人事のホンネ

株式会社テレビ朝日

2015シーズン【第2回 テレビ朝日】
「普通の感覚」と「テレビ好き」が大事 面白い仕事には覚悟も必要

テレビ朝日 人事部採用担当 高野安隆(こうの・やすたか)さん

2013年09月03日

■昨年の採用実績
 ――昨年度の採用実績を教えてください。
 2013年4月入社の新入社員は、一般、技術、アナウンサーの3部門合わせて27人です。人数、男女比共にこういった場ではお答えしていないのですが、入社式の映像がニュースになって流れていますから、もう良いでしょう。27人のうち、女性はアナウンサー2人を含めて10人です。

 ――採用人数は近年変化していますか。
 基本的には毎年同じくらいですが、今年は若干少ないと思います。テレビ朝日に来て欲しい、と思ってオファーを出したのがこの人数だったということで、年度によって意図的に増減をかけているわけではありません。

 ――いい学生がいなければ予定人数に満たなくても仕方ないと。
 いい学生の定義は難しいのですが、そうならないよう大勢の人にエントリーしてほしい。説明会に積極的に出向き、多くの学生にテレビの仕事に興味をもってもらえれば、その中にうちで活躍してもらえる人が絶対いると考えていますし、個人的には年度によって新入社員数が増減するのは反対です。将来のテレビ朝日を担う若い力を、安定的に得るための新卒採用だと考えています。

 ――総エントリー数はどれくらいでしょう?
 プレエントリーは相変わらず万単位です。いわゆる「記念受験」が減っており、本エントリーに進む人は若干減少傾向にあります。最近の学生は企業研究をよくしていてエントリー数を絞り込んでいますから。逆に言うと、本気の人たちは今までどおりエントリーしてくれています。

■求める人材
 ――どういう人を求めていますか。
 「テレビ朝日で活躍できる人」ですね。言い換えると「テレビ朝日らしい人」。自分たちが違和感なく一緒に働ける人。これを説明するのはなかなか難しいのですが、民放キー局にも、それぞれカラーがあると思います。テレビ朝日のカラーを自己分析するのは難しいのですが、番組からも伝わる「テレ朝ってこういう雰囲気だよね」というのが正解なのかなと思います。いろんな部署の社員が選考に参加するので、各自が一緒に仕事をしたい人を選んだ結果、将来うちで活躍できそうな「テレビ朝日らしい」新入社員がそろうのだろうと思います。付け加えると、テレビ朝日は若手のチャレンジを強く推奨しています。若手は失敗してもいいから、まずは挑戦してみようと。若いうちに色々なトライ&エラーを繰り返し、将来テレビ朝日の屋台骨を支える人材になってもらうための施策です。ですので、若いうちから色々と挑戦してみたい人は、テレビ朝日が向いていると思います。

 ――内定者や新入社員にはどのようなタイプが多いですか。
 一つの「こういう人間」というタイプはないですね。採用でも今年はこういうターゲット、例えばITに強い人を採ろうとか、今年は報道だ、という方針はありません。そういう意味では色々な人間がいます。テレビは番組ジャンルも視聴者層も様々ですから、同じような人ばかりで仕事をしても面白い番組にはなりません。新入社員もバラエティーに富んでいます。
 社員には、けっこうまじめな人間が多いですね。テレビ局というと、派手で元気で明るくてというイメージがあるかと思います。もちろんそういう人間もいますが、総じて根は真面目、普通の人が多い。テレビは大勢の人を対象にする仕事なので、「普通の感覚」がないと絶対にできない仕事です。普通の人が普通に頑張って、普通に面白いものや、ためになるものを作る会社だと考えると、誰にでもチャンスがあると思います。いわゆる「業界人」タイプの人ばかりの会社ではありません。

 ――でも、普通なだけでは入れませんよね。求めるのは、普通の感覚の中から どこか突出した個性を伸ばしていく人ですか、それとも「普通の中の普通」を極める人ですか?
 普通の感覚の中から、自分の長所を伸ばしていく人がいいですね。学生はバラエティー志望、報道志望など目標をもって受けると思いますが、可能性は色々あります。自分のやりたい事を明確に持つのは良い事ですが、バラエティーしかやらないとか報道以外は興味ないとかではなく、ベースを広く持ってほしい。学生が思っている以上に、広がりや可能性があるのがテレビの仕事です。自分の可能性の幅を狭めてほしくありません。

