企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2018シーズンの第10回は、エレクトロニクスを中心に様々な分野で常に最先端を走る「世界のソニー」です。ソニーならではの個性的な製品を支えるのは、社員の「個」と「異見」を大事にする風土。現在のESの元祖はソニーだと言われています。今はどんな方針で採用を行っているのでしょうか。(編集長・木之本敬介)
■採用実績と職種
――採用人数を教えてください。
2017年春入社は約300人です。2018年入社の採用も300人を予定しています。男女でみると、技術系は男性が多数ですが、事務系は女性も多く採用しています。技術系での女性の活躍もとても増えてきたので、こちらも積極的に採用しています。
――「コース別採用」をしていますね。
応募者一人ひとりの関心の高い事業領域、研究領域で、社会人としてのスタートを切って活躍してもらいたいという思いから、コース別採用を展開しています。4月の入社後すぐにいいスタートが切れるように、2012年からこの枠組みでの採用を始めました。導入以前は「技術系」と「事務系」の2コースでした。
現在、技術系は具体的には、ソフトウェア、ハードウェアなどの分野に分かれ、さらにいくつかの事業領域を選択できるようにしています。理系は「自分の専門性を、この領域で生かしたい」という人が多いので、具体的な選択肢の中から検討できるようにしています。
――希望して採用されれば、必ずそこに配属される?
それが基本です。他社では、まず会社全体で内定を出して秋以降に配属面接があり、そこであらためて内定者に希望を聞いて4月に発表するパターンが多いと思いますが、弊社の技術系の場合、「内定=配属」という考え方です。内定の段階でどの領域で仕事をするかお互い確認できるように、あらかじめしっかり情報提供しています。
――事務系も同じですか。
事務系の職種を紹介すると、「セールス&マーケティング」はいわゆる営業とマーケティング、「プロダクト&サービスプランニング」は商品企画の業務になります。「ビジネスマネジメント」は、いわゆる経理、財務、管理などに当たります。事務系の職種の分類は技術系より大枠にして、実際の配属組織は内定後に本人の希望を聞きながら決めます。
――コース別採用の評判は?
やりたいことが明確な人には、非常にポジティブに受け入れてもらっています。「何の仕事をしようかな」とまだ決めかねている人にも、面接の段階で第1志望から第3志望まで幅広く聞いています。双方納得したうえで面談を進めるので、結果的に第1志望でないところに自分のやりたいことを発見する応募者も少なからずいます。結果的に、自分の意向に沿った就職活動ができるのではないかと考えています。
――「どこでもいいからソニーで働きたい!」という学生もいますよね?
2018年卒採用から、事務系に「WILLコース」を新設しました。最初からコースに分けず、「ソニーでいろいろ挑戦していきたい」という人向けのコースです。先ほどの話とは逆に、就活の時点で仕事の内容まで決められない、という人もまた多いのではないかと捉えています。事業を指定せず、自分の思いを直接ぶつけてもらい、面談を通じて一番良いキャリアスタートを会社から提案するものです。
せっかくいろいろな可能性があるのに、会社の仕組みを十分理解していない段階で、「自分はとりあえずこの職種かな」と決めてしまう人が見られ、何とか良くすることはできないか、と過去の面接を通じて実感しました。WILLコースにもぜひ積極的に応募を検討してもらえればと思います。
――事務系の何割をWILLコース募集にするのですか。
現時点では決まっていません。ガチガチに全ての詳細点を決めずにこういった新たなやり方を決めて進める、というのも、ソニーの仕事の進め方の一つかもしれません。
――入社後に、事業領域が変わることはあるのですか。
配属部署でしばらくキャリアを積む人が多いですが、意欲があれば自ら手を挙げ、最初の配属とは違う部署に移る制度も運用しています。自分で壁を取り除き、専門領域を広げていくこともできます。最初に配属されたからということだけで決めてしまわず、つねにアンテナを高くして、自分なりのさまざまなキャリアを築いていくことが可能です。
――技術系の推薦制度はありますか。
あります。技術系に限定されますが、大学、学部ごとにお願いしているのが現状です。
――募集要項に「既卒3年まで新卒対象」とあります。日本の会社では珍しいと思いますが。
既卒の方でも、ポテンシャルを活かして職場で十分活躍してもらえると考え、枠を広げて募集しています。ソニーには、もともと年功序列の風土がないので、入口で年齢に幅があっても全く構いません。
