人事のホンネ

株式会社 阪急阪神百貨店

2016シーズン 【第12回 阪急阪神百貨店】
やりたいことを「カタチ」にできる!お客様に想いを届ける仕事

阪急阪神百貨店人事室 採用・社員教育部長 上田昌平(うえだ・しょうへい)さん

2015年03月16日

■採用実績と職種
 ――2014年度の新入社員は何人でしたか。
 総合職が37人入社しました。男性21人、女性16人です。やはり文系学部学生が圧倒的に多いのですが、院卒を含め理系の学生も毎年1割くらい入ります。

 ――採用数はどのように推移していますか。
 2014年までは総合職のみで、2013年度入社が28人、その前は22人なので、少し伸びています。2015年度は総合職33人(男性22、女性11)に加え、正社員ですが転勤のない「営業職」も41人入社予定です。

 ――採用人数は景気や売り上げに左右されるのでしょうね?
 それほど変りません。1000人や2000人採用する会社なら景気や収益に大きく左右されると思いますが、当社は数十人なので。

 ――職種について詳しく教えてください。
 新卒採用している正社員は総合職と営業職です。そのほかに契約社員である「特定社員」と、化粧品販売に従事する「美容専門職」がいます。化粧品はメーカーの方が販売することが多いのですが、百貨店の社員が販売するスタイルもあるんです。

 ――営業職の採用は2015年新卒から始めたんですか。
 そうです。それまでも営業職という職種はありましたが、新卒採用はしていませんでした。さらにさかのぼると、もともと総合職と営業職の区別はなかったのですが、会社の経営幹部を目指したい社員と売場で販売の仕事だけをやり続けたいという社員が同じ職種で同じしくみで働くのはどうしても無理があるということになって、2001年に職種を分けました。
 百貨店はメーカーに売場を任せるところが多いといわれていますが、私たちは、自分たちで仕入れて自分たちで販売する「自前売場」をしっかりやっていきたいという方向です。売場の販売や管理運営を担う人がこれからもっと必要になります。今年からは営業職を新卒採用し、将来店頭営業部門を統括するような人材をしっかり育てていきたいと思います。

 ――新卒の社員が倍になるということですよね。
 単純に倍になりますね。研修とかどうしようかと(笑)。

 ――わかりやすくいうと、営業職はどういう仕事なんでしょうか。
 総合職と比較してご説明します。総合職は入社後2~3年は店頭の営業部門に配属しますが、その後、バイヤーや販売促進、経理、人事、総務、広報といった売場以外の仕事、場合によっては子会社への出向なども経験してキャリアップしていきます。一方、営業職は将来にわたって店頭営業部門に所属し、売場のマネジャーや販売部長または販売のプロフェッショナルを目指す。販売やサービスにかかわる百貨店営業現場の仕事に従事するのが営業職です。
 営業職には転居を伴う転勤はありません。ただ、店舗や商品カテゴリーをまたがって関西エリア内で異動する可能性はあります。
 
 ――外国人社員の採用は?
 はい、毎年数人入っていて、2014年春にも4人入社しました。

 ――外国人観光客が増えています。こうした外国人客に対応するためですか。
 そうですね。ここ数年、外国人社員で多いのは中国人留学生です。韓国人も応募してきますが、ほとんどは中国人ですね。
外国人枠はなく日本人の学生と一緒に選考しています。ただ、留学生は集団面接より個人面接に時間をかけます。日本に留学に来た背景やキャリア志向など個別に確認したいからです。

 ――エントリー数はどのくらいですか。
 プレエントリーは総合職で1万2000人くらい。エントリーシート(ES)の提出は5000枚くらいですね。

 ――プレエントリー、エントリーの数の傾向は?
 最近は手当たりしだいの「一括エントリー」が少ないのか、プレエントリー数は若干減っていますが、ESの数は減っていないですね。

 ――2015新卒採用はどんなスケジュールでしたか。
 ESの締め切りは第1~第3クールの3回に分けました。4月から面接をしたので、第1クールのES締め切りは2月末でした。第2クールは4月末頃が締め切り、最終クールの締め切りは7月でした。ES で慎重に選考し、昨年面接に進んだのは約2000人でした。

ESを読む人のことを考えて書いているか サービス業に限らず大切なこと

■ES
 ――ESの項目を教えてください。
 割とシンプルだと思います。2015採用ではA4用紙1枚だけ。3分の1が住所や連絡先、写真などの履歴書部分、残りの3分の2は志望理由と自己PRの2点だけ、それぞれ300字程度書いてもらいました。いろいろ試行錯誤しましたが、そんなにたくさんの項目があっても読み切れないので、この形になりました。

 ――上田さんは1枚あたりどれくらい時間をかけて読みますか。
 いろいろですね。極力じっくり読み込むようにはしていますが、一目見て「これはあかんわ」という方も中にはおられますから。例えば、開封すると他社のESが入っていたり、白紙同然のものなど、どう考えても取り組み姿勢が適当だなと思えるものは論外です。
 当社はウェブESのときと手書きのときがあります。前回は第1クールはウェブで、第2クールからは手書きにしました。基本は手書きでやりたいと思っています。やはり選考の精度は高いと思いますので。

 ――ESで見るポイントは?
 個人的には、ESでは一部の基礎能力と、取り組み姿勢、志望意欲くらいしか見ることができないのではないかと思っています。例えば、私は誤字脱字もしっかり見るよう心がけています。志望意欲が高ければ慎重に見直したり言葉を調べたり、とにかく丁寧に書くはずです。誤字が多いイコールちゃんと確認をしていない、と思われるので、それほど強く志望しているわけではない可能性が高いということです。
 手書きの場合は特に、読みやすいかどうか、読む人のことを考えてくれているかどうか。あまりに小さい字で書いてあったら、読む側も人間ですからかなりツライです。読む人のことを考えて書いているかどうかというのは、我々のようなサービス業に限らず、ビジネス全般において基本でありとても大切なことだと思います。

 ――中身については?
 内容は皆それなりにちゃんと書いていただいているので、差をつけるのはとても難しいです。あとは文字数が極端に少ないとか、足切り的な要素を確認することが多いですね。いずれにせよ、最終的には、できるだけ多くの学生さんと直接会って、じっくりお話させて欲しいと思っています。

 ――百貨店ならではの「ありがちな志望理由」ってありますか。
 「小さいころに親に連れられて百貨店に来て……」「迷子になったときに百貨店の店員が助けてくれて……」という思い出系は多いですね。あとは販売のアルバイトをしていて「接客が天職と思いました」とか。
 でもよく考えると百貨店ならではの志望理由というのはそれほど多くなく、クラブ活動やアルバイトなど、学生時代に最も注力したものをネタに、どこの会社にでも使えそうな志望動機が書かれているものが残念ながら多いですね。「クラブ活動でこういう風に活躍していたので、御社の売り場の一員としても力を発揮できるはず」など、特に百貨店だと転用しやすいのかもしれません。確かに集団での活動をうまくやっていたというのは百貨店で高いパフォーマンスをあげるのに重要な要素ではありますが。

 ――そんな中で、どんな学生が秀でて見えますか。
 目標を持って何かをひたむきにやった経験を持つ学生です。クラブ活動でも勉強でもアルバイトでも、どんな分野であれ、何か一つのことをとことんやりきったという人は、それを通じて何かを身につけており、会社に入ってもきっと活躍できると思います。

 ――ウェブテストは?
 やっていません。

■面接
 ――第1クールは4月の第1週に面接を始めたんですか。
 そうです。そのあと、面接を終えて4月末頃から内々定を出しました。

 ――面接は何回ですか。
 総合職は基本4回です。集団面接、グループディスカッション(GD)、個人面接2回で4回。集団面接は前回だと学生4~5人に社員1人で、トータルでだいたい30~40分くらいでした。

 ――GDも同じくらいですか。
 学生は5~6人で、時間は1時間半くらいでした。やり方は年によって違いますが、ここ2年は面接官を現場の部長クラスにして、それぞれの仕事に関係あるテーマを設定しました。たとえば販促の催事担当部長だったら「若者の来店促進を目的とする新イベントを企画してみよう」などです。自由にディスカッションして、最後に班ごとに発表するかどうかも面接官に任せました。

 ――GDではどういうところを見ますか。
 様々な視点から、集団の中でどんな行動をとる人なのか、を見ています。発言内容を通して、「会議の時にこんな人が1人いたらいいな」とか、逆に「こういう人がいたら困るな」という視点はGDの面接官みんなが持っていると思います。例えば、場の空気を読みながら話をうまく前に進める人は前者であり、自己中心的でチームの輪を乱す人や、発言が多いだけで話が散漫な人は後者にあたると思います。

 ――GDの中で出てくるアイデアや企画力も評価の対象ですか。
 まだ学生なので、ディスカッションの結果そのものには期待していません。むしろ、ディスカッションのプロセスをじっくり見ているということです。

 ――その後の個人面接は?
 3次面接は1対2で統括部長クラス、最終面接が1対3、これは社長か専務が面接官です。今後どうするか未定ですが、これまでは両方とも15分くらいでした。

 ――最終面接まで行けばほぼ内定、ではないんですか。
 全然違います。年によりますが昨年は通過してた人が2人に1人くらいの割合です。

■採用スケジュール
 ――2016年新卒採用からスケジュールが変わりますが、どんな予定ですか?
 こちらが聞きたいくらいです(笑)。経団連の指針を守って、3月から外部の説明会にも参加し、8月から面接というスケジュールで考えています。

 ――3月中に「面談」と称してリクルーターを使うなどして、実質的に面接を済ませてしまう企業もあるようですが、百貨店業界ではどうですか。
 私の知る限り、そんなことは他社もやらないと思います。ちなみに当社ではリクルーターも選考をしない若手社員で、基本は説明会のお手伝いをお願いするくらいです。

 ――会社説明会では、何か工夫していますか。
 比較的オーソドックスなほうではないかと思います。今のところプレエントリー数はある程度安定的に確保できていますので、プレエントリー前に会社説明会は実施していません。

■インターンシップ
 ――インターンシップは実施しましたか。
 夏に就業体験型のインターンを2週間やり、6人の学生さんに参加していただきました。百貨店ビジネスの一連の流れを学んでほしいという想いから、売場で1週間販売を経験し、その後その商品を仕入れた部門で1週間バイヤーのアシスタントを経験するというプログラムでした。店頭での販売だけでなく、メーカーとの商談や展示会に参加したりと、とても盛りだくさんの2週間だったので、参加者は相当たいへんだったと思います。しかし終わってから聞くと「とても有意義だった」「百貨店の仕事の幅と奥行きが理解できた」など、いい話しか聞きませんでした(笑)。

 ――応募が殺到したのでは?
 相当ありまして・・・結局、書類選考と面接を2回しました。入社するより難しかったかもしれません(笑)。

 ――インターン経験者から内定者は出ましたか。
 もちろん実績はありますが、そこはあえてあまり期待していません。むしろ口コミで「阪急阪神百貨店の仕事は面白かった」という評判が広がり、採用にプラスになってほしいなと思っています。

 ――インターン経験者への優遇は?
 そういうしくみにはなっていないですね。採用直結という会社もあるようですが、うちはそこまではしていません。