ソニー株式会社
2018シーズン【第10回 ソニー】
「個」「異見」大事にする風土 挑戦し続ける意欲ある人来て!
人事センター採用部統括部長 北島久嗣(きたじま・ひさつぐ)さん
2017年04月24日
■採用実績と職種
――採用人数を教えてください。
2017年春入社は約300人です。2018年入社の採用も300人を予定しています。男女でみると、技術系は男性が多数ですが、事務系は女性も多く採用しています。技術系での女性の活躍もとても増えてきたので、こちらも積極的に採用しています。
――「コース別採用」をしていますね。
応募者一人ひとりの関心の高い事業領域、研究領域で、社会人としてのスタートを切って活躍してもらいたいという思いから、コース別採用を展開しています。4月の入社後すぐにいいスタートが切れるように、2012年からこの枠組みでの採用を始めました。導入以前は「技術系」と「事務系」の2コースでした。
現在、技術系は具体的には、ソフトウェア、ハードウェアなどの分野に分かれ、さらにいくつかの事業領域を選択できるようにしています。理系は「自分の専門性を、この領域で生かしたい」という人が多いので、具体的な選択肢の中から検討できるようにしています。
――希望して採用されれば、必ずそこに配属される?
それが基本です。他社では、まず会社全体で内定を出して秋以降に配属面接があり、そこであらためて内定者に希望を聞いて4月に発表するパターンが多いと思いますが、弊社の技術系の場合、「内定=配属」という考え方です。内定の段階でどの領域で仕事をするかお互い確認できるように、あらかじめしっかり情報提供しています。
――事務系も同じですか。
事務系の職種を紹介すると、「セールス&マーケティング」はいわゆる営業とマーケティング、「プロダクト&サービスプランニング」は商品企画の業務になります。「ビジネスマネジメント」は、いわゆる経理、財務、管理などに当たります。事務系の職種の分類は技術系より大枠にして、実際の配属組織は内定後に本人の希望を聞きながら決めます。
――コース別採用の評判は?
やりたいことが明確な人には、非常にポジティブに受け入れてもらっています。「何の仕事をしようかな」とまだ決めかねている人にも、面接の段階で第1志望から第3志望まで幅広く聞いています。双方納得したうえで面談を進めるので、結果的に第1志望でないところに自分のやりたいことを発見する応募者も少なからずいます。結果的に、自分の意向に沿った就職活動ができるのではないかと考えています。
――「どこでもいいからソニーで働きたい!」という学生もいますよね?
2018年卒採用から、事務系に「WILLコース」を新設しました。最初からコースに分けず、「ソニーでいろいろ挑戦していきたい」という人向けのコースです。先ほどの話とは逆に、就活の時点で仕事の内容まで決められない、という人もまた多いのではないかと捉えています。事業を指定せず、自分の思いを直接ぶつけてもらい、面談を通じて一番良いキャリアスタートを会社から提案するものです。
せっかくいろいろな可能性があるのに、会社の仕組みを十分理解していない段階で、「自分はとりあえずこの職種かな」と決めてしまう人が見られ、何とか良くすることはできないか、と過去の面接を通じて実感しました。WILLコースにもぜひ積極的に応募を検討してもらえればと思います。
――事務系の何割をWILLコース募集にするのですか。
現時点では決まっていません。ガチガチに全ての詳細点を決めずにこういった新たなやり方を決めて進める、というのも、ソニーの仕事の進め方の一つかもしれません。
――入社後に、事業領域が変わることはあるのですか。
配属部署でしばらくキャリアを積む人が多いですが、意欲があれば自ら手を挙げ、最初の配属とは違う部署に移る制度も運用しています。自分で壁を取り除き、専門領域を広げていくこともできます。最初に配属されたからということだけで決めてしまわず、つねにアンテナを高くして、自分なりのさまざまなキャリアを築いていくことが可能です。
――技術系の推薦制度はありますか。
あります。技術系に限定されますが、大学、学部ごとにお願いしているのが現状です。
