人事のホンネ

株式会社ファーストリテイリング

2017シーズン 【第9回 ファーストリテイリング】
世界の80億人に商品届けたい 「チームをまとめる力」ほしい

人事部採用部長 中西一統(なかにし・かずのり)さん

2016年03月14日

■採用人数
 ――2016年度に入社予定の新卒採用数を教えてください。
 ファーストリテイリングは「ユニクロ」「GU」「リンク・セオリー・ジャパン」という3大ブランド別に採用しています。数は少ないですが、もう一つ「コントワー・デ・コトニエ」というブランドもあり、グループ全体だと1000人くらいです。「地域正社員」は高卒も採用していますし、短大卒や専門学校卒もいますが、大卒がざっと9割弱です。通年採用をしているので、春入社に限らず秋に入社してくる人もいます。

 ――男女比は?
 だいたい1対2ですね。ブランドによって差はありますが、リンク・セオリー・ジャパンやコントワー・デ・コトニエは女性に強いブランドですし、GUも女性向けファッションという認識が強いようで、女性の比率がより高いですね。

 ――女性を多く採ろうという意識があるのですか。
 そのようなことはありません。お客様も男女比半々なので、社員も半々がいいと思っていますが、応募者も採用数も女性が多くなっています。

■採用方法と職種
 ――採用職種を教えてください。
 当社の採用ホームページ(HP)には新卒も中途も店舗スタッフ採用も併記していて職種もたくさんあります。でも、新卒採用は将来的には国内外のさまざまな店舗や本部で働きたいという「グローバルリーダー候補」と、自分の住んでいるエリアから通える店舗でキャリアを積んでいきたい人向けの「地域正社員」の二つだけです。
 中途採用は職種別ですが、新卒採用はいわゆる総合職です。どの仕事にも就くチャンスがあって、自分が何をやりたいかを働きながら会社の中で探せばいい。

 ――大学1年でも採用試験を受けられるんでしたね?
 「グローバルリーダー候補」は通年採用をしていて、大学1年生でも2年生でも、ファーストリテイリングで働きたいと思ったタイミングでいつでも選考が受けられる仕組みです。
 最初に入る会社は4ブランドから選んでもらいます。ファーストリテイリンググループとして基本的には同じ処遇ですが、「ユニクロでグローバルリーダー」「ユニクロで地域正社員」「GUでグローバルリーダー」「GUで地域正社員」「リンク・セオリー・ジャパンで地域正社員」などという形で採用しています。採用活動の途中まではグループ一体でやっていますが、最終的な内定はブランドごとに出します。

 ――ブランドごとの違いは?
 GUはユニクロと同じようなビジネス形態ですが、いま置かれている状況は違う。ユニクロに比べると会社は小さいし仕組みも出来上がっていない部分がありますが、これから海外に積極的に出て行くフェーズです。そういうところに飛び込みたい人はGUを自主的に選んでほしい。一方、ユニクロはある程度仕組みが出来上がっていて、中国や韓国のように海外進出がかなり進んでいる前例もあるのでGUとは雰囲気が違います。
企業としてのフェーズが違うので、学生にはそれを把握して自分で選んでもらいます。入社後、経営幹部に近づいてくると、一緒の扱いになりますが。

 ――ブランド間の人事交流や異動はありますか。
 我々から積極的に異動させることはありませんが、社内公募が半年に1回あって積極的に使われています。社内で今空いているポジション、人がほしいポジションをブランド横断で全社員に公開して応募する仕組みで、店舗業務、店長から本部業務まであります。ユニクロで働いているけれどセオリーやコントワー・デ・コトニエに興味があるからと異動する人、GUで働いているけれどファーストリテイリンググループの人事がやりたいと応募する人もいます。

 ――4ブランド以外にファーストリテイリングの管理部門の採用もあるのですか。
 そこは新卒採用はしていません。基本的には「グローバルリーダー候補」が将来の幹部候補なので本部も含めた重責を担ってもらいます。ただ、新卒社員にはまず私たちの強みである店舗業務をわかってほしいので、店舗に近い仕事から入ってもらいます。新卒社員育成のスピードアップを今考えているので、今後変わるかもしれませんが。
 店舗と本部のどちらが偉いということはありません。早い人だと3年程度で本部に異動してきます。一方で店長として海外に赴任する人もいて、3~4年目で自分のやりたいキャリアに向かって異動するケースが多いと思います。