 ――視聴率が好調です。近年、採用面で変化はありますか。
 応募してくる学生像は、テレビ番組が好きで番組を制作したいという人が一番多い。ただ最近はコンテンツビジネスやITビジネスも幅広く展開しているので、それらを志望する学生も増えています。放送は国内向けですが、番組企画のフォーマット販売や、ネットでのコンテンツ展開など、マーケットが国外にも広がっているので、アジアで仕事したいといった新たな志向を持った学生も増えています。面接すると、我々が考えてもいないこと、大風呂敷を広げてくれる学生もいます。そういう意味では、以前はいなかったタイプの人も受けてくれていますね。展開するコンテンツが魅力的なら、視聴するプラットホームは地上波だけに限りません。ネットやBS、CSなど、色んな可能性が広がる。それもこれも、魅力的なコンテンツを生み出すことが鍵。「テレビ朝日は面白い」と思ってくれる学生が、「テレビ朝日で仕事をしたい」と考えてくれたら我々としても嬉しいです。

うまくなくていい、ESは自分の言葉でしっかり伝えて

■テレビ朝日の採用試験について
 ――選考に大学名や地域は関係ありますか。
 まったく関係ありませんが、結果として内定する人は関東の大学生が多いです。北海道から沖縄まで、色んな学生が受けに来てくれますが、応募数は関東の学生が多いので、結果として内定に至る人数が多いのだと思います。大学や地域によって違う印象はありませんが、東京など大都市の学生の方が情報を持っている傾向はあります。最近は情報過多で「ESはこう書けば受かる」とか、「写真はどこの写真館で」といった都市伝説的な話も聞きますが、正直言って正解なんてありません。
 技術部門は院卒が多いですね。理系の応募者が圧倒的に多いのが理由だと思いますが、院卒、学部の有利不利はありません。あくまで人物本位です。私は文系出身で技術部門に入社しましたし、素養があれば理系・文系は問いません。

 ――地方の学生をあえて採りたいという考えはありますか?
 至上命題があるわけではありませんが、テレビ番組は全国に放送している訳ですから、全国各地から受けてほしいと思っています。会社説明会は本社がある東京で開きますが、ここ数年はWEBストリーミングで説明会を生中継し、Twitterでリアルタイムに質問を受け付け、遠隔地からも説明会に参加できるような体制をとっています。プロの番組スタッフが携わっているので、番組さながらの出来栄えです。こういった活動が実を結んだのか、おかげさまで最近は海外に留学している学生のエントリーも増えています。

 ――インターシップは実施していますか。
 以前は実施していましたが、2011年に震災の影響で中止して以来実施していません。番組をベースにしたインターンシップは少人数の学生しか対象にできません。もっと大勢の人にテレビ朝日を知ってほしいので、若手社員が自分の仕事について話をし、テレビの仕事をわかってもらえるセミナーやワークショップを開いています。今年もアナウンスセミナーをはじめ、各種セミナーを開催します。

 ――OB・OG訪問は受けていますか。
 人事部で紹介はしていませんが、大学やサークルなどのつながりで社員と会うのは自由です。遠方の大学で来訪しにくい、OBが見つからない、という人はテレビ朝日の採用Facebookを利用してメッセージを送ってください。質問にお答えします。人事部でOB・OG紹介をしていないのは、住んでいる地域などの個別事情で有利不利が出てしまうからです。

 ――採用選考の時期は、多くの企業より早いですよね。
 経団連の倫理憲章が話題になりましたが、テレビ朝日は大学の春休みの時期にメーンの採用選考を終える形をとっています。もともと倫理憲章は学事日程を考慮するところから始まっているので、春休み期間に選考を実施することは倫理憲章の精神を尊重していると言えます。そういった考えのもと、大学3年生の2月、3月に実施しています。今年の採用選考も同様のスケジュールで行いました。

 ――アナウンサーは容姿を重視するんですよね。
 ただ外見が重要というものではなく、局の顔になってもらうために「テレビ朝日らしさ」がたたずまいに現れ、うちの番組にマッチする人を求めています。テレビ朝日のアナウンサーは皆、テレビ朝日らしさを体現していると思います。そういう意味では「テレビ朝日で活躍できる人」という定義はアナウンサーも同様です。

