと諦めが早い傾向があるのかもしれない。

 ――本当は生意気な人がほしい?
 そこは難しくて、今の電通のビジネスに合った人だけを採れば良いという訳ではなくて、将来を見据えて未来の電通のビジネスを担える人材を採らないといけない。将来の電通がどうなるかはよく分かりませんが、世の中も変化するだろうし、変化に強い会社になるために、いろんな人がいないと。人材の多様性を求めていますが、そのバランスが難しいと感じます。

頭を使う難しいES、より良くするため誰かと相談…アリかも

■採用選考の流れと求める人材像
 ――採用試験の流れ、スケジュールを教えてください。
 12月1日からプレエントリーしてもらい、本エントリーは2月上旬ごろからで、SPIの適性検査が3月中旬、4月から面談です。面談は原則としては土日に行います。

 ――なぜ土日に?
 学業に支障がないようにということもありますが、現場の社員が面談するので通常業務のない土日にしています。一緒に働きたいか、電通の適性があるかどうか、現場の社員に判断してもらおうということです。

 ――面接を「面談」と呼ぶのはなぜですか?
 上から目線じゃなくて、面談で言葉のキャッチボールというか、会話の中で適性やコミュニケーション能力を推し量りたいからです。

 ――ESの「コピペできない設問」は、ハードルとして設けているのですか。
 電通みたいに一人ひとりの個性が大事な会社にコピペして入って来るのもどうかと思うし、そうした課題を面白がれるのも一つの資質です。頭を使う、知恵を絞るのが大事な会社なので、ああいう迷惑なものになっています(笑)。

 ――以前のESでは、「新しいアプリを考えろ」とか……。
 「廃校になった小学校の使い道を考えろ」とか、「おみくじに代わる正月の慣習を考えろ」とか、その学生の個性が表現出来るような課題を書いてもらいます。
 4~5年前から「採用広報だけじゃなくて、採用選考においても電通らしい面白さがないと嘘だよね」と変えてきました。いかにも電通らしい選考をやっていきたい。採用は、母集団が毎年違うし、よく「生もの」だと言われます。いいものは残しつつ変えていく、アップグレードできる仕事です。前例にとらわれず新しいことにチャレンジしていく会社なので、採用もそうあるべきだと思いますね。

 ――エントリーしてくる学生はどんなタイプが多いですか?
 いろんなものごとを面白がれる人、積極的だったり、好奇心が強かったり、考えたことをアウトプットできる人。例えば、サークルで映画を作っていましたでも、アプリを作りましたでも何でもいいんですが、自分の考えたことを形にしていく人が多いように思いますね。

 ――求める人材と合致していますか。
 そうですね。理系の人の場合、趣味ではなく学業でアウトプットしている人が多く来ます。体育会系では例えば、チームを動かすために自分でメニューを考えて実践しているような人とか。そういう意味では、求める人材を採用できていると思いますね。

 ――憧れで受ける学生も多いと思いますが、こういう学生はちょっと違うぞというパターンは?
 人任せ、主体的じゃない、受身、そういう人たちはちょっと厳しいと思いますね。以前「ヒトノココロヲウゴカスシゴト、ナンデモアリ。」という採用メッセージにしたところ、面談で「人の心を動かす仕事をしたいんですが、何かありませんか?」と言う学生がいた。そりゃ違うだろ、君が作るんだよと。これって笑い事じゃなくて、うちの「電通若者研究部(ワカモン)」が発表したデータで、「就活生がターゲット企業に望むこと」の上位に「OB訪問をやってほしい」というのがありました。最近、個人情報の絡みで難しくなっているのはわかります。でも、それは自分でやれよ、自分でツテをいろいろ探してやりなさいよと言いたくなる。そのくらい受け身なんだなと思いましたね。

■面接のポイント
 ――面接の形式を教えてください。
 2013年の実績ですが、4月最初の土日が1次面談で1対1です。30代中盤から40代くらいの社員で15分くらいです。その次が部長クラス、2対1の個人面談で、20~25分くらい。その次が初めて人事部門中心で、今年は2対1もしくは学生数人の複数面談でした。最終面談だけは平日実施で役員3人前後と学生5~6人でした。15分くらいでこれは重要な最終確認の場ですね。