ソニー株式会社
入社2年目でも事業リーダーに 若手OB・OG社員を大学・合説に派遣
■新規事業
――ソニーには、「やる気があれば入社2年目でも事業責任者になれる」という制度があるそうですね。
制度があるのではなく、チャンスがある、と捉えていただきたいです。
ご指摘の例は、新規事業開発のプログラムでスタートした事業責任者のことですね。この新規事業は応募制をとっています。応募者がいくつかの段階を経て5名ほどのチームになり、本格的にビジネス化の段階になると、もともとの配属部署から異動して、責任を持って事業に取り組むことができるようにします。その事業リーダーが入社2年目だったということです。年齢などに制約されるということはありません。
――何チームが動いているのですか。
いま実際に商品をつくる段階、販売、サービスを提供する段階になっているのは7~8プロジェクトです。新規事業の提案をオーディションで絞り込み、事業化までインキュベート(新規事業の育成・支援)していく仕組みです。オーディションの募集は1年に3回ほどで、かなりの数の応募がありますよ。
多くの企業にとって、新規事業として何をやるかについては、社内でも「秘中の秘」というのがほとんどでしたが、ソニーでは少し違います。今ご紹介したプログラムでは、オーディション段階から社外の人にも見てもらっています。事業に投資する資金も、社内で調達するのではなく、外にオープンにするクラウドファンディングで募ります。1億円以上を集めたプロジェクトもあるなど、オープンな仕組みのなかで新規事業に取り組んでいる例です。
――クラウドファンディングだと、資金が集まるかどうかがマーケティングにもなりますね。
その通りです。社外の方は、ネット上で情報を見て、面白いと思えば投資してくれます。
――最近の新規事業の事例を紹介してもらえますか。
たとえば「FES Watch(フェスウォッチ)」という腕時計です。普通の腕時計はバンドと盤面が分かれていますが、これらを1枚の電子ペーパーで作ることで、フラットでスタイリッシュなボディを実現した柄の変わる時計です。次のステップでは、スマホから自分の好きなデザインを選ぶと、その模様が映るような製品を一生懸命開発しています。
もう一つご紹介すると、香りを持ち運ぶ「AROMASTIC(アロマスティック)」です。5種類の香りを持ち運べるカートリッジ式のパーソナルアロマディフューザーで、片手で簡単に操作できるデザインのため、時間や場所を問わずパーソナルに香りを楽しむことができます。たとえば「今日はインタビューを受けるので緊張するな」というとき、インタビューの直前に自分が好きな香りをかぐことで、緊張を和らげるというものです。
■インターンシップ
――インターンシップについて教えてください。
夏と冬に実施しています。多くのコースは1週間から2週間、実施しています。短い時間で効率的に組織の雰囲気や会社の様子をわかってもらえるよう工夫しています。
――インターンに参加すると理解が深まると思いますが、採用の際に有利になりますか。
インターンに参加しているから有利、参加していないから不利、ということはありません。インターンは技術系、事務系合わせて数百人以上受け入れていますが、それでも参加者数は限られてしまいます。実施するタイミングも会社が日程を決めて提案しますが、学生のみなさんの都合に合わないケースもあると考えます。インターンの有無が選考に影響することはありません。
ソニー以外の他社で、インターンを経験した人の話を聞くことがあります。他社のインターンでも、「会社はこういうところだ」という組織の雰囲気や特徴がつかめれば、学生のみなさんにとっては、就職先を検討する上で良い材料になるのではないかと思います。
■採用スケジュール
――プレエントリーと本エントリーの状況は?
プレエントリーの後、ES提出期限までにじっくりと検討して本エントリーしてもらう流れになっています。本エントリーの数は、年によって上下することがありますが、ここ数年は増加しています。
――採用スケジュールを教えてください。
2017年卒採用は、経団連の指針通り3月に採用情報をオープンにして説明会を始め、選考は6月でした。2018年卒採用も3月に採用情報をオープンし、会社説明会は3月中旬に東京・大崎にあるソニーのビルで開催しました。
自社主催の説明会は東京で1回だけ開催にとどまり、首都圏以外のみなさんにはご不便をかけたのですが、約3000人が参加され、様々な職種の情報を現場のスタッフからしっかり聴いてもらえたのではないかと思います。昨年よりも参加人数は増加しており、アンケート結果を見てもニーズに合った情報を届けることができたようです。
――他に会社の話を聞く機会は?
