人事のホンネ

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【特別編 Part3】
GDってどこ見るの?自分の得意な役回りで勝負せよ!

2018年05月08日

 連休も終わり面接が本格化しています。「人事のホンネ」特別編の第3回のテーマは、初期の選考で多くの企業が実施するグループディスカッション(GD、集団討論)。企業は学生のどこを見ているのでしょう。評価のポイント、NGな受け答えは? 数年前のインタビューもありますが、大事なポイントは変わりませんし、各社に共通しています。(編集長・木之本敬介)

(写真は、大学での模擬グループディスカッション=画像を処理しています)

集団の中での「振る舞い」見る

 そもそも企業はなぜGDをするのでしょう。一度に5~8人が参加するGDは、個別に会う個人面接よりも効率的に選考できることですが、それだけではありません。

凸版印刷】出来るだけ多くの人に会いたいので、大勢を受け入れるためにやっています。学生同士で話をさせることで、結構いろいろなものが見えてきます。結論を導き出すためにどういうパートを担って、どう対応するか。

伊藤忠商事】(見るポイントは)振る舞いですね。メンバーの意見を取り入れながら、自分の意見をうまく出せるか。求める人材像の一つに「チームワーク」があります。商社のビジネスはチームで動くことが多いので、「個の力」を前提としながら、チーム戦ができるかも見ています。

阪急阪神百貨店】集団の中でどんな行動をとる人なのか、を見ています。発言内容を通して、「会議の時にこんな人が1人いたらいいな」とか、逆に「こういう人がいたら困るな」という視点は面接官みんなが持っていると思います。例えば、場の空気を読みながら話をうまく前に進める人は前者であり、自己中心的でチームの輪を乱す人や、発言が多いだけで話が散漫な人は後者にあたると思います。まだ学生なので、ディスカッションの結果そのものには期待していません。むしろ、ディスカッションのプロセスをじっくり見ているということです。

 個人面接をすれば年上の社員に対するコミュニケーション能力はわかります。でも、仕事の多くはチームプレーですから、集団の中でどんな行動をとる人なのかを知りたいのです。どんなに優秀な人でも、チームの輪を乱す人では会社にとってマイナスですからね。

「聞く力」も大事

ヤマト運輸】積極的に発言をするかどうかと「傾聴」の姿勢を見ます。

博報堂】「この人はリーダーのタイプだな」「この人はアイデアを出す人だな」といったところも見ますね。ビジネスの特性上、一定のコミュニケーション能力は必要です。クライアントや媒体社と一緒にパートナーシップを築いていくときに、「いや、私は全部一人でやります」というスタイルだと厳しい。基本的なことですが、チームでうまくやっていけるか、人の意見をきちんと聞けるかは重視します。

アステラス製薬】自分の意見を押すときに論理的にしっかり主張できるか。チームで物事を進めるときには「全体最適」を考えてどこかで折れなければならない。その駆け引きができるか。「個の力」と「グループでの力」を両方発揮できる人かどうかを見ます。MR(医療情報担当者)は、自分の力で物事を解決したり意見を通したりする力と、組織を巻き込んで成果を出す力と、両方が求められる仕事で、どちらかだけではダメなんです。

 優れた意見はもちろん評価されますが、チームでうまくやっていくには「聞く力」も必要です。主張するだけではいけません。バランスが大事なようです。

得意な役回りで勝負せよ

 GDでは、司会進行、書記、タイムキーパー、発表者など役回りを決めることがありますね。有利な役回りってあるのでしょうか。

オリエンタルランド】議論への貢献の仕方は人によって違います。議論をリードする人、拡散した議論を集約する人、行き詰ったところで全く違う角度からボールを投げ込んで議論を活性化する人など。あらかじめチェックポイントを決め、結論までのプロセスの中でその貢献ができていればポイントをつける。単純に発言量では見ていません。議論に臨んでいる雰囲気も見ます。当社の事業はチームワークが大切な仕事なので、うまく議論に入れない人を巻き込める人は印象がいいし、逆に自分と反対の意見の人に攻撃的になる人は、正論を言っていたとしても「どうなの?」となる。

【凸版印刷】学生から「どんな役割をするといいですか?」とか聞かれますが、関係ありません。さすがにひと言も話さないのは評価のしようがないので、少なくとも自分の何かしらをPRしてほしい。司会は上手くいけばプラスですが、逆に空回りしてしまう学生もいます。

安川電機】発言すればいいというものではありません。私たちは、その場での役割を通じて学生の人物像を見ています。書記的な役割なのに必要以上に発言をしたり、じっと黙っているけど要所要所で的確な意見を言ったり、いろんな学生がいますね。どういうのがいいとか、正解があるわけじゃない。

バンダイ】「イニシアチブ」を取れるか。議論をリードできるというイニシアチブだけではなく、時間の管理や、発表は私がやるというイニシアチブもある。聞き上手で「うんうん、じゃあそれはこういう風に発表しようよ」と流れをまとめていく力もイニシアチブだったりします。それぞれ個性が出てくるといい。人にはそれぞれ役割があるじゃないですか。全体のまとめ役だからいいということではなく、自分の役割の中でイニシアチブを取れることが大事。

 司会進行役は発言機会が多い分、うまくいかなかったときにも目立ちます。自分の個性を理解したうえで、得意な役回りで勝負しましょう。

「論理性」の有無はっきり出る

 GDで「論理的思考力」を見るという企業もあります。

ベネッセコーポレーション】「論理的思考力」と「コミュニケーション力」の二つを見ます。人の話をきちんと聞いて、自分の考えを論理的に伝える。論理的でないことを思い込みや感情だけで一方的に話したらダメですし、目立ちたいだけでもダメです。お互いが何を話しているのか、何が論点なのかをしっかり把握したうえで、自分はこう考えると言うことが大事。

帝国ホテル】(見るのは)「論理性」ですね。与えられたテーマに対して自分が持っている情報、他者から得た情報を咀嚼(そしゃく)し、組み立て直して、きちんと筋道立てて相手が納得するように説明できるかを見ています。「発想力」なども大事ですが、総合コースの場合、将来マネジメントに携わるときに絶対に必要なのが「論理性」です。場当たり的ではない発言が大事ですね。「思いつきました。発言しました。でも根拠がない」では困ります。GDで違いがはっきり出ます。学生のみなさんは感性豊かなのでアイデアはポンポン出ますが、それを引き取ってさらに一段上の話に持っていける人は目立つ。色々な意見をまとめてブラッシュアップしていく力ですね。

みなさんに一言!

【アステラス製薬】1テーブル何人という枠はなく、7人全員通過することもあれば全員ダメということもあります。ディスカッションをせず安易に多数決で決めたり、対立を嫌がって建設的なディスカッションを避けたりするグループは全員ダメということもあります。あえて意見がぶつかるようにしているのに、学生が素を見せてくれないと通過は難しいですね。

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