 ――アナウンススクールに通っていると有利ですか。
 スクールに通えばアナウンサーの仕事を理解できますから、その点ではメリットがあると思います。アナウンスメントのスキルが学生の時点でプロレベルである必要はありません。内定者にはスクールに通っていた人も通っていなかった人もいます。地方局は東京のテレビ局と比べると即戦力を求める傾向が強いと思うので、スクールに通った人の方が有利かも知れません。

 ――アナウンサーは若いうちしかできない印象がありますが。
 男性はスポーツ実況などでベテランアナウンサーの仕事も確立していますが、女性は若いアナウンサーが多い印象があると思います。ただ、テレビ朝日のアナウンサーはほぼ男女同数。結婚、出産後もワーキングマザーとしてアナウンサーを続ける人がたくさんいます。働きやすい職場環境なので長く働きたい人に来てほしいですね。

■選考方法
 ――採用選考の中身について教えてください。
 WEBエントリーの後、書類選考を実施します。この段階から「テレビへの熱意」はしっかり見ています。就活におけるミスマッチが話題になっていますが、例えばどんなに優秀で勉強ができて、理路整然と何でもこなす事ができる人でも、テレビが好きでないと番組制作の現場は務まりません。だからエントリーの段階から、熱意を見たいんです。その後は複数回の面接、筆記試験が主な内容です。書類選考でばっさり落とすイメージがあるかもしれませんが、出来るだけ多くの学生と直接会って話がしたいので、時間とキャパが許す限り、1次面接には大勢通しています。
 筆記試験では、幅広い分野の問題を出します。テレビ番組の内容から政治、経済、スポーツ、時事問題まで。テレビの仕事をするうえで知っておくべきことが全て出る、という内容です。正直、対策はしづらいでしょう。普段から広く世の中にアンテナを張っていることが大切です。
 技術部門は技術の専門問題も課しています。理系の問題を中心に、テレビ技術に関する電波や電気電子、ITなど。美術系の採用であれば美術的素養を問う試験も加わります。ただ、全てできなければダメというものではなく、自分の専門分野、得意分野をしっかりやってきたかも判断しています。大学での専門知識はあくまでも学生それぞれの特徴の一つ。入社後活躍するためには理系の知識が必要な局面は多々ありますが、この勉強をしていないとダメ、という分野はありません。一見テレビに関係なさそうな化学専攻で入社後活躍している技術社員もいます。

 ――ESは誰が読むのですか。
 初期段階は人事の採用担当者が読みます。WEBエントリーで作成してもらうESは電子データで見ますが、選考過程では別途、手書きのESを書いて提出してもらっています。

 ――ESの評価のポイントは?
 評価できるESは文章のうまい下手ではなく、自分のやりたいことや自分はこういう人ですということを、自分の言葉でしっかり表しているもの。テレビは映像の仕事ですが、制作過程では自分の考えを、相手に言葉でしっかり伝えて意識共有しなければならない。どんなに良いアイデアがあっても、人に伝えられなければ意味がありません。アナウンサーは技術が必要ですが、それ以外の人は伝わればいい。ESも同じです。自分が言いたいこと、やりたいことをES上で伝えられるかどうか。いろいろ書いてあるけど、結局何が言いたいか分からないとなると判断のしようがないですから。

 ――ひと目でダメなESってありますか?
 データは全てチェックしていますが、空欄の項目が目立つようなら、あとは見ませんね。やっつけで書いたものは、すぐわかります。かつてESの記入欄にコピーした使い回しの文章を貼ってきた人がいましたが、印象はよくないですね。採用に関わらず、普通に人と人が向き合う際に非常識と思われることはやめた方がいい。あとは細かい文字を連ねてくる人。一概に悪いとは言えませんが、あまりに小さい字で書かれると、見る人の気持ちに立っているのかな、という点が気になります。

 ――適性検査は重視していますか。
 実施していますが、参考情報ですね。この学生はこういう特徴、傾向があるというデータ。この能力が一定のレベルに達していないと次に進めない、というようなことはしていません。対策本も数多く出回っていますし。ですので適性検査を実施しなければ採用選考が成り立たない、というものではありません。

