人事のホンネ

アステラス製薬株式会社

2017シーズン 【第8回 アステラス製薬】
人の心に残る仕事! 「個の力」「グループでの力」両方必要

営業本部人材開発部人材企画グループ 船井俊秀(ふない・としひで)さん

2016年03月10日

■採用実績
 ――2016年春入社の採用人数と男女比、文理比を教えてください。
 トータルで約100人、そのうち約半分が営業職(MR=Medical Representative、医薬情報担当者)で、あとの技術系は創薬研究職、技術研究職、開発職の三つに大別されます。男女比、文理比ともほぼ半々で、理系の半分は薬学部、残りが農学部など他の理系学部です。人数は近年、ほぼ横ばいです。

 ――MRは男性が多い印象があったので男女半々は意外ですね。社員全体の男女比は?
 過去の歴史があるので圧倒的に男性が多く、女性は10%強。20代は3分の1が女性で、ここ数年の新入社員は半々くらいになってきました。ただ、女性を意図的に増やしているわけではありません。

 ――学生に男女差は感じますか。
 女性は出産などライフイベントが多いせいか「この年齢にこうなっているためには、今年はこれくらいやらなければいけない」としっかり考えている学生が多く、面接でも話がわかりやすい人が多い印象があります。

 ――MRの適性に男女差はありますか。
 さほどありません。最近は多くの女性MRが活躍しています。営業現場でいきいきと働いている女性も多く、適性に差は無いと考えています。

 ――応募資格は?
 文系はMRのみの募集です。技術系の職種は専門分野で何を学んできたかが問われます。総務や人事などのコーポレート部門については、新卒は採用していません。MRは学士も修士も対象ですが、技術系は理系修士以上です。

 ――「DISC」という別の採用ルートがあるそうですね。
 Drug discovery Innovator Selection Campの略で、創薬研究職採用のプログラムです。創薬にはイノベーションが必須です。多種多様な価値観を共有し、常に新しい価値を創造することができる人材、そして、専門性、経験、知識、情報、人的ネットワークなど、あらゆるリソースを活用して課題を解決できる力を持っている人材を、私たちは必要としています。また私たちは、採用活動とは一方的な選考の場ではなく、お互いに一緒に仕事をしたいと思える相手か、双方が対等に選び合う場であると考えます。ですから、一般的な面接ではなく、研究所の近くでキャンプのように生活してもらいながら選考を実施するスタイルを取っています。参加者同士や当社の研究者とのディスカッションを重ね、テレビの「ウルトラクイズ」のように脱落者が毎日出る。5日間のプログラムを経て最後に残った人に内定を出します。世界中から応募が来るので、留学先のアメリカからはるばる参加したのに、その日に脱落することもあります。

 ――技術系の採用に推薦制度はありますか。
 ありません。すべて自由応募です。

MRのいい面も悪い面も理解を HPそのままのES…そこに君の言葉はないのか!

■エントリー数とスケジュール
 ――2016年卒採用のMRのプレエントリーとエントリーの数は?
 MRのプレエントリーは約15000人、本エントリーは3分の1の5000人くらいです。この数年横ばいですが、2015年は3月の広報解禁から8月選考開始まで間が空いたため、面接に来ない学生が非常に多かった。エントリーシート(ES)の提出は多かったが、7月後半に面接の受け付けを始めると申し込みはその半分程度でした。他で内定を得てそこに行ったということなのでしょう。

 ――全体の採用スケジュールは?
 経団連の指針通り、2015年3月に企業広報が解禁されてから各大学の学内セミナーを回り、自社の会社説明会は4月にスタート。4、5、6月と会社説明会をして8月1日に面接を始めました。お盆前までのほぼ1週間で内々定を出し、ぎゅっと凝縮して終わらせました。

 ――他の製薬会社は指針を守ったのでしょうか。
 大手の国内企業は守っていたと思います。

 ――説明会はどのような内容ですか。
 従来は第1部で会社の紹介、第2部で現場社員の座談会という2部形式を1日でやっていたのですが、2016年卒採用は第1部を4月、第2部を5月と2日間に分けて開催しました。間が空いたので途中で選考意欲を失わないでほしいという狙いでしたが、「会社への理解が深まった」という学生もいれば、「何度も同じ会社の説明会に足を運ぶのは非効率的だ」という学生もいて賛否両論だったようです。

 ――説明会の規模は?
 4、5月は1回50人程度で、東京と大阪で12~13回開催しました。エントリーが遅かった人向けの説明会は1日完結で、6月に100人規模を8回実施しました。ただ6月は当日のドタキャンが例年以上にあり、出席率は7割くらい。6月後半になると半分来ればいいほうでしたね。説明会の受け付けを始めるとすぐ満席になるのに来ない人が多かった。これまでなかったことです。

 ――リクルーターは使っていますか。
 現場社員に負担をかけるので使っていません。

■ES
 ――ESに「あなたが明日を変えた経験」と、その目標設定、成果を聞く質問がありますね。
 アステラスのコミュニケーションスローガンが「明日は変えられる。」なので、それにかけています。学生時代に何を頑張ったかをアステラス風に聞いています。他社のESを使い回したり、WEBにある模範解答のようなものをコピペしたりしないよう、こういう質問にしました。学生時代にやったことを思い出して深掘りしてくれればいいと思っています。

 ――「あなたはどのようなMRになりたいですか、一言で表して下さい」という質問の狙いは?
 業界・企業研究をして、MRという仕事をある程度知っていないと書けない内容にしています。これもコピペできないよう、何らかの言葉を頭からひねり出さなければいけない質問にしました。MRという仕事のいいところも大変な面も理解しているか、ミスマッチがないかを見る趣旨なので、それさえ理解していればOKです。

 ――船井さんなら、どう答えますか。
 「相手の心に残る仕事をしたい」ですかね。MRは患者さんには直接相対することはできませんが、実際に患者さんを治療される医師と同じく、患者さんのことを第一に考えた治療提案をしていくことで、薬物治療のパートナーとして医師の心に残る、という仕事をしていきたいと思っています。学生には「地図には残らないけど、人の心に残る仕事が出来るよ」という話をします。

 ――「アステラス製薬でなければならない理由」も聞いていますね。
 各社で企業戦略が違うので、その違いを理解しているかを知りたいという狙いがあります。たとえば、当社はいま一般用医薬品はやらず医療用医薬品に特化しているので、そこを理解しているかどうかで文言に色が出てくると思います。「これなら同業他社でもいいんじゃないの」と思う志望動機もある。それで不可にはしませんが、企業理解が浅いとミスマッチにつながるのではないか、と心配になります。

 ――印象深い内容のESは?
 200点だったTOEICのスコアが、オーストラリアに渡って皿洗いを半年間して、フィリピンを回って帰国したら900点に上がったという学生がいましたね。去年入社した男子です。

 ――MRに英語力は必要ですか。
 英語論文を読む可能性があるので、読む能力はあったほうが仕事の幅が広がります。

 ――ありがちな志望動機は?
 「病気で苦しんでいる人の役に立ちたい」という社会貢献性の高さをあげる人が多いですね。自分の経験のほか、家族や友人の病気がきっかけになったとか……。文系はそういう原体験をもとに書く人が多いですね。よく見る内容であっても自分の言葉でちゃんと書けていれば全く問題ありません。何らかの経験に基づいた言葉だと説得力が出てきますね。
 一方でホームページ(HP)に出てくる言葉をただ並べただけのESは響きません。「アステラスは新薬に特化していて~」とか、HPに書いてあることそのまま。「そこに君の言葉はないのか!」と思います。