株式会社高島屋
2018シーズン【第9回 高島屋】
生産者の思いとお客様の望みつなぐ仕事 面接で人間味見せて
人事部 人事・採用育成担当係長 安達早紀(あだち・さき)さん
2017年04月17日
■採用実績
──最近の採用実績を教えてください。
2016年入社は合計53人(男性20、女性33)です。2017年入社は正社員は47人(男性26、女性21)です。
そのほか、2017年入社から初めて「限定正社員」の募集を始めました。全国各地に転勤の可能性がある総合職の正社員とは違い、限定正社員は勤務地と職種が限られています。今回は17人採用し、全員女性です。
──限定正社員を導入する会社が増えていますね。
社会的ニーズとして多様な働き方が求められる中、弊社がどのような働き方を用意できるか考えました。「働き方改革」にもつながってくると思います。
──2018年入社の採用予定数も同じくらいの予定ですか。
はい。限定正社員の採用もあるので、若干人数が増える可能性もあります。女性の比率が高いですが、選考では男女の差は全くつけていません。
─―採用活動をしていて、男女の違いを感じることは?
私の主観ですが、女性のほうが話すことに慣れていると感じることがありますね。話に抑揚をつけて、わかりやすく伝える人がいました。でも、だからといって合格というわけでもありません。不器用ながらも一生懸命話す男性が光るときも、もちろんあります。男女でそれほど大きな差はないと思います。
■説明会とエントリー
──2017年卒採用のスケジュールを教えてください。
経団連の指針どおり、3月1日広報解禁、6月1日から面接スタートでした。内々定が出はじめたのは、6月上旬から中旬、面接から1週間経過したあたりです。その後何クールか選考があり、内定式を行う10月1日でひと区切りとなりました。
「限定正社員」の採用は、7月にスタートしたため、12月ごろまで面接をしました。年明けの2月に、限定正社員向けの内定式を行いました。
2018年卒採用も経団連の指針どおりに進めます。
──2月以前に、大学の学内での業界研究セミナーには参加していますか。
はい。3~6月という期間はとても短いので、もっと早い段階から業界のことを知りたいという大学の趣旨に賛同し、ご縁のある学校のセミナーにうかがっています。
2017卒採用ではその後、3月下旬から若手社員との懇談会やセミナーを行いました。そういった場を通じて学生に考えてもらい、正式にエントリーした人には会社説明会でさらに細かい話などをしていく流れでした。エントリーシート(ES)締め切りの前に懇談会やセミナーを開き、弊社を理解し、興味を持ってもらう形です。
──懇談会やセミナーの規模は?
2017卒採用のセミナーは、都内で複数回開催しました。1回あたり170人ほどの学生に、社員が登壇して話しました。若手社員との懇談会には社員が複数名参加し、150名ほどの学生を20~30人ずつのグループに分けて話をしました。
──学生の反応は?
「知らない仕事を知ることができ、よかった」との声を聞いたので、興味を持ってもらえたようです。百貨店というと接客のイメージが強いのですが、実はもっと幅広い仕事があることをお伝えできたと思います。たとえば、お店のリニューアルを担当したり、法人向けの仕事をしたり。やってみたい仕事が百貨店にもある、と学生に気づいてもらえたようです。
──ESの締め切りはいつ?
2017卒採用は4月20日でした。
──2017年卒採用のプレエントリーとエントリー数は?
前年より30%くらい減りました。選考期間が短かったのが理由の一つだと感じています。メディアに「百貨店業界は厳しい」と出ている影響もあると思います。弊社の場合、ベトナム出店など明るいニュースもあるので、幅広く情報発信したいと思います。
ESは「学生時代に取り組んだこと」だけ そこに個性が見える
──インターンシップはやっていますか。
2015年から始めました。採用とは切り離しているので、学年問わず参加できます。基本は2部構成で、1部では社員がどんな仕事をしているのかを講義し、2部では社員からお題を出してグループワークで仕事を体感してもらいます。最後に各チームで発表し、社員が講評します。企画体験みたいなものですね。
──インターンの日数は?
2016年までは、2~3月の土日を使って計6日間行いました。でも学生は土日はアルバイトなどで忙しいので、日数を選択可にして全部受ければ6日間という形式で2年連続実施しました。時間は、10時半から17時半ごろまで丸1日のイメージです。
ただ、学生から「6日間は結構きつい」という声が出て、大学側からも企業情報を効率的に得たいという要望があり、2017年はワンデーにしました。
■ES
──ESの主な質問項目を教えてください。
昨年は「学生時代に一番力を入れて取り組んだことは何ですか」というお題で400字書いてもらいました。提出はWEBからです。
──他の質問は?