――募集要項に「既卒3年まで新卒対象」とあります。日本の会社では珍しいと思いますが。
既卒の方でも、ポテンシャルを活かして職場で十分活躍してもらえると考え、枠を広げて募集しています。ソニーには、もともと年功序列の風土がないので、入口で年齢に幅があっても全く構いません。
入社2年目でも事業リーダーに 若手OB・OG社員を大学・合説に派遣
――ソニーには、「やる気があれば入社2年目でも事業責任者になれる」という制度があるそうですね。
制度があるのではなく、チャンスがある、と捉えていただきたいです。
ご指摘の例は、新規事業開発のプログラムでスタートした事業責任者のことですね。この新規事業は応募制をとっています。応募者がいくつかの段階を経て5名ほどのチームになり、本格的にビジネス化の段階になると、もともとの配属部署から異動して、責任を持って事業に取り組むことができるようにします。その事業リーダーが入社2年目だったということです。年齢などに制約されるということはありません。
――何チームが動いているのですか。
いま実際に商品をつくる段階、販売、サービスを提供する段階になっているのは7~8プロジェクトです。新規事業の提案をオーディションで絞り込み、事業化までインキュベート(新規事業の育成・支援)していく仕組みです。オーディションの募集は1年に3回ほどで、かなりの数の応募がありますよ。
多くの企業にとって、新規事業として何をやるかについては、社内でも「秘中の秘」というのがほとんどでしたが、ソニーでは少し違います。今ご紹介したプログラムでは、オーディション段階から社外の人にも見てもらっています。事業に投資する資金も、社内で調達するのではなく、外にオープンにするクラウドファンディングで募ります。1億円以上を集めたプロジェクトもあるなど、オープンな仕組みのなかで新規事業に取り組んでいる例です。
――クラウドファンディングだと、資金が集まるかどうかがマーケティングにもなりますね。
その通りです。社外の方は、ネット上で情報を見て、面白いと思えば投資してくれます。
――最近の新規事業の事例を紹介してもらえますか。
たとえば「FES Watch(フェスウォッチ)」という腕時計です。普通の腕時計はバンドと盤面が分かれていますが、これらを1枚の電子ペーパーで作ることで、フラットでスタイリッシュなボディを実現した柄の変わる時計です。次のステップでは、スマホから自分の好きなデザインを選ぶと、その模様が映るような製品を一生懸命開発しています。
もう一つご紹介すると、香りを持ち運ぶ「AROMASTIC(アロマスティック)」です。5種類の香りを持ち運べるカートリッジ式のパーソナルアロマディフューザーで、片手で簡単に操作できるデザインのため、時間や場所を問わずパーソナルに香りを楽しむことができます。たとえば「今日はインタビューを受けるので緊張するな」というとき、インタビューの直前に自分が好きな香りをかぐことで、緊張を和らげるというものです。
■インターンシップ
――インターンシップについて教えてください。
夏と冬に実施しています。多くのコースは1週間から2週間、実施しています。短い時間で効率的に組織の雰囲気や会社の様子をわかってもらえるよう工夫しています。
――インターンに参加すると理解が深まると思いますが、採用の際に有利になりますか。
インターンに参加しているから有利、参加していないから不利、ということはありません。インターンは技術系、事務系合わせて数百人以上受け入れていますが、それでも参加者数は限られてしまいます。実施するタイミングも会社が日程を決めて提案しますが、学生のみなさんの都合に合わないケースもあると考えます。インターンの有無が選考に影響することはありません。
ソニー以外の他社で、インターンを経験した人の話を聞くことがあります。他社のインターンでも、「会社はこういうところだ」という組織の雰囲気や特徴がつかめれば、学生のみなさんにとっては、就職先を検討する上で良い材料になるのではないかと思います。
■採用スケジュール
――プレエントリーと本エントリーの状況は?
