
■面接
――面接はどんな形式ですか。
グループディスカッション(GD)の後、個人面接2回です。
GDは1テーブル最大7人程度で時間は約30分。テーマは内緒ですが、あえて学生間の意見がぶつかる仕掛けをしていて、最終的には一つの結論にまとめてもらいます。自分の意見を押すときに論理的にしっかり主張できるか。チームで物事を進めるときには「全体最適」を考えてどこかで折れなければならない。その駆け引きができるか。「個の力」と「グループでの力」を両方発揮できる人かどうかを見ます。
――それがMRに必要な能力?
MRは、自分の力で物事を解決したり意見を通したりする力と、組織を巻き込んで成果を出す力と、両方が求められる仕事で、どちらかだけではダメなんです。両方持っているかどうかを見極めるために試行錯誤しています。
――求める学生のタイプは?
どんなタイプでもいいんです。営業だからしゃべりが上手ならいいか、というと必ずしもそうでもない。人としゃべるのはうまくないけど勉強がすごくできるタイプでもいい。勉強はあまりせず部活で日本一を目指していて根性は誰にも負けないタイプも、アルバイトで頑張って店の赤字を黒字に変えた人も、何も頑張ってないけど自分がひと声かければ友だち500人がノート貸してくれる人もいい。何かそういう強みを持っている人がいいですね。
ただ、似たタイプばかりにならないようにしています。私たちは環境の変化を大きく受ける業界です。たとえばかつてのような医師への接待ができなくなったとき、接待がうまい人だけを集めた組織では対応できません。どんな環境変化が起こっても対応できる強い組織を作るためには様々なタイプの人を集めることが大事。「こういうタイプ」というよりバリエーションを持たせることを意識しています。
――7人中何人くらい通過しますか。
一テーブル何人という枠はなく、7人全員通過することもあれば全員ダメということもあります。ディスカッションをせず安易に多数決で決めたり、対立を嫌がって建設的なディスカッションを避けたりするグループは全員ダメということもあります。あえて意見がぶつかるようにしているのに、学生が素を見せてくれないと通過は難しいですね。
――1次面接は?
1対1で30分間。ここでは業界への理解度や志望度よりも、過去の経験を深掘りしてその人のコンピテンシー(行動特性)が確認できればいい。過去の成功体験を聞いて、それを会社で再現できるかどうかを確認したりします。基本は大学時代の体験ですが、高校までさかのぼって聞くこともあります。
――最終面接は?
営業本部の部門長、あるいは現場を統括している支店長が対応します。部門長が2人でジャッジ役、人事の社員が横につき、学生から見れば1対3の形式で30分です。この段階になると、業界への理解度、志望度も見ますし、物事をわかりやすく論理的に相手に伝えられるかどうかも見ます。
――薬の知識は必要ですか。
知識は入社してから身につけるので全く要りません。ただ、しっかり勉強しなければいけない業界だということは理解してほしい。医学や医療は日進月歩なので日々勉強し続けないとついて行けません。だから「勉強を継続できる習慣、体力」は大事ですね。「1日30分以上勉強したことがない」というような学生は当社には合わないと思います。
――すると大学の成績は大事ですか。
最終面接に成績表を持ってきてもらいます。すごくいい必要はありませんが、あまりにギリギリの成績ばかりだと、社会に出て「やりたいこと」だけじゃなく「やらなければいけないこと」をする局面で力を出せないんだろうな、という見方になります。
――アルバイトもサークルもせず、ひたすら勉強を頑張ってきたという学生はどう評価しますか。
いいと思います。学生時代に一番力を入れたことは研究活動だったという学生はいますし、その情熱や思いを自分で語ってもらえれば全く問題ありません。
■新聞
――面接で「気になるニュース」などを聞くことはありますか。
定型で決めてはいませんが、面接官によっては「今日の新聞記事で一番気になるニュースは?」と聞く人もいます。「読んでいません」という答えが多いですが。私も、最近気になったニュースは聞きますね。学生の興味のありどころがわかるし、そこから話を広げることもできるので。MRは情報提供が大事ですが情報収集も大事ですから、その素養もこの質問である程度わかります。