それだけです。基本的にその方の個性、人柄などその人本人を重視しているため、面接を大切にしています。
──えっ? 志望動機を書く欄はないのですか。
はい、ありません。弊社の未来を考え、いろいろな個性が集まって新しい価値を提供できる会社にしたいからです。学生の個性が見えるのは、志望動機よりも「本人が取り組んだこと」です。けっして「志望動機が大事ではない」わけではなく、それは面接で聞くようにしています。
──履歴書は提出させますか。
まず初めにWEB経由でESを出してもらい、合格したらSPI(適性検査)を受けてもらいます。その後に、SPI通過者が履歴書持参で面接という流れです。
■面接
──面接ではいろいろ聞きますよね?
集団面接や個人面接を複数回受けてもらいますが、履歴書に書いてあることから質問をスタートして、学生時代に頑張ったことを教えてもらいます。特技や勉強していることなども聞きます。本人が履歴書に頑張って書いてくれたことについては話を聞くようにしています。
──面接で重視するポイントは?
人間味がわかるような話が大切ですね。その人間味がコミュニケーションの中で出てくるのか、物事への意欲で出てくるのか、体験談で出てくるのかは、人によって違います。
──面接で印象に残っている学生はいますか。
「デパ地下から百貨店に興味を持った」という男子学生がいました。飲食店のアルバイトがきっかけで食料品に興味を持っていて、「食料品は利益率が低いと言われているけれど、それを変えたい」と話してくれました。結構マニアックですが、強い意欲を感じました。よく研究していることが伝わってくるし、本人がやってきたこととやりたいことが一致していたので、印象に残っています。「変えたい」と言ってくれる学生は少ないので印象に残りますね。彼は内定して、今は社員として活躍しています。
──志望動機で一番多いのは?
私たちは、百貨店業界の中でも「地域密着型の店づくり」が特徴です。中心となる本店はなく、その地域の本店になることを目指して店づくりしていると話しているので、「地域密着型の百貨店運営に共感した」とか「経営理念に共感した」という言葉が多いですね。
ほかには、「アルバイトで接客をしていたので接客の仕事を続けたい」。ありがたいことに、「小さいころから家族が利用していて親近感を抱いている」というのも多いですね。
──そういう理由だと、ありきたりでは?
いえ、入り口としては、こういう理由がむしろありがたいのかなと。小さいころに通ってくれていたなんて、ありがたいことです。どんなきっかけでも高島屋を知り、興味を持ってもらえるならいいと思います。
志望動機については、面接を重ねるうちに「なぜ地域密着型に共感するのか」「どんな仕事がやりたいのか」と話がどんどん進んでいくので、その過程で本人の本当の希望が見えてきます。見え方は人によってまちまちですね。
――差がつくポイントは、企業研究の深さですか。
企業研究に加えて、入社してからの働き方をお互いにイメージできるか、本人と私たち企業の双方がウィンウィンになれるのかを考えます。入社して「やっぱり違った」と途中で辞められてしまっては、本人にとっても我々にもすごくもったいない。そうならないように、働くビジョンがマッチしているかどうかも重要なポイントです。
──OB・OG訪問を受け付けていますか。
社としては受け付けていません。社員の出身校や所属は個人情報として扱っているので、連絡してもらっても対応できないケースがあります。ただ、社員本人が出身大学でOB登録などをして、個人で引き受けるのは自由です。
一応、リクルーター制度も導入していますが、採用とは別です。全国合わせて60人くらいの若手社員に「大学のゼミやサークルで、会社の仕事についていっぱい伝えてきて」とお願いする感じでやっています。リクルーターには、内定後の学生を対象に「心の面談」のようなこともしてもらっています。若手社員のほうが話しやすいこともあるので。
「残業せずに一斉に帰る」決まり 風通しよくチャレンジに前向きな会社
──面接で時事的な質問はしますか。
質疑応答の中で出てくることもあります。面接での話の流れで、たとえば学生が海外に留学していたと聞けば、「この前そこでこんなことがあったけれども、どう思いましたか」とか。会話の流れで出てきて聞くことはありますが、必須事項で聞いているわけではありません。
──最近、新聞を読まない学生が多いのですが、世の中に対する関心という点についてはどう思われますか。
私もデジタル版を読んでいますが、いろいろな形で社会の流れを把握するなら、新聞は一番有効な媒体ではないかと感じています。今のトレンドや、社会でどんなことが求められているのかは客観的に知るべきだし、いろいろな角度から情報を知る必要があると思います。お客様との会話でも、「この前のNHK見た?」などと聞かれたりもしますしね。
■働き方
──女性社員が大変多く、ワーク・ライフ・バランスに熱心に取り組んでいますね。
どこの会社でも制度は整っていると思いますが、弊社は実際に制度を活用する社員が多いですね。弊社は厚生労働大臣の「プラチナくるみんマーク」の認定を受けています。出産した女性は育休を100%取得し、99%が復職しています。1%減ってしまったのは保活や復園がうまく進まず、どうしても復職できなかったケースです。男性も約35%が育休を取得しています。
──男性の35%は高い!