面接で見るのは「一緒に仕事ができる人」かどうか

■面接のポイント
 ――面接の回数が多いそうですね。
 面接以外にも、年によっては何らかのワークを課すこともありますが、いずれにしても直接会うことを重視しています。面接の基本は、会って話をして、どんな人かを判断することです。同時に学生にとっても、どんな会社かを判断する機会です。我々は学生がどういう人か知りたいし、きっと学生も我々のことを知りたいと思っている。お互いを知る、話し合ってお互い見合うのが面接です。スペックだけで採用するなら面接なんてやる必要がない。内定者も「選考でいろんな社員と話せてよかった」と言います。
 見ているのは、一緒に仕事ができる人物かどうかという点。しっかりコミュニケーションが取れる人か、自分で考えて行動できる人かどうか。テレビの仕事は、やることが決まっていて、一から十まで指示を受けて進める仕事ではありませんから、この2点は特に重要です。面接では上手にしゃべる必要はなく、ゆっくりでもたどたどしくても自分の意見を正直にしっかり述べることが大事です。

 ――どんな形式の面接がありますか。
 一対一の面接はなく、必ず我々社員側は複数で対応します。個人面接、集団面接、グループワークなどいろいろです。選考のステップに応じて、いろいろな年齢、部門、階層の社員が登場します。若手の社員が「彼はいい」と言うのは自分のそれまでの経験をもとに言っているわけで、経営レベルの人が言うのとは違います。総合的に判断して、テレビ朝日で長く活躍してくれるか。その判断をするために様々なステップを重ねています。

 ――面接をする社員に対して、こういう面接をすべしというマニュアルのようなものはありますか。
 基本的には社員に任せています。自分の聞きたいことを聞いてもらっている。現場社員ならテレビ的センスを問うことがあるかも知れないし、報道記者なら政治経済の話に及ぶかも知れない。そうやって色々な社員の目で判断して貰うことが大切だと考えています。
 もし私が面接員をやるとしたら、ESに書かれていることはあまり話題にしないですね。先ほどお話しした通り、面接の意義は直接会って話をすること。目の前に本人がいるのに、既に書類に書かれていることを聞くだけではもったいないし、予定調和の面接になりかねません。相手を知るのに話題はなんだって良いし、ESには得意なことしか書かれていないでしょうしね。

 ――面接を受ける学生にアドバイスを。
 今は核家族化が進んで、年が離れた人と話す機会が減っています。だから経営陣など年長者との面接で緊張のあまり話せない人もいる。普段からいろんな世代の人と話をする機会をもっておいた方がいい。友達言葉では役員面接をクリアできないでしょう。でも、言葉使いを都度気にしているようでは、言いたいことがうまく言えなくなる。面接は限られた時間です。その中で自分を出せないのはもったいないので、準備はしておいた方がいいですね。小手先の面接テクニックを磨くのではなく、自分をしっかり表現するための準備です。
 あと、時間いっぱいしゃべり続けて「自分の言いたいことは全部言えた」と気持ちよく帰る学生がいますが、面接はキャッチボールです。こちらが聞きたいことを聞けなかったら意味がない。この人はそういう機微がないんじゃないかと思うと、一緒に仕事をするのは難しいですよね。例えば「手短にお願いします」と言われ、自己紹介したあと「けっこうしゃべるんだね」と言われたら、「長かったんだな」と理解して次の話題に反映させるとか。「一つ目は……、二つ目は……」と、記憶の中枢から読み出すような人も考えものです。気持ちはわかりますが、目の前に相手がいるのにお決まりのトークしかできない営業マンが来たら、「やっぱりちょっとね」ってなるじゃないですか。

 ――「こういう学生は落とす」というポイントはありますか。
 話し方や立ち居振る舞いなど、何かしら気持ちよくない印象を受ける人も残念ながらいます。テレビ局の仕事は、社内外のいろんな人に会って、不特定多数の多くの人に向かって情報を発信する仕事なので、基本的に人のことが好きで、相手の立場になって考えられる人じゃないと向かない。1人でやる仕事ではないので、人に嫌な印象を与える人は向いていないですし、面接でもマイナスポイントです。厄介なのは、自分のこういった短所に気づいていない人も結構いること。気づかなければ直しようがない。「自分にはそんな癖はない」と思っていても、面接で対峙するのは社会経験豊富な社員です。ビジネスマナーとして不適当な振る舞いは厳しくチェックします。
 また、面接は長い時間ではありませんが、最初ぎこちなくても、最後には話せるようになる学生がいる一方で、最初から最後までかみ合わない人は、1時間たっても1カ月たってもかみ合わないだろうなと思います。

 ――アナウンサー以外でも記者などは画面に登場しますよね。選考で容姿や服装は関係ありますか。
 人に不快感を与えるのはよくないですが、それ以上のことはありません。選考では服装については何も言っていませんが、ほとんどが黒のスーツですね。カジュアルな私服で来たら面接で質問するでしょう。何か納得できる理由があれば問題ありません。スーツは黒である必要はないし、服装を含めてもっとおしゃれやアピールをしてもいいと思います。

 ――学生のポテンシャルを判断するのは難しいと思います。どう見極めていますか。
 そこを見極めないと新卒を採用している意味がない。全部中途採用すればいいわけですから。やはり何度も会って、気持ちや素養、可能性を確かめるしかないと思います。テレビ局の現場は忙しいので、ある程度タフネスがないと持ちませんし、テレビが好きでないと務まらないタイトな仕事もあります。そんな時、「名が通っていて面白そうだから来ました」など、ふわっとした志望理由で入った人は、入社後うまくいかないかもしれない。だから、「テレビが好き」というところをきちっと確認します。これは現場志望に限らず、ビジネスセクションでも技術系でも一緒です。どの仕事に就いてもテレビが好きであって欲しい。熱意も大切な判断基準です。

ドラマのことだけを考える日々…厳しいけれど幸せな仕事

■テレビ朝日の人材育成は
 ――入社後の教育制度を教えてください。
 一般職、技術職、アナウンサー職とも、全員一緒に新入社員研修を受けます。テレビ朝日の各部署がどういう仕事をしているか、テレビ朝日がどんな会社かを座学でみっちり教えます。その後、現場研修として番組AD(アシスタント・ディレクター)を経験させ、さらにビジネス研修で営業や事業、総務などを回ります。これらの現場研修とビジネス研修のあと、各部署に正式配属となります。研修期間は1~2カ月ほどでしょうか。その後、アナウンサーはアナウンス部研修、技術系は技術局内の研修が続きます。一般部門は配属してからOJTで各部署の仕事を学んでいきます。
 中長期的には、階層型研修とよばれる研修を実施しているほか、語学研修制度による留学や、自分で研修内容を企画立案する自由企画研修、アトランタのCNNへの研修も実施しています。

 ――配属先の希望は聞いてもらえるのですか?
 入社するときの職種は全員「放送総合職」です。入社の際の部門は3つありますが、将来的にはどの部署にも配属される可能性があります。本人希望は聞きますが、最初から希望の部署かどうかはケースバイケースです。入社後は、毎年社員に今どんな仕事をしていて、将来は何をしたいかをヒアリングしています。中長期的なスキルアップも考慮しながら、本人がやりたいことと適性を上手くバランスさせて活躍してもらおうという考えです。
 地方勤務は基本的にはありません。営業部門には関西支社と名古屋支局勤務がありますが、少数です。さらに海外支局に勤務している特派員がいます。そのほか、スポーツイベントなどで長期出張することがあります。オリンピック、サッカーのW杯、フィギュアスケートのグランプリファイナルなど。フィギュアスケートの場合、選手同様にヨーロッパと北米を転戦します。サッカーW杯予選なら、アウェーのアジア各地から中継を行います。少数精鋭ですが、ある程度仕事ができるようになって番組を任されるようになれば行けます。20代後半から30代が中心です。

 ―――テレビの仕事は勤務時間が厳しいと聞きます。やりがいと厳しさについて教えてください。
 繁忙期は休みが取りにくくなります。番組改編期のほか、3・11のようなことがあれば、部署によってはしばらく家に帰れなくなることもあるでしょう。オリンピックのような世界的スポーツイベントのときも、時差があるので大変です。ただ、繁忙期が終われば、ある程度まとまった休みが取れるようにしていますし、残業時間はしっかり人事が管理しています。
 最初のうちは、仕事に振り回されて休みが取れないこともあるかもしれません。そのうち仕事の濃淡がわかるようになれば、「今日は午前中ゆっくり来よう」とか自分で調整できるようになります。仕事を振り回せるようになれば、楽しくなるし休めるようになる。例えばドラマ制作の現場担当者になれば、撮影が始まると睡眠時間を削って毎日撮影に臨む日々です。私も撮影中、週に1回しか家に帰れないことがありました。ただドラマ撮影はワンクール、3カ月で一段落します。この期間中、大変だけどドラマのことだけを考えて日々仕事をする。好きなことを仕事にして、昼夜邁進する。こんな楽しい仕事はない。幸せなことだと思います。ですから「僕は必ず毎週休みがほしい」とか「土日休みじゃなきゃ」という人は向いていないと思います。
厳しいけれどやりがいもある仕事なので、入社3年以内に離職する人はほぼゼロです。