プレエントリーの後、ES提出期限までにじっくりと検討して本エントリーしてもらう流れになっています。本エントリーの数は、年によって上下することがありますが、ここ数年は増加しています。
――採用スケジュールを教えてください。
2017年卒採用は、経団連の指針通り3月に採用情報をオープンにして説明会を始め、選考は6月でした。2018年卒採用も3月に採用情報をオープンし、会社説明会は3月中旬に東京・大崎にあるソニーのビルで開催しました。
自社主催の説明会は東京で1回だけ開催にとどまり、首都圏以外のみなさんにはご不便をかけたのですが、約3000人が参加され、様々な職種の情報を現場のスタッフからしっかり聴いてもらえたのではないかと思います。昨年よりも参加人数は増加しており、アンケート結果を見てもニーズに合った情報を届けることができたようです。
――他に会社の話を聞く機会は?
各大学での企業研究会や業者の合同企業説明会にはできるだけ参加するようにしています。特に首都圏以外の学生のみなさんに対しても、年が近い若手社員の話を聞いてもらえるよう、人事担当者だけではなくOB・OGを各地に派遣しています。
また、OB・OG訪問についても積極的です。アドバイザーに登録した社員らが、出身大学ごとに活動しています。活動のしかたはアドバイザーにまかせています。知っている先輩からざっくばらんに会社の様子を聞ける機会として好評で、ソニーに応募するきっかけとなった応募者も多数です。
ESは複数の目で評価 考えより行動・経験書いて「人物像」伝えて
――エントリーシート(ES)はどんな内容ですか。
「卒業論文・修士論文や学科・専攻の授業の中で、最も力を入れて学んでいるテーマは?」「何かを解き明かした・成し遂げた・作りあげた経験」「ソニーで取り組みたい内容」という項目が主な内容です。
――日本を代表するグローバル企業ですから、語学の資格や点数は重視するのでしょうね。
重視するというより、英語の力があれば入社後の活躍の幅が広がります。
ただ、選考時点においては、必ずしも英語ができる人だけを採用しているわけではありません。英語ができない、というのは使う機会がなかったから、と理解しています。英語を使う機会があれば今の学生はかなり伸びるのではないでしょうか。必要に迫られて実際に使っていくうちに、英語が武器になるようになった社員も実際、本当にたくさんいます。これからは日本語だけでなく英語でやりとりする機会がより増えると思います。
――ESは誰が読むのですか。
1通のESを、1人で読むわけではなく、3人から5人くらいで回し読みして選考しています。人事担当の社員だけではなく、現場でビジネスや研究に従事している各部門の社員にも読んでもらいます。いろいろな可能性を持った人がいるはずなのに、誰か1人にESを託し、1人の物差しでこの人は○、×と決めるのは、逆に会社として大変なリスクですから、複数の目でものすごく一生懸命に読んでいます。
学生のみなさんがいろんな想いをこめて一生懸命に書いたESです。何とかその熱い想いをしっかり受け止めようと、会社側も懸命に時間をかけて読ませてもらっているというのが実情です。そのESをもとに、限られた時間で面接するわけですから、ソニーの風土で活躍できる人を積極的に採用したいと思っています。
――ソニーの風土に合う人とは?
ソニーという会社は、これまでも「個」「個人」を重視してきました。一言でいうと、強い「個」。つまり、周りの意見や固定概念に左右されずに、自分の頭で考えられる人、考え抜く人。積極的にトライ・アンド・エラーを通じて、挑戦し続ける意欲のある人、となります。
たとえば、会議に出たら、ただ座っているだけでなく、出るからには何か発言する。そこで「それは違うぞ」と言われたら、チャンスととらえてほしい。何が違うのかを自分できちんと省察して自分をさらに成長させる絶好の機会です。
また、ソニーには、「あなたはどう考えますか?」と積極的に意見を求める風土があります。現時点では、意見の文字を変えて「異見」を歓迎する、と経営トップも積極的に訴えています。自分なりの意見を持つためには、常にアンテナを張っていること、そこでつかんだ材料をもとにいろいろ考えることも重要ですね。
――ソニーに合う人かどうかを、ESからどうやってつかむのですか。
読んで、スッと人物像をイメージできるといいですね。ただそれも、読み手によって違うので、複数の人の複眼的な見方で、良さをみつけようとしています。逆に人物像がなかなかつかめない場合は苦労します。
――人物像がつかめない理由は書く分量が少ないから? それとも中身が薄いから?