 ――採用人数のブランド別比率は?
 公開していませんが、一番多いのはユニクロです。国内の店舗数はGUが300でユニクロは850。社長の柳井も言うように、ユニクロは日本ではもう店舗を増やすのではなく育てた人材を海外に送るフェーズですが、GUはまだ国内に店を出す余地があるので結構採用しています。

全学年対象の通年採用は学業重視 就職意識したときに受けて

■通年採用
 ――全学年対象の選考はいつから始めたのですか。
 2013年春入社からです。1~3年生で内定を取って入社した社員の数が通算で100人を超えたところです。

 ――入社までに気が変わる学生もいるのでは?
 内定後の辞退者はあまりいません。我々の仕事や商品が好きで会社に魅力を感じて来る人が多いし、内定者には繁忙期のアルバイトを頼むなど、会社のことをより知ってもらう機会が増えますから。

 ――なぜ通年採用を始めたのですか。
 就職したいタイミング、就社を考えるタイミング、将来のことを考えるタイミングって人によって絶対違いますよね。それぞれのタイミングに合わせて情報を提供したいし、決めたいと思ったタイミングで決めたほうがいいと思うからです。

 ――大学を卒業できなかったら?
 きちんと卒業してほしいのですが、人のパフォーマンスは出身大学で決まるものではないので、内定後に卒業できなくても理由によっては内定は取り消しません。「ただ大学が嫌になったから」「単位が足りなかったから」では困りますが、ほとんどが卒業して入社します。

 ――評判はどうですか。
 自分のタイミングで就職を決められて4年生で学業や部活に専念できるので、受けた学生の評判はいいですよ。ただ、世間一般的には「経団連指針」を逸脱していると見られがちで、学業重視の理念を無視しているという批判も受けます。ただ我々には、理念を尊重しているからこそ通年採用をしているという思いがあります。2015年の就活は多くの会社が8月で選考を終えたと思いますが、我々は11~12月までやりました。学業に一番影響のない時期を選んで来てほしいし、指針の理念は尊重しているつもりですが、理解していただくのが難しいこともあります。

 ――指針についてはどう思いますか。
 理念は正しいと思っています。そもそも学生はちゃんと勉強すべきです。また、日本独特と言われる新卒一括採用だからこそ今の日本があるし、海外と比べると大学生の就職率は非常に高い。私はカナダの採用プロジェクトにも関与していますが、カナダでは大学生が卒業後すぐ就職できるほうがまれです。みんな海外旅行などで自分探しをして、なんとか中途採用の枠に潜り込もうとするので大変です。日本の学生は恵まれているし、一括採用には良い点がたくさんあると思います。
 でも、仕事のことを意識しはじめるタイミングは各自バラバラのはず。意識し始めたときにいろいろ調べて就職活動するのがベストですよね。今の仕組みだと、まだ仕事について考えていない人が周りに流されて右も左もわからないまま就活したり、逆に早くから仕事のことを考えたいけれどそういう情報を提供する会社が一部のITベンチャーや外資系企業しかなくて、そういう会社に人材が流れたりもしている。そう考えると、一括採用も良いことばかりではありませんよね。

 ――各社が通年採用を始めたらどうなるでしょう?
 いつでもチャンスがあるよと言われれば、ずっと就活をしているような状況はなくなるんじゃないでしょうか。人気はあるけど低成長の会社、まだ人気はないけれど急成長している会社があって、それぞれどういう採用になるか興味があります。

 ――通年採用は柳井社長の発想ですか。
 社内で議論はありましたが、柳井は賛成でした。みんな一斉にやるシステムはおかしい、やりたいときにやるべきだという考えですね。柳井が現場にいたころはアルバイトの優秀な子に声をかけて採用してきたわけで、早くから優秀な学生を見つけて一緒に働きたいという思いもあると思います。

■スケジュール
 ――採用の流れを教えてください。
 最初に「希望塾」というイベントを開催します。柳井のスピーチから始まり、職種ごとに10くらいブースをつくって学生に回ってもらう。自社でジョブフェアをやっているイメージです。選考は一切しないし参加しなくても選考には進めます。