各大学での企業研究会や業者の合同企業説明会にはできるだけ参加するようにしています。特に首都圏以外の学生のみなさんに対しても、年が近い若手社員の話を聞いてもらえるよう、人事担当者だけではなくOB・OGを各地に派遣しています。
また、OB・OG訪問についても積極的です。アドバイザーに登録した社員らが、出身大学ごとに活動しています。活動のしかたはアドバイザーにまかせています。知っている先輩からざっくばらんに会社の様子を聞ける機会として好評で、ソニーに応募するきっかけとなった応募者も多数です。
――ソニーには、「やる気があれば入社2年目でも事業責任者になれる」という制度があるそうですね。
制度があるのではなく、チャンスがある、と捉えていただきたいです。
ご指摘の例は、新規事業開発のプログラムでスタートした事業責任者のことですね。この新規事業は応募制をとっています。応募者がいくつかの段階を経て5名ほどのチームになり、本格的にビジネス化の段階になると、もともとの配属部署から異動して、責任を持って事業に取り組むことができるようにします。その事業リーダーが入社2年目だったということです。年齢などに制約されるということはありません。
――何チームが動いているのですか。
いま実際に商品をつくる段階、販売、サービスを提供する段階になっているのは7~8プロジェクトです。新規事業の提案をオーディションで絞り込み、事業化までインキュベート(新規事業の育成・支援)していく仕組みです。オーディションの募集は1年に3回ほどで、かなりの数の応募がありますよ。
多くの企業にとって、新規事業として何をやるかについては、社内でも「秘中の秘」というのがほとんどでしたが、ソニーでは少し違います。今ご紹介したプログラムでは、オーディション段階から社外の人にも見てもらっています。事業に投資する資金も、社内で調達するのではなく、外にオープンにするクラウドファンディングで募ります。1億円以上を集めたプロジェクトもあるなど、オープンな仕組みのなかで新規事業に取り組んでいる例です。
――クラウドファンディングだと、資金が集まるかどうかがマーケティングにもなりますね。
その通りです。社外の方は、ネット上で情報を見て、面白いと思えば投資してくれます。
――最近の新規事業の事例を紹介してもらえますか。
たとえば「FES Watch(フェスウォッチ)」という腕時計です。普通の腕時計はバンドと盤面が分かれていますが、これらを1枚の電子ペーパーで作ることで、フラットでスタイリッシュなボディを実現した柄の変わる時計です。次のステップでは、スマホから自分の好きなデザインを選ぶと、その模様が映るような製品を一生懸命開発しています。
もう一つご紹介すると、香りを持ち運ぶ「AROMASTIC(アロマスティック)」です。5種類の香りを持ち運べるカートリッジ式のパーソナルアロマディフューザーで、片手で簡単に操作できるデザインのため、時間や場所を問わずパーソナルに香りを楽しむことができます。たとえば「今日はインタビューを受けるので緊張するな」というとき、インタビューの直前に自分が好きな香りをかぐことで、緊張を和らげるというものです。
■インターンシップ
――インターンシップについて教えてください。
夏と冬に実施しています。多くのコースは1週間から2週間、実施しています。短い時間で効率的に組織の雰囲気や会社の様子をわかってもらえるよう工夫しています。
――インターンに参加すると理解が深まると思いますが、採用の際に有利になりますか。
インターンに参加しているから有利、参加していないから不利、ということはありません。インターンは技術系、事務系合わせて数百人以上受け入れていますが、それでも参加者数は限られてしまいます。実施するタイミングも会社が日程を決めて提案しますが、学生のみなさんの都合に合わないケースもあると考えます。インターンの有無が選考に影響することはありません。
ソニー以外の他社で、インターンを経験した人の話を聞くことがあります。他社のインターンでも、「会社はこういうところだ」という組織の雰囲気や特徴がつかめれば、学生のみなさんにとっては、就職先を検討する上で良い材料になるのではないかと思います。
■採用スケジュール
――プレエントリーと本エントリーの状況は?
プレエントリーの後、ES提出期限までにじっくりと検討して本エントリーしてもらう流れになっています。本エントリーの数は、年によって上下することがありますが、ここ数年は増加しています。
――採用スケジュールを教えてください。
2017年卒採用は、経団連の指針通り3月に採用情報をオープンにして説明会を始め、選考は6月でした。2018年卒採用も3月に採用情報をオープンし、会社説明会は3月中旬に東京・大崎にあるソニーのビルで開催しました。
自社主催の説明会は東京で1回だけ開催にとどまり、首都圏以外のみなさんにはご不便をかけたのですが、約3000人が参加され、様々な職種の情報を現場のスタッフからしっかり聴いてもらえたのではないかと思います。昨年よりも参加人数は増加しており、アンケート結果を見てもニーズに合った情報を届けることができたようです。
――他に会社の話を聞く機会は?
各大学での企業研究会や業者の合同企業説明会にはできるだけ参加するようにしています。特に首都圏以外の学生のみなさんに対しても、年が近い若手社員の話を聞いてもらえるよう、人事担当者だけではなくOB・OGを各地に派遣しています。
また、OB・OG訪問についても積極的です。アドバイザーに登録した社員らが、出身大学ごとに活動しています。活動のしかたはアドバイザーにまかせています。知っている先輩からざっくばらんに会社の様子を聞ける機会として好評で、ソニーに応募するきっかけとなった応募者も多数です。
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2024/11/24 更新
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