両方あるでしょうね。分量が少ないと、我々もなかなかイメージしにくい。いろいろな要素を書いてもらい、ある程度のボリュームになると、応募者自身が気づいていなくても、結果的にいろんな材料を会社側で見つけることができると思います。「こういう内容を書いたほうが良い」とか、「これが○で、これは×だ」という明確な基準はありません。
――学生にはESでどういうことを伝えてもらいたいですか。
頭の中で考えていることだけでなく、自分自身がどういう行動をしてきたのか、それを通して人物像が何らかの形で伝わってくればベストですね。それが我々にとって一番読み応えのあるESです。経験が具体的に書いてあると、学生の人物像が具体的に伝わってきますね。抽象的な内容だと、ご意見の表明のようにしか受け止められない場合があります。
ただ単に「自分はこういうふうに考えた。」だけではなく、「でも経験を通じてその考えをこう変えた」というように、経験をトレースできるような内容だと、さらに話を聞いてみたいと思います。
――ESの元祖は、1991年に「学歴不問」の採用を始めたソニーだと言われています。今のESにも、そのDNAは残っていますか。
それ以前の日本の各社の採用では、今と比べると、学歴が偏重された風潮があったといえるのではないでしょうか。たとえば事務系の就職活動では、東大から始まり、その次は早稲田、慶應というふうに大学別に声がかかる順番になっていた。そろそろ私たちの大学かなと予想できるような状況だったわけです。
そんな中で、ソニーは当時もそういったやり方を取っていませんでした。もともと人物本位だったのですが、それをもっと形にして、広くアピールできないだろうかと考えました。ソニー従来のやり方はそのままで、「学校名不問」という看板を新たに掲げて採用を始めたのが1991年です。それ以来、ESの項目は大きく変えていません。
――今も大学名は書かないのですか。
1991年当初は、あえて大学名の記入欄を削ったのですが、そのうち学校名で判断しないことが社会的にもコンセンサスになってきた。そこで、ソニーも元にもどした経緯があります。今では学校名もESに書いてもらっていますが、その情報に対するスタンスは一貫しています。
――変えていないからこそ、ベーシックな質問のままなのですね。
そうですね。20年くらいの人生で、考えてきたこと、苦労したり、チャレンジしたりしたことが何かあると思います。ESをテコにしてそれを再発見したとしたら、それは強いですね。
――ソニー志望者には「ずっとソニー製品を使ってきた」というファンが多いと思います。志望理由で大事なポイントは?
これという正解はないですね。あえて言うなら、ソニーの商品なり、会社なりのどこに注目したうえでこの会社を志望するのか、その切り口を明確にすると、ずいぶん違うと思います。
たとえば、以前、バックパッカーとして海外を旅行して回っている学生がいました。「どの国に行ってもソニーの商品を使っている人がいた。ソニーのロゴを見た」ことで、自分なりに何かを得られたと言っていました。世界のいろんなところでソニーのロゴを見たことに加えて、そのうえで何を考えたか、がポイントになりますね。いろいろな切り口があるので、正解や合格のストライクゾーンはありません。
――ただ「好き」ではなくて、自分なりにどう表現するかが大事ですね。
そうですね。ソニーの商品が好きであることを切り口とするなら、なぜ好きなのか、どういうところが好きなのかを掘り下げて考えてみたら何か発見や気づきがあるのではないでしょうか。
面接は自然体で 「聞く力」も大事、質問が分からなければ確認して
――面接の形式は?
すべて個人面接です。集団面接というスタイルは現時点ではとっていません。回数はコースによって違いますが、3回くらいですね。最初から面接は1対1か、学生1人に社員が2人。2~3回目も基本的には同じです。最終面接は、部門の責任者が面接しています。
――どのくらい時間をかけますか。
基本30分です。技術系は専門分野を掘り下げて聞くのでもう少し長めです。ホワイトボードを用意して書きながら説明してもらいます。プレゼンしてもらうわけではなく、「それはどういうことなのか、分かりやすく書いて説明してください」というように使っています。
――面接で見るポイントは?