 ――ブースごとに仕事の説明を聞くんですか。
 2015年12月の「希望塾」ではプロジェクトごとにブースを出しました。たとえばフランスのデザイナー、ルメール氏とのコラボレーションに関わった社員が彼とどう組んで仕事を進めたのかとか、地域密着に成功している吉祥寺店の社員は何にこだわってやったのかとか、そういうことを語れる社員をブースに配置しました。本部の経営者や海外の店舗責任者とライブでつないで直接コミュニケーションできるブースも用意しました。ブースを回りながら「働くってどういうことなのか」「ファーストリテイリングで働いたらどういうことができるんだろう」と学生に感じてもらう。

 ――参加人数は?
 毎回800~1000人くらいですね。場所は本部のある東京ミッドタウンで、全部で3時間強のプログラムです。3~4カ月に1回くらい開催していて、2016年卒採用だと12月、4月、7月と開きました。

 ――応募すれば誰でも参加できる?
 人数のコントロールが必要な場合は締め切りますが、ある程度人数が増えても対応できるので可能な限り受け入れています。

 ――「希望塾」の後はどんなスケジュールでしたか。
 会社説明会をやりながら、学生が選考に進みたいと思ったタイミングで選考に進んでもらいます。1月以降は会社説明会を開きながら選考もオープンにしていきました。

 ――「希望塾」以外に会社説明会もあるのですか。
 はい、随時やっています。「希望塾」に参加した人はそのまま面接に来てもいいし、もう1回会社説明会に来てもいい。12月に会社説明会をしても学生が必ずしもそのタイミングで就活をしたいわけではありません。1、2年生もいるし広報解禁後の4~5月に来たい学生もいるので、好きなタイミングで来てくださいというふうにしていました。

 ――選考の面接を受けたくなったら学生が自分で申し込むんですか。
 そうです。当社のエントリーシート(ES)はあくまで面接の参考資料なので、面接のときに持ってきてもらいます。

同じアルバイト続けて「もっとこうしよう」と行動できる人は適性あり

■面接
 ――面接は何回?
 平均3回くらいです。2017年卒採用では、1次選考をグループディスカッションに変更しました。その後の面接は基本的に1対1でだいたい30分程度です。最終面接は役員や部長、一部リーダーなど最終面接権限を持っている社員が担当します。その手前はリーダーや活躍している社員が面接します。それぞれの面接官が、もし自分が最終面接官だったらこの人を採るかどうかという基準で判断しています。

 ――中西さんが重視する点は?
 当社は店舗でも本部でも、いろいろな人とチームになって仕事をすることが多い。店長になると30人、50人の部下ができるし、グローバルなら様々な国の人と仕事をしなければなりません。ですから、チームで一緒に仕事をすることに対しての適性、そういう仕事をやりたいかどうかを重視します。
 我々は、高い目標を掲げ、次々にクリアして成長している会社です。そういうチームに入りたいと思える人じゃないと難しい。学生には、「体育会系でいえば、うちは日本一、一部優勝、甲子園ボウル制覇を目指しているチーム。しかも世界規模で。いま下手かうまいかは置いておいて、そこを目指してやりきろうという気概を持ち努力し続けていける人じゃないとこの会社は難しい」とよく言います。どんなに優秀な人でも「ある程度結果は出したからあとは遊ぼう」という人ではダメ。自身でどんどん新しいことにチャレンジして達成していける能力も必要なので、そこも見ています。

 ――その能力はどう判断しますか。
 私は、その学生がこれまで何をしてきたかを聞くようにしています。学生時代に何をやっていたのか、なぜそれを選んだのか。日ごろの生活も含めていろいろな意思決定をするタイミングがあり、たいした理由がなかったとしても本人の選択があったはず。そこを掘り下げていけば、見えるものがあります。

 ――たとえば「大学の体育会で日本一を目指してきた」というタイプの学生は高評価になりますか。
 確かに当社にはまりやすいとは思いますが、その中で何を考えてやってきたか、どういうポジションで頑張ってきたかで異なります。冷たい言い方をすれば、周りが頑張っていたから自分も引っ張られて頑張ったというタイプは厳しい。全国優勝したチームでも、チームを引っ張るために活動した人、力が劣っていても周りに追いつくため越えるために主体的に必死で頑張った人もいれば、周りに流されてなんとなく受け身である程度の結果を出してきた人もいる。そこには大きな違いがあります。
 チームが勝つためには、練習で努力するだけではなく、情報収集などいろいろな形でのサポート、貢献がある。チームの中でどう主体的に日本一に向けて貢献してきたかが聞けると判断しやすくなります。