■高野さんの仕事について
 ――高野さん自身は、どういう業種を希望していたのですか。
 私は大学で舞台美術の勉強をしていたので、そっちの業界に進もうと思っていました。ただ舞台よりテレビに興味があり、まずはテレビ局の技術部門を受けたんです。受からなければコンサート関連の会社を受けようと思っていました。
 入社後は技術局の制作技術センターという、番組技術を担当する部署で照明を担当してきました。ドラマや歌番組、ニュース。番組と名のつくものは何でも担当しました。オリンピックも、シドニーとソルトレークの夏季、冬季大会で現地スタジオの設営を担当して1~2カ月現地に行っていました。現在のテレビ朝日社屋を建てるときにはスタジオの設計も担当しました。
 技術職で現場配属だった訳ですが、大学の勉強でリードできたのは入社後の3カ月くらい。大学の勉強は1日の中の限られた時間ですが、仕事は1日中、プロ中のプロが本気で勝負しているわけですし、放送は365日毎日あります。内容、濃さがまったく別世界。入社してからどれだけ頑張れるかが勝負です。

 ――もっとも印象に残っている仕事は。
 年末のミュージックステーションスーパーライブで、照明デザイナーを担当した時ですね。一番大変で一番面白い仕事でした。4時間の生放送で40曲以上、大規模なコンサートと同じことをテレビの生中継でやる。純粋なコンサートとテレビ中継では求められる要素が異なります。観客と視聴者の両方に満足してもらう。求められているハードルが非常に高く、予算も作業量も多い。レベルの高いところで仕事をするのは大変ですが、難しい現場だからこそ、チャレンジする楽しさもあります。準備に2カ月位かけて、何千台もの機材一台一台の設計図を書き、この曲ではどういうタイミングでどういう色で光らすか、動かすかを決める。デザイン的要素とエンジニア的要素が共存しているので、両方やりたい人には魅力的な仕事です。この仕事で照明業界の賞を受賞したことがあります。
 達成感もありました。照明スタッフの中で社員は私1人。100人のスタッフを1人で動かす。最初のうちは、自分が必死に働いていいものを作るのが最高に気持ち良かったんですが、何回かやると、周りの人と一緒になって懸命に働いていいもの作るのが気持ちよくなってきた。いろんな楽しみ方があるんだなと勉強になりました。

みなさんに一言!

 「テレビの仕事は面白そう」という印象があると思います。それを目指してテレビ朝日を受けてくれるのは嬉しい限りですが、面白いことを仕事にするにはそれなりの覚悟も必要です。タイトで厳しい仕事です。心構えを持って臨んでほしいと思います。面接で「○○の番組が好きです」と言う学生がいます。面接官にその番組のディレクターがいたら「先週の放送どうだった?」と聞きますよね。でもうまく答えられない人が多い。自ら墓穴を掘っているわけです。言うからには責任を持ちましょう。テレビ朝日は、モノづくりをする会社で、番組は言わば商品です。テレビは手軽に見られるメディアなので軽い気持ちで見ることも多いでしょう。ただし、仕事にするとなると違う。軽い気持ちで番組は作れません。テレビのつくり手を目指すなら、商品である番組について自分なりの考えは持っておいた方がいいですね。

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【マスコミ・出版・印刷】

 テレビ朝日はバラエティ、ドラマ、報道、スポーツ等の番組を制作し、全国に発信する放送局です。 開局55周年という節目を迎える中、昨年度はゴールデン、プライム帯視聴率で1位を獲得しました。 番組のクロスメディア展開など放送外事業も拡大し、目指すところは「日本トップグループのコンテンツ総合企業」です。  採用では「『おもしろい!』を仕事にする』をテーマに掲げています。人を楽しませるのが好きな方、 モノづくりの過程を楽しむことができる方を歓迎します。 熱い思いを持った方々との出会いを楽しみにしています。