はい、「男性も安心して働けます」と言えます。
育休取得者だけではなく、職場のマネジャーがセミナーを受講してワーク・ライフ・バランスについて学ぶなど啓蒙活動もしています。復職後は、ベビーシッター代補助、育児用品やおむつ代補助などのサポートも充実しています。会社の制度を使いこなして活躍している人が多いのが特徴です。復職後に専務まで務めた女性もいますから、絶対にキャリアアップできる道があります。
──「働き方」改革は?
小売業界は残業が多いと言われますが、弊社は月平均5.8時間と少ないです。クリスマスや年末年始などの繁忙期にはどうしても残業が多くなりますが、普段は「残業せずに一斉に帰る」決まりになっています。
終業時間の18時15分になると、パソコンが使えなくなります。一度黒い画面が出て「超勤申請しますか 帰りますか」というメッセージが出るんです。残業申請して上長の承認が下りればパソコンが使えますが、基本的にはそこで業務終了です。
──入社後の配属で多いのは?
関東では基本的に日本橋、横浜、新宿の各店舗に配属されます。2016年の新入社員は、この3店プラス、二子玉川と千葉の柏のお店に配属になりました。関西では大阪と京都の店舗になります。基本的に、関東で採用されたら関東配属、関西で採用されたら関西配属になります。年次が上がっていくと、異動で多少の入れ替わりはありますが。
■社風
──高島屋って、ずばりどんな会社ですか。
風通しがよくてチャレンジに前向きな会社ですね。
あと、「いつも、人から。」という経営理念が根づいている会社だと感じています。
──具体的には?
風通しがいいのは、上司・部下に関係なく、常にいろいろな意見交換ができるところです。
チャレンジに関しては、常に何かを企画する段階で、「前例踏襲にとらわれずに何か新しいことをやろう」とか、「とにかく変えよう」という機運がありますね。
「いつも、人から。」という経営理念に関しては、同じチームの人なら一緒に仕事をしているので相手を思いやる行動もしやすいですよね。弊社では、まったくの他部門だとか、普段は全然一緒にいない人をも思いやりながら仕事ができていると感じます。
──チャレンジ精神は社風でしょうか。
百貨店なので、新しい価値をお客様に伝えていかなければなりません。そのためには、どんどんチャレンジして、トライ・アンド・エラーで行動していく。昔からこうしたチャレンジのDNA、進取の精神があると思います。たとえば弊社は、戦前に日本で初めて、今の100円ショップのような「十銭ストア」を開店したり、戦後には日本初の外国催「イタリアンフェア」を各店で開催したりしました。
──最近の一番のチャレンジは何でしょう・。
いろいろあります。たとえば、2015~2016年にかけて新規事業で、スキンケア化粧品ブランド「dear mayuko」、日本の食ブランド「フードアンドパートナーズ」、アジア向けEC事業「TTIC」(TAKASHIMAYA TRANSCOSMOS INTERNATIONAL COMMERCE PTE.LTD)などの新会社を他社との協業で設立し、いわば事業領域の拡大に取り組んでいます。
国内での成長が見込みづらいなか、海外展開も必要です。2016年7月には、ベトナム・ホーチミンに店をオープンしました。海外展開だけでなく、小売業以外の事業にも拡大していくのは、ある意味、革新とチャレンジの精神があるからだと思います。
──百貨店業界全体の売り上げが落ちる中、これからの百貨店の魅力を学生にどうアピールしていきますか。
「小売り」は、最後の川下の部分、つまり物を売っている場所と見られがちですが、実は川中や川上までさかのぼれます。たとえば、高島屋オリジナルの「タカシマヤ カシミヤコレクション」というセーターなどのラインアップは、バイヤーがモンゴルまで飛び、実際にヤギを見て品質を確かめることもあります。
「高島屋ファーム」という有機野菜のお店でも、バイヤーが生産者のところまで行きます。顔が見えない人たちを表舞台に引っ張り上げ、お客様にダイレクトに伝えていくのが百貨店の役目です。文化を伝えていくという側面もあります。
川上から一気通貫して、川下で自分の手で販売できるのが、百貨店の醍醐味です。お客様の反応を直接見ることができるのも面白い。ネットだけでは伝わらない生産者の思いと、お客様の望みをつなげられる場。しかも親子3世代4世代にわたって、みんなで1日中楽しめる場。それが百貨店です。そういう泥くさい仕事は、案外、裏を返せば魅力にもなるのかなと。
──物を売る職種と、それ以外の職種の人数の比率は?