自分が経験したこと、考えたことを自分の言葉で素直に話してもらう。このことに尽きると思います。今まで考えなかったことをその場で考えたり、経験していないことを言ったりしても、それは何らかの形で伝わりますからね。変に理論武装せずに、「地」で、自然体で話してもらうのが理想ですね。
――ソニーならではの質問はありますか。
とくに奇をてらった質問はありません。ただ私自身が面接するときは、短いやりとりを重ねることが多いですね。たとえば、「○○についてどう考えますか」と尋ねたとき、質問で何を聞かれているかをきちんと把握してもらい、ポイントを外さずに的確な長さで答えてもらえるか。これも一つのコミュニケーション能力です。
逆に、こちらも試されていると思っています。学生はいろいろな会社を受けるので、質疑応答を通じて「この会社の面接に出てくる人はこのくらいのレベルだ」と、試されていると常に思っています。
――聞く力、何を聞かれているのかをとらえる力を見るのですね。
その通りです。最近、ある人がコミュニケーションで一番大事なのは「観察力」だと話していて、なるほどと思ったことがあります。要は、自分が伝えたいことが相手にちゃんと受け入れられているかどうか。「伝わったことが伝えたこと」だと。会話を通じて、どれほど相手に伝えたいことを受けとめられているか。その鍵になるのが、相手を観察することだ、という指摘です。しっかり伝えていくために、伝えるべき相手の状況をしっかりみることですね。
――質問の趣旨がよく分からなかったら?
会社側があまり明確ではない質問をしてしまうことも残念ながらあります。その際には、「分からないけど何か答えないと」と思って無理に答えるより、「今の質問はこういう趣旨ですか」と聞き返してもらって全く問題ありません。正確なコミュニケーションをしようとしているわけですから。質問の趣旨を確認することは、実は、仕事をしていくうえでも重要なことなんです。
――たしかに、営業で相手の発言の趣旨が分からないまま話していたら仕事は取れませんね。
商談が成立しないですよね。だから、短いやりとりだとしても、しっかりした必要な情報を交換できることが、案外重要なんです。
■アンテナ
――アンテナを張るのが大事との話がありました。ニュースへの関心度は面接で重視しますか。
自分の置かれた時代や状況が、今はどういう状態なのか、どんな人が関っているのか、そんな認識を常に意識しておくことはとても重要ですね。全てのニュースに精通している必要はありません。しかし、何かに関心を持ち続けるのはすごく大事だと思います。
――面接で「関心のあるニュース」は聞きますか。
聞くことがあります。しかし、そのニュースのネタによって採用可否を判断するということはありません。重要なのは「なぜ関心を持ったのですか」という点です。今の学生たちは、新聞だけでなくいろいろなメディアから、かなり積極的に情報を集めていますね。
――「私服面接」をあえてうたっていますが。
その趣旨は、自分のありのままの姿を一番アピールできる状態で面接に臨んでもらいたい、その一点です。そのための会社側からの提案です。奇抜な服ではなく、ふだん着ている服で普段どおりに話してもらえれば、と願っています。もちろんスーツを着てきても全く問題ありません。自分に合った身だしなみで面接に臨んでもらえればと思います。
「可能性を広げるチャンスが転がっている会社」 思いをぶつけ合い、突き詰めて考える
――ずばり、ソニーってどんな会社ですか。
個人の目線で言えば、「自分の可能性を大きく広げていくチャンスが転がっている会社」でしょうか。社会人の基礎は、最初に入った会社でつくられることが多い。そこで初期設定された「土台」に、いろいろな仕事の経験が加えられ、固められ、厚みになっていきます。転職して初めてそれに気づく人もたくさんいます。そのような話を聞くたびに、最初に入った会社組織の風土は社会人にとってとても大事だ、と痛感します。
ソニーがどんな会社かを別の言い方で表現すると、先ほども言った「個」を大事にする会社です。「個」を重視することは、組織間の壁が低いこととつながっていると思います。ソニーでは、みんな若いときから、自分が思ったことをぶつけ合ったり、トライ・アンド・エラーで自分の考えを膨らませたり、突き詰めて考えたりしています。そういった「個」が「チーム」になり、より大きな「組織」になって、ソニーのユニークさつながるのだと思います。
いずれにしても、長いレンジで考えたとき社会人としてスタートする会社とは実はとても重要だと、学生に伝えたいですね。
――独立して起業する人は多いのですか。
特筆するほど多くはありませんが、辞めても何らかの形でつながっていることが多いです。
――採用で競合する会社は?