 ――4回の面接で、それぞれ中心に見ているポイントはありますか?
 あります。最初の面談では、サービス業なのでコミュニケーション能力を一番に見ています。すぐ人と仲良くなれますという狭義のコミュニケーション能力じゃなく広義の能力です。要は、面談員の質問を素早く理解し、自分の考えを的確に簡潔にまとめて、分かりやすく説明できるかどうかというベーシックな面。あとは、イマジネーションというか洞察力。こう言うと面談員はどういう気持ちになるのか、だとするとどう伝えればいいんだろうなど、細やかな対応ができるかどうか。
 危険察知能力もありますね。「志望動機は?」と問われて、用意してきた動機を延々としゃべり続けたりしたら危険察知能力ゼロでしょう。面談員が飽きていることに気づかず、短い面談時間の中で5分間も志望動機をしゃべるなんてあり得ない。そういったことも含めてコミュニケーション能力なんです。
 仕事でもありますよね。お得意さんのところに行って、相手の顔色を見ながら、今日は新しい話を聞いていただけそうかな?とか、それともあんまりややこしい話を長時間はできないなとか、短めに切り上げるべきかなとかを考える。そういう、人と相対する能力は1次面談である程度見られるんじゃないでしょうか。

 ――2次、3次面接で重点的に見るポイントは?
 電通で何をやりたいのか、自分のことを相手にしっかり伝えられるか、ストレス耐性や諦めない力があるか、などを見ますね。

 ――1次面談に呼ぶのは何人くらいですか。SPIでバサッと足切りするんですか。
 コミュニケーションの会社なので、できるだけ会って話をしたい。人は5分でもいいから会わないと判断できないですよね。体温の伝わらないWEBテストで落とすことは極力したくない。毎年SPIをやめて全員と面談できないかと考えているんですが……。東京、大阪、名古屋の3カ所でやる1次面談は、今年から人数を増やしました。SPIの点数は、誰もが努力すればクリアできる範囲だと思っています。

 ――ESでも足切りするんですか。
 電通という会社にまじめに向き合って一生懸命考えて自分を表現できたなら大丈夫なんじゃないかと思いますよ。最近少なくなりましたが、全部「AAAAA」など同じ文字が並んでいるものは当然はじきますし、極端に文字数が少ないものも考えてしまいますね。あとは明らかにおかしいコピペとか。

 ――でも、「廃校になった小学校をどうする」とか、自分で考えるのは大変ですよね。
 WEBエントリーは個室での試験じゃないので……。テレビのクイズ番組じゃないけど、「ライフライン」をいかに多く持っているかも、その人の能力だろうと思いますよ。

 ――本人が書いたかどうか分からなくても、いいものは評価すると?
 そうしないと意味がない。いま自分のパソコンでSPIをやるとき、友だちを呼んで来るとか、代わりに受験するバイトもあるって言うじゃないですか。エントリー課題は難しい内容です。別に親や友だちと相談してもいい。より良いものを出そうと努力するなら、それもアリかもしれません。現実の仕事は一人だけでやることはありません。最高のモノを出すために意見をしてくれる人的ネットワークを持っていることも大切ですからね。

 ――WEBのESは誰が読むのですか。どんなESを評価しますか。
 基本的には人事が読みます。ただ、似た内容のものが多い。もしかして同じ情報を回してるんじゃないかと思うほど。だから普通に見てちょっと変わっていたり面白いものに惹かれます。他の学生のものとは毛色が違う、人と違って目立っているかどうか、ということかもしれませんね。これって結構大事なことで、面談で「最近好きなCMは?」と聞くと、平気で「ソフトバンクの白い犬」とか答える学生が結構多い。広告会社を受けるならもう少し変わったこと、他の人と違うこと言えないの?と思いますね。その答えに君自身の個性やヒトとは違うユニークな視点はないのかと。

 ――選考で印象に残っている学生は?
 リクルートスーツじゃない服装で来る子には注目しますね。2年ほど前、上下白のスーツで来た男子がいました。丈の短いバミューダパンツで来た男子は、2次面談員が高い評価をして、「次は一応スーツで来た方がいいよ」って言ったとか。
 本当はリクルートスーツは禁止にしたい。ただ、うちの選考だけじゃなく、他社選考にその足で向かう学生に負荷がかかるため、やりませんが。