人事のホンネ

株式会社テレビ朝日

2015シーズン【第2回 テレビ朝日】
「普通の感覚」と「テレビ好き」が大事 面白い仕事には覚悟も必要

テレビ朝日 人事部採用担当 高野安隆(こうの・やすたか)さん

2013年09月03日

■昨年の採用実績
 ――昨年度の採用実績を教えてください。
 2013年4月入社の新入社員は、一般、技術、アナウンサーの3部門合わせて27人です。人数、男女比共にこういった場ではお答えしていないのですが、入社式の映像がニュースになって流れていますから、もう良いでしょう。27人のうち、女性はアナウンサー2人を含めて10人です。

 ――採用人数は近年変化していますか。
 基本的には毎年同じくらいですが、今年は若干少ないと思います。テレビ朝日に来て欲しい、と思ってオファーを出したのがこの人数だったということで、年度によって意図的に増減をかけているわけではありません。

 ――いい学生がいなければ予定人数に満たなくても仕方ないと。
 いい学生の定義は難しいのですが、そうならないよう大勢の人にエントリーしてほしい。説明会に積極的に出向き、多くの学生にテレビの仕事に興味をもってもらえれば、その中にうちで活躍してもらえる人が絶対いると考えていますし、個人的には年度によって新入社員数が増減するのは反対です。将来のテレビ朝日を担う若い力を、安定的に得るための新卒採用だと考えています。

 ――総エントリー数はどれくらいでしょう?
 プレエントリーは相変わらず万単位です。いわゆる「記念受験」が減っており、本エントリーに進む人は若干減少傾向にあります。最近の学生は企業研究をよくしていてエントリー数を絞り込んでいますから。逆に言うと、本気の人たちは今までどおりエントリーしてくれています。

■求める人材
 ――どういう人を求めていますか。
 「テレビ朝日で活躍できる人」ですね。言い換えると「テレビ朝日らしい人」。自分たちが違和感なく一緒に働ける人。これを説明するのはなかなか難しいのですが、民放キー局にも、それぞれカラーがあると思います。テレビ朝日のカラーを自己分析するのは難しいのですが、番組からも伝わる「テレ朝ってこういう雰囲気だよね」というのが正解なのかなと思います。いろんな部署の社員が選考に参加するので、各自が一緒に仕事をしたい人を選んだ結果、将来うちで活躍できそうな「テレビ朝日らしい」新入社員がそろうのだろうと思います。付け加えると、テレビ朝日は若手のチャレンジを強く推奨しています。若手は失敗してもいいから、まずは挑戦してみようと。若いうちに色々なトライ&エラーを繰り返し、将来テレビ朝日の屋台骨を支える人材になってもらうための施策です。ですので、若いうちから色々と挑戦してみたい人は、テレビ朝日が向いていると思います。

 ――内定者や新入社員にはどのようなタイプが多いですか。
 一つの「こういう人間」というタイプはないですね。採用でも今年はこういうターゲット、例えばITに強い人を採ろうとか、今年は報道だ、という方針はありません。そういう意味では色々な人間がいます。テレビは番組ジャンルも視聴者層も様々ですから、同じような人ばかりで仕事をしても面白い番組にはなりません。新入社員もバラエティーに富んでいます。
 社員には、けっこうまじめな人間が多いですね。テレビ局というと、派手で元気で明るくてというイメージがあるかと思います。もちろんそういう人間もいますが、総じて根は真面目、普通の人が多い。テレビは大勢の人を対象にする仕事なので、「普通の感覚」がないと絶対にできない仕事です。普通の人が普通に頑張って、普通に面白いものや、ためになるものを作る会社だと考えると、誰にでもチャンスがあると思います。いわゆる「業界人」タイプの人ばかりの会社ではありません。

 ――でも、普通なだけでは入れませんよね。求めるのは、普通の感覚の中から どこか突出した個性を伸ばしていく人ですか、それとも「普通の中の普通」を極める人ですか?
 普通の感覚の中から、自分の長所を伸ばしていく人がいいですね。学生はバラエティー志望、報道志望など目標をもって受けると思いますが、可能性は色々あります。自分のやりたい事を明確に持つのは良い事ですが、バラエティーしかやらないとか報道以外は興味ないとかではなく、ベースを広く持ってほしい。学生が思っている以上に、広がりや可能性があるのがテレビの仕事です。自分の可能性の幅を狭めてほしくありません。

 ――視聴率が好調です。近年、採用面で変化はありますか。
 応募してくる学生像は、テレビ番組が好きで番組を制作したいという人が一番多い。ただ最近はコンテンツビジネスやITビジネスも幅広く展開しているので、それらを志望する学生も増えています。放送は国内向けですが、番組企画のフォーマット販売や、ネットでのコンテンツ展開など、マーケットが国外にも広がっているので、アジアで仕事したいといった新たな志向を持った学生も増えています。面接すると、我々が考えてもいないこと、大風呂敷を広げてくれる学生もいます。そういう意味では、以前はいなかったタイプの人も受けてくれていますね。展開するコンテンツが魅力的なら、視聴するプラットホームは地上波だけに限りません。ネットやBS、CSなど、色んな可能性が広がる。それもこれも、魅力的なコンテンツを生み出すことが鍵。「テレビ朝日は面白い」と思ってくれる学生が、「テレビ朝日で仕事をしたい」と考えてくれたら我々としても嬉しいです。

うまくなくていい、ESは自分の言葉でしっかり伝えて

■テレビ朝日の採用試験について
 ――選考に大学名や地域は関係ありますか。
 まったく関係ありませんが、結果として内定する人は関東の大学生が多いです。北海道から沖縄まで、色んな学生が受けに来てくれますが、応募数は関東の学生が多いので、結果として内定に至る人数が多いのだと思います。大学や地域によって違う印象はありませんが、東京など大都市の学生の方が情報を持っている傾向はあります。最近は情報過多で「ESはこう書けば受かる」とか、「写真はどこの写真館で」といった都市伝説的な話も聞きますが、正直言って正解なんてありません。
 技術部門は院卒が多いですね。理系の応募者が圧倒的に多いのが理由だと思いますが、院卒、学部の有利不利はありません。あくまで人物本位です。私は文系出身で技術部門に入社しましたし、素養があれば理系・文系は問いません。

 ――地方の学生をあえて採りたいという考えはありますか?
 至上命題があるわけではありませんが、テレビ番組は全国に放送している訳ですから、全国各地から受けてほしいと思っています。会社説明会は本社がある東京で開きますが、ここ数年はWEBストリーミングで説明会を生中継し、Twitterでリアルタイムに質問を受け付け、遠隔地からも説明会に参加できるような体制をとっています。プロの番組スタッフが携わっているので、番組さながらの出来栄えです。こういった活動が実を結んだのか、おかげさまで最近は海外に留学している学生のエントリーも増えています。

 ――インターシップは実施していますか。
 以前は実施していましたが、2011年に震災の影響で中止して以来実施していません。番組をベースにしたインターンシップは少人数の学生しか対象にできません。もっと大勢の人にテレビ朝日を知ってほしいので、若手社員が自分の仕事について話をし、テレビの仕事をわかってもらえるセミナーやワークショップを開いています。今年もアナウンスセミナーをはじめ、各種セミナーを開催します。

 ――OB・OG訪問は受けていますか。
 人事部で紹介はしていませんが、大学やサークルなどのつながりで社員と会うのは自由です。遠方の大学で来訪しにくい、OBが見つからない、という人はテレビ朝日の採用Facebookを利用してメッセージを送ってください。質問にお答えします。人事部でOB・OG紹介をしていないのは、住んでいる地域などの個別事情で有利不利が出てしまうからです。

 ――採用選考の時期は、多くの企業より早いですよね。
 経団連の倫理憲章が話題になりましたが、テレビ朝日は大学の春休みの時期にメーンの採用選考を終える形をとっています。もともと倫理憲章は学事日程を考慮するところから始まっているので、春休み期間に選考を実施することは倫理憲章の精神を尊重していると言えます。そういった考えのもと、大学3年生の2月、3月に実施しています。今年の採用選考も同様のスケジュールで行いました。

 ――アナウンサーは容姿を重視するんですよね。
 ただ外見が重要というものではなく、局の顔になってもらうために「テレビ朝日らしさ」がたたずまいに現れ、うちの番組にマッチする人を求めています。テレビ朝日のアナウンサーは皆、テレビ朝日らしさを体現していると思います。そういう意味では「テレビ朝日で活躍できる人」という定義はアナウンサーも同様です。

 ――アナウンススクールに通っていると有利ですか。
 スクールに通えばアナウンサーの仕事を理解できますから、その点ではメリットがあると思います。アナウンスメントのスキルが学生の時点でプロレベルである必要はありません。内定者にはスクールに通っていた人も通っていなかった人もいます。地方局は東京のテレビ局と比べると即戦力を求める傾向が強いと思うので、スクールに通った人の方が有利かも知れません。

 ――アナウンサーは若いうちしかできない印象がありますが。
 男性はスポーツ実況などでベテランアナウンサーの仕事も確立していますが、女性は若いアナウンサーが多い印象があると思います。ただ、テレビ朝日のアナウンサーはほぼ男女同数。結婚、出産後もワーキングマザーとしてアナウンサーを続ける人がたくさんいます。働きやすい職場環境なので長く働きたい人に来てほしいですね。

■選考方法
 ――採用選考の中身について教えてください。
 WEBエントリーの後、書類選考を実施します。この段階から「テレビへの熱意」はしっかり見ています。就活におけるミスマッチが話題になっていますが、例えばどんなに優秀で勉強ができて、理路整然と何でもこなす事ができる人でも、テレビが好きでないと番組制作の現場は務まりません。だからエントリーの段階から、熱意を見たいんです。その後は複数回の面接、筆記試験が主な内容です。書類選考でばっさり落とすイメージがあるかもしれませんが、出来るだけ多くの学生と直接会って話がしたいので、時間とキャパが許す限り、1次面接には大勢通しています。
 筆記試験では、幅広い分野の問題を出します。テレビ番組の内容から政治、経済、スポーツ、時事問題まで。テレビの仕事をするうえで知っておくべきことが全て出る、という内容です。正直、対策はしづらいでしょう。普段から広く世の中にアンテナを張っていることが大切です。
 技術部門は技術の専門問題も課しています。理系の問題を中心に、テレビ技術に関する電波や電気電子、ITなど。美術系の採用であれば美術的素養を問う試験も加わります。ただ、全てできなければダメというものではなく、自分の専門分野、得意分野をしっかりやってきたかも判断しています。大学での専門知識はあくまでも学生それぞれの特徴の一つ。入社後活躍するためには理系の知識が必要な局面は多々ありますが、この勉強をしていないとダメ、という分野はありません。一見テレビに関係なさそうな化学専攻で入社後活躍している技術社員もいます。

 ――ESは誰が読むのですか。
 初期段階は人事の採用担当者が読みます。WEBエントリーで作成してもらうESは電子データで見ますが、選考過程では別途、手書きのESを書いて提出してもらっています。

 ――ESの評価のポイントは?
 評価できるESは文章のうまい下手ではなく、自分のやりたいことや自分はこういう人ですということを、自分の言葉でしっかり表しているもの。テレビは映像の仕事ですが、制作過程では自分の考えを、相手に言葉でしっかり伝えて意識共有しなければならない。どんなに良いアイデアがあっても、人に伝えられなければ意味がありません。アナウンサーは技術が必要ですが、それ以外の人は伝わればいい。ESも同じです。自分が言いたいこと、やりたいことをES上で伝えられるかどうか。いろいろ書いてあるけど、結局何が言いたいか分からないとなると判断のしようがないですから。

 ――ひと目でダメなESってありますか?
 データは全てチェックしていますが、空欄の項目が目立つようなら、あとは見ませんね。やっつけで書いたものは、すぐわかります。かつてESの記入欄にコピーした使い回しの文章を貼ってきた人がいましたが、印象はよくないですね。採用に関わらず、普通に人と人が向き合う際に非常識と思われることはやめた方がいい。あとは細かい文字を連ねてくる人。一概に悪いとは言えませんが、あまりに小さい字で書かれると、見る人の気持ちに立っているのかな、という点が気になります。

 ――適性検査は重視していますか。
 実施していますが、参考情報ですね。この学生はこういう特徴、傾向があるというデータ。この能力が一定のレベルに達していないと次に進めない、というようなことはしていません。対策本も数多く出回っていますし。ですので適性検査を実施しなければ採用選考が成り立たない、というものではありません。