――なぜ情報収集力が必要なんですか。
医師に会っていきなり薬のことを話し始めるわけではなく、まずニュースの話題から始めることはよくあるし、知識の幅が人間の幅を広げるので間口は広い方がいい。どんな話を振られてもちょっとくらい話を合わせることが必要ですから、新聞を読むのは大事ですね。
――医師とはどんな話をするんですか。
その医師の興味に合わせて、株が好きな医師とは株の、野球が好きな方とは野球の、お酒好きな方にはお酒の話をします。「鉄板」はスポーツ、あとは子どもの受験情報などですね。
■インターン
――インターンシップは実施していますか。
MRは実施しています。2015年は夏に1回、冬は12月末からスタートし、春は2月から、それぞれ必ず5日以上はやります。1回40人程度で計6回です。応募は多いですが本選考ほどではなく、多い時は20倍程度の倍率です。書類と適性検査を通過した人を面接に呼んで、最終的な参加者を決定します。。
■MRという仕事
――MRってどんな仕事ですか。
日々、医師をはじめとする医療関係者を訪問するのが仕事の基本です。医師は患者さんを診察して治療しますが、運動療法や理学療法など様々な治療方法がある中で、薬を使う「薬物治療」が選択されたら我々の出番。患者さんを健康にするためにはどういう薬を使ったらいいかを医師とともに考えて提案するのが主な仕事です。ただ、昔のように「この薬がいいですよ」と売り込むだけではやっていけません。患者さんごとに細かい個別対応をしないと通用しない時代になりました。
――いつごろ変わったんですか。
医師の専門性に合わせて仕事をするようになって10年くらい経ちますが、患者さんごとに切り口を考える流れになったのはここ数年のことです。インターネットの発達で薬の情報だけなら誰でも取れるようになり、忙しい医師に面会してもらうには、個別の患者さんにカスタマイズした情報を提供することが重要になってきました。仕事の質が変わり、昔より難度が上がりました。
――MR1人が担当する施設数は?
開業医なら1人で200施設くらい担当しますが、全てまんべんなく回るのは無理ですから、その2割の施設を重点的に回るイメージです。
――治療法が難しい患者さんだと、社に持ち帰って検討する?
そうです。患者さん一人ひとりについて医師とディスカッションするのが大事ですが、よほど医師に信頼されないとできません。コンサルタントとして中立な情報提供も求められるので、場合によっては他社の薬も紹介します。そこが他の商品の営業とは違うところかもしれません。もちろん「タイプの違うこういう患者さんが来られたら当社の薬を使ってください」とは言いますが、自社の薬を売るためだけに営業しているMRより、本当に患者のことを考えて提案するMRのほうが信頼されます。他社の薬を薦めるのも、それが「信頼」という目に見えない貯金につながると思うからです。
――医師に時間を取ってもらうだけでも大変なんでしょうね。
1人の医師に対して定期的に面会しているMRが50~60人。そのうち医師がパートナーと認めるのは3~4人だけと言われています。そこに選ばれないと仕事が成立しない。だから、「エッジ」を立てないと通用しない。普通のことを普通にしていたら埋もれてしまうので、たとえば感染症ならこのMR、糖尿病で困ったらこのMRに聞いてみようと思ってもらわなければなりません。開業医の場合は、医療経営に困ったらこのMR、出張先のグルメに詳しいとか、とにかく急ぎの用件に対応してくれるとか、他のMRから頭ひとつ飛び抜けたものが必要。困ったときに顔をパッと浮かべてもらう存在になることが大事です。
――パートナーになれた医師のところには毎週顔を出す?
その優先順位も自分でつけます。開業医なら一番多い頻度で1週間に1回、あとは2週に1回とか1カ月に1回とか、自分で濃淡をつけます。大学病院なら毎日顔を出します。
会える時間は開業医なら5~10分。いろいろ話を聞いて、次の訪問時に改めて提案を持っていく、という感じです。
――MRには一匹狼のイメージがありますが、チームで働くことはありますか。
市町村単位の「医療圏」をチームで担当し、連携して対応することもあります。ただ、医師との関係は1対1が基本です。