 ――引っ張るタイプがほしい?
 リーダーシップのスタイルは様々ですが、グローバルリーダーとして我々の会社を担う人材は、チーム全員の力を引き出し、同じ方向へ一緒に走っていくムードを作れる人です。チームの先頭にいるか真ん中にいるかにかかわらず、その人がいることでチーム全体が同じ方向を向き物事が進んでいく状況を作れる人がいい。だから、引っ張るという表現が正しいかどうかはわかりませんが、フォロワーよりは何かをイニシエイト(始める、着手する)できる人のほうがいいですね。我々はリーダーシップという言葉よりも「チームをまとめる力」という言葉をよく使います。

 ――応募学生の典型的なタイプは?
 いろいろな学生がいますが、何らかの分野にこだわりを持ってやってきた学生は多いですね。アルバイトなら、同じ店や仕事で何年もしっかりやってきた学生が多い。

 ――アルバイトについて話す学生は多いですよね。
 極論を言えば、アルバイトは言われたことをやるだけ、あるいは何もしないでそこにいるだけでもお金がもらえる仕事です。しかし、その仕事を重ねていけば何らかの気づきがある。売上や商品の売れ筋がわかってきて「もっとこうしよう」と提案したり、この部分がうまくいっていないから何とかしようと提案して業務改善につなげたりする人もいる。何年かアルバイトを続けると、自分がそこで楽しく働くために、あるいはチームの目標を達成するために行動すべきことが出てくるはず。そういう意欲がある人、実際にやってきた人は、適性がある可能性が高いですね。

■外国人
 ――外国人の新卒採用数は?
 毎年、2ケタ台の後半くらいは採っています。日本人留学生は海外の就職イベントなどに出て採用しています。

 ――日本語ができることは採用の条件ですか。
 日本で採用する場合はどのポジションにいても日本のお客様を相手にしなければならないので、条件になります。店員に声をかけても日本語が通じないと、お客様の満足度にかかわりますので。店舗で外国人スタッフは当たり前になっていますが、お客様がお困りなのか、ご不満をお持ちなのか、単に話しかけていらっしゃるだけなのかくらいは理解できないとお客様対応に支障が出ますから。

 ――海外ではそれぞれ現地で採用するのですか。
 各国のローカルの会社はそれぞれ採用部隊を持っていて、韓国なら韓国で、中国なら中国で新卒採用をしています。海外のローカルで採用されるとまずその国で基礎を学んでもらいますが、ほかの国に赴任したりグループの経営幹部に入ったりするケースも増えると思います。いまグループには執行役員以上が40人ほどいますが、全員が日本ローカルの採用ではなく、海外の現地採用も何人かいます。日本で採用された中国人社員が中国に戻って現地のトップに就く、というケースもあります。

 ――英語力は採用時に重視しますか。
 社内公用語は英語ですが、採用では全く見ていません。大切なのは、現時点での英語力よりチームでプロジェクトをやるときのコミュニケーション能力。英語はそのツールです。これまではたまたま英語を使う必要がなかったから使えないが、英語を使わなければならなくなれば覚えられるという人は実はたくさんいるので、入社時の英語力は重視しません。
 新しい国で店舗を立ち上げるのに必要なのは英語だけではないケースもある。いまカナダのトロントで新店立ち上げを進めていますが、ここは英語とフランス語の両方が必要です。両方できる人はそれほどいないと思いますが、現地スタッフとしっかりコミュニケーションをとって頑張ろうと思う人はその仕事が決まった時点で準備を始めるし、現地に行ったら覚える。
 一方で、昔より大学で英語を使う機会は増えているし、留学経験者も増えて外国語を使う機会は圧倒的に多くなっています。そういう意味では、何かの言葉を使えるといいとは思います。