販売担当、バイヤー、マネジャーなど販売に付随する業務の担当者は正社員のうち6割弱。それ意外には宣伝や営業企画、クロスメディア担当など様々です。
「お土産を買ってくるのが好き」だったからバイヤーに興味もった!
──安達さんは、どんな就活をしたのですか。
2009年の入社で、今9年目になります。海外旅行が大好きで、最初は旅行業界をたくさん受けていました。あるとき学校でのセミナーに高島屋が来ていて、横浜出身なのでなじみがあり、つい立ち寄りました。そのときにバイヤーという仕事を知りました。何となく聞いたことはありましたが、海外をはじめ、いろいろなところから物を買い付け、仕入れてお客様に伝えていく仕事だと聞きました。
――バイヤーに魅力を感じた?
自分がなぜ海外旅行が好きなのかを振り返ったら、お土産を買ってくることが好きだと気づいたのです。自分が好きな「お土産を買ってくる」ことが仕事になったらもっと楽しいのではないかと思い、百貨店のバイヤーに興味を持ちました。
その後、面接やセミナーに参加しながら、「こんな社員いいな」と感じました。当時、面接の控室に若手社員がいて、「頑張って」と送り出してくれて、そういうところもすごくいいなと思いました。ご縁あって今ここにいます。
──入社してからの仕事を教えてください。
最初の3年間は横浜店の婦人靴売場で接客販売をしました。販売担当職と呼ばれる仕事です。弊社の新人は全員、まずは販売から経験します。お客様のニーズが一番よく分かるのは売場ですから。
その後、2012年に二子玉川にある玉川店の総務部に異動し、給与計算、勤怠管理、パート社員などの採用関連など、人事的な仕事を2年半担当。2014年から人事部に来て、新卒採用を担当しています。
──一番印象に残っている仕事は?
人事の仕事ですね。一人ひとりの人生に関わる仕事なので。とくに初めてゼロから新卒採用に取り組んだ昨年の内定式はずしっと来ました。卒業式のように一人ひとり名前を呼ぶのですが、今から新人たちと一緒に人生を歩んでいくんだと感じました。
売場の仕事も好きでした。バイヤーや企画志望で入社しましたが、売場が想像以上に楽しかったのは、入社後に感じた自分の中のギャップでしたね。
──売場の魅力は?
自分が扱う商品について勉強し、それをお客様にアウトプットすると反応がダイレクトに来ます。インプットとアウトプットがたくさんできて、そのうえ「ありがとう」とお客様から感謝されます。「あなたでよかった」という言葉までいただけるのは、売場でしかできない経験です。お客様の反応を直接感じられるのが楽しいですね。
──将来は、もともと志望していたバイヤーや企画の担当に?
機会があればやってみたいですね。弊社には自己申告制度があり、年に1回、自分の希望を人事に伝える機会があります。人事部所属の私にも人事担当が付いています。バイヤー志望と伝えることは可能ですから。
みなさんに一言!
目先の内定にとらわれず、社会に出たときに自分はどうありたいか、あるいは社会に対してどんなものを生み出していきたいかを考えて就職活動をするといいと思います。私の就職活動の経験から考えても、社会に出て何をやりたいかすぐ分かる学生は少ないと思います。やりたいことが見つかっていないなら、合同企業説明会などで、自分が好きなことがどんなふうに仕事につながるのか、という観点でいろいろな企業の話を聞くといいと思います。焦らずに探して、最終的に自分の好きなことと、やりたい仕事がつながればいい。
あと、興味を持ったことがあったら、それに対して「なぜだろう」と自問を繰り返し、何段階か掘り下げていくといいと思います。私も学生時代にバイヤーという職種に興味を持ったのは、「お土産を買ってくるのが好きだったから」です。さらに掘り下げ、お土産を買ってくるのが好きということは、「友だちに喜んでもらいたいから」だと。結局、「自分は人に喜んでもらう仕事がしたいのだ」というふうに、自分の本質につながっていきました。そういった自問自答をするといいと思います。
株式会社高島屋
【百貨店】
1831年に京都の呉服商として創業し、現在は国内17店舗、海外3店舗の百貨店を展開しています。2018年秋に日本橋店の隣に専門店エリアとなる新館をオープン、2019年春には日本橋店本館を改装オープンし、次世代のシンボルとなる「新都市型SC」が完成します。また、ASEAN諸国・中国を軸に海外出店を進め、昨年のベトナム・ホーチミンに続き、2018年にはタイ・バンコクにも新たに出店。その他、リアル店舗とバーチャルを融合させる「オム二チャネル」への取り組みや、他業界とのアライアンスによる新規事業の立ち上げなど、185年以上の伝統の中で受け継いできた、革新や進取の精神により、さまざまなチャレンジを続けています。
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2024/10/13 更新
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