実にいろいろです。ソニーはエレクトロニクス事業だけをやっている会社ではありませんから。グループには、音楽や映画、ゲームなどのエンタテインメントコンテンツ、さらに銀行や生保、損保というライフサイクルをサポートする金融コンテンツを展開する企業群があります。
別の切口でいうと、BtoC(個人向けビジネス)だけでなく、BtoB(企業向けビジネス)の領域でもいろいろなものをつくっています。
放送局向けの機器は世界でも高いシェアを誇っています。放送業界で最も権威あるエミー賞を何度も受賞しているほか、今年の米アカデミー賞では、Cine Alta「F65」という映画制作用のカメラで科学技術賞を受賞しました。2015年は業務用有機ELマスターモニターで受賞していて、我々の商品は、映画業界からも非常に高い信頼を得ています。
スマホのカメラに使うイメージセンサーは今後さらに活用場面が広がるでしょう。メディカルの分野では医療周辺機器にもビジネス領域は広がっています。
■北島さんの就活と経歴
――北島さんの就活と経歴について教えてください。
入社は1989年でバブル景気のころでした。大学時代は計量経済学が専攻で、仲間は金融系志望者が多かった。みんな一緒の領域に行くというのに抵抗があり、サークルの知り合いを通じて、たまたまソニーの人の話を聞く機会があり、「何か面白いことができそうだな」と。それで今に至っています。
――配属は?
大学時代は消費者行動の分析などを一生懸命やっていたので、商品企画を志望しました。「消費者ニーズをつかむことができるから、絶対に会社に貢献できる」と強い決意で入ったのですが、配属先は人事部でした。もう青天の霹靂(へきれき)で、「何のためにこの会社に入ったのか」と思いましたね(笑)。
でも、開き直るのも早かった。人事の仕事は人と関わることですよね。当時は「それならチャンスメーカーになろう」と思い直して、仕事をし始めました。
――「チャンスメーカー」とは?
「異動や人事を通じて、社員のみんなにチャンスをつかんでもらう仕事」という意味です。苦し紛れに思いついて、それで自分を納得させたわけですが、それからずっと「チャンスメーカー」という思いを持ち続けています。
最初は神奈川県の厚木工場の労務担当でした。本社の人事へ移って研修・採用を経験し、仙台工場の人事を経た後、タイのバンコクに3年間赴任しました。その後、また本社に戻って今の仕事をしています。
みなさんに一言!
人生において新卒採用が全てではありませんが、この時期に自分の思ったことはやり切るつもりで精いっぱい活動し、いろんなことを感じ、考えていただければと思います。ひところ、「勝ち組、負け組」という嫌な言葉がありました。就職活動に「勝ち負け」はないと思います。就活で勝ち負けを判断するのは早計です。長い目で見ていくことが大事ではないでしょうか。そういう自分自身もまだ判断できていませんから。
ソニー株式会社
【映像・音響機器 電子機器】
1946年に真空管電圧計の製造・販売で創業。日本初のトランジスタラジオを初め、テレビ、テープレコーダー、携帯型オーディオ、ビデオレコーダー・プレーヤー、ビデオカメラ、デジタルカメラ、パソコンなど、数々の商品を打ち出してきました。現在は、映像や音を中心としたエレクトロニクス事業、映画・音楽のエンタテインメント事業、金融事業、ゲーム事業、メディカル事業など、既成概念にとらわれず幅広く開拓を進め、全世界を市場にしてビジネスを展開しています。海外売上比率は70%以上。特に、イメージセンサーの分野では、革新的な技術で常に業界をリードし続けています。今後も、ソニーならではの高付加価値を提供する商品・サービスを世界中に送り出していきます。
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2024/12/04 更新
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