中高大の経験を聞く 「モノづくりへのこだわりとおもてなし」日本の強みが競争力の源泉

■コミュニケーションシート
 ――エントリーシート(ES)はどんな項目ですか。
 正確にはエントリーシートではなく、「コミュニケーションシート」というものを使用しています。あくまで面接の基礎資料なので、内容はシンプルで基礎情報だけです。名前と住所、連絡先、出身校、資格、語学、留学経験の有無、言語スキル、所属クラブやサークル、ゼミ……。趣味、アルバイト経験にインターンシップの経験も聞きます。

 ――TOEICの点数を書く欄はありますか。
 「資格・語学」欄にTOEICの点数を書く人が多いですが、重視はしていません。日本語が母国語レベルとか英語がビジネスレベルといったことも書いてもらいます。
 学生時代に何をやってきたかは、中学、高校、大学に分けて聞きます。中高大とずっとサッカーしていたとなるとそこから掘り下げたくなるので、面接で質問するネタを探すためにこういう欄を設けています。
 字数はそれぞれ20~30字くらい。エピソードは面接で聞ければいいので何百字も書かせるような項目はありません。あくまで会話のきっかけづくりです。

 ――では、「アルバイト経験」の欄には店などと期間だけ書けばいいのですか。
 そうですね。人にもよりますが、会社の名前もなくて家庭教師とか塾講師をどれくらいとか、情報としてはその程度でいい。「私はこれだけの人数に教えて、これだけの成果をあげた」といろいろ書きたいことがあるでしょうが、そこは面接で話してもらいます。

 ――書類選考はしないのですね?
 はい。WEBテストは後でやるので、申し込んだ全員に面接を受けてもらいます。

 ――応募者数は?
 公表していませんが、数千人にお会いしています。2017年卒採用は、すでに「希望塾」をやって、2016年1月には面接を始め、2月に内定を出し始めました。

 ――コミュニケーションシートに志望動機欄がありません。
 1次面接や2次面接では志望動機が固まっていない学生も多いので、コミュニケーションシートでは聞きません。もちろん当社を就職先として選ぶ段階では何らかのものを持っていてほしいですが。会社を知ってもらうために、選考の途中で店舗に必ず行ってもらうフローを入れています。ユニクロは「店舗インターン」、GUは「店舗訪問」と呼んでいます。

 ――店舗へは自分で連絡を取って行くのですか。
 ユニクロの場合、事前予約で交通整理します。店舗見学できる店をたくさん出して、自分が通えそうな店を選んでもらいます。店舗に1日、その直後に本部でラップアップ(振り返り、総括)してもらう計2日間のスケジュールです。初日は店舗で店長と話をして仕事ぶりを見てもらい、必要ならスタッフとも話します。ほとんどの学生がお客様としてしかユニクロに行っていないので、店舗のこだわりや店長の具体的な仕事内容は全然知らない。まずはそれを知ってもらいます。2日目は何を感じたかを話してもらい、本部の仕事との関わりなど追加の情報を提供します。基本は質問会のような感じですね。

 ――何らかの評価もするのですか。
 基本的には学生に当社のことを知ってもらう機会なので、これで合否を出すことはしていません。ただ、たとえばこの学生は当社にすごく興味があるとか、あまり興味がないというのはわかるので、学生がこんなことをしていたという記録は残して参考にします。

■社風
 ――ファーストリテイリングって、どんな会社ですか。
 「ファーストリテイリングです」というのが答えです(笑)。
 本気で日本の50年、100年先を考えて世界をリードしていける、またはそういうポテンシャルのある商品を扱っている企業はそう多くないと思いますが、その一つが当社だと思います。
 かつ日本の強みが会社の競争力の源泉になっている希なケースでもあります。海外から見た日本のいいところは、一つはコストを抑えて丁寧に良いものをつくるモノづくりへのこだわり。もう一つはホスピタリティー、過剰なサービスじゃなくかゆいところに手が届く、人を気遣う思いやりのあるおもてなしです。我々はモノづくりとお客様へのサービスで成り立っている商売なので、日本文化に根ざしたこの二つの強みがそのままビジネスの強みになっている。すごく競争力のあるユニークな企業体だと思っています。
 また商品が衣食住に関わるものなので、お客様は地球上にいくらでも存在します。我々がリーチできていないお客様が何十億人といるので、成長ポテンシャルがヤマほどある。繊維産業は衰退していると思われがちですが、当社が進出している国を世界の白地図に塗っていくと結構真っ白なんです。まだまだ伸びしろがある稀有な存在だと思っています。

 ――どんな社員が多いですか。
 チームで一緒にやろうという志向の人が多い。私もこの会社に来たときにびっくりしたんですが、これだけみんなが会社のやっていること、将来性を信じて仕事をしている会社はそうないと思いますね。現役の店長に「この会社でどんなことができますか」と尋ねると、みんな自分の夢と同時にファーストリテイリングとしてグローバルで一番になる、もっといろんな国に出て行くという夢を語ってくれる。ここまで徹底されている会社はなかなかない。社員全員が会社のやりたいこと、チームのやりたいことを信じていて、そこに向かって努力している人たちの集団です。

 ――そのファーストリテイリングで働く面白さと厳しさは?
 私たちは世界一を目指していて、世界80億人全員にモノを届けるところまでやりきろうと思っています。日本一でも大変なのに、世界一になろうとすれば並大抵の努力ではだめですから、厳しさはあります。去年よりちょっと数字が上がったから良かったね、とは絶対ならない。その数字は世界の中ではどうなのか、世界一になる目標の中でどういう位置づけなのか、常に高い基準での判断を求められ続ける大変さはあります。ただ慣れていくと、その人の能力、社内外での価値がすごく高くなる。特に若いうちにそういう環境に慣れたほうがいいと思います。

 ――学生から「仕事がきついのでは」と聞かれませんか。
 精神的には大変かもしれませんが、労働時間的には全然そんなことはないですね。店舗はシフト勤務で、東京本部の勤務時間は午前7時から午後4時。私はだいたい夕方4時台にオフィスを出て5時には家に帰って家族と過ごして、9時半には寝ています(笑)。
■中西さんの就活
 ――中西さんの就活を振り返ってください。
 今40歳で、1社目はP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)で10年間人事を担当し、それからグリー(大手ソーシャルゲーム会社)で人事の責任者をして、当社に移って2年目です。
 就活をしたのは1998年。グローバルに関わる仕事に就かないとまずいという意識があったのに英語はできず、それでもグローバル関連の仕事ができる会社はないかと探してP&Gを見つけました。メーカー志望だったのですが、当時は大半のメーカーの海外進出は終わっていて、英語ができない人にそういう仕事は回ってこないことがわかった。ところが化学系はグローバル進出はこれからという段階で、英語ができない先輩が海外に行っていることも知りP&Gを受けました。商品も好きだったし、良いものをつくって消費者に届ける商売も好きで、ここなら自分を磨けるだろうと。受けるときに職種を選べと言われ、教育学部だったのでなんとなく人事を選びました。きちんとした仕組みの会社で仕事を勉強させてもらったし、日本にアジアのヘッドクオーターがあったため様々な経験ができました。

 ――その後は?
 次の何十年を担う日本企業をつくることに貢献したいと考えてインターネット分野に注目し、プラットフォーム事業を持っていたグリーなら世界で戦えると考えて転職しました。実際、世界進出もしたし良かったと思います。その次はまたモノづくりに携わりたい、最終商品を自信を持って人に勧められる会社に移りたいと考え、今の会社を選びました。

 ――印象に残っている仕事は?
 最初の半年はGUの人事責任者をしました。GUのように思いっきり伸びている会社の仕事は大変ですが、様々なチャレンジができるし、成長に向かって人と仕事していくのはめちゃくちゃ楽しかったですね。

みなさんに一言!

 私自身の就活を振り返って思うことがあります。最初に入社したP&Gは今では誰でも行きたい企業ですから、「人気企業だから行ったんでしょう」と思われるかもしれませんが、そうではなかった。外資系企業を希望したわけではないし、当時父親に「ギャンブルと名前のつく会社に行くとは何事だ」と言われたくらいでしたから(笑)。
 就活で大切なのは、会社の成長と自分の成長、自分がなりたい姿を考えて、そのためのフィールドやチャレンジできるチャンスがあるかどうかを見ることです。本を出したいなら書くためのネタ集めができるか、文章力が身につくところに身を置かなければ近づけない。グローバルに活躍したいなら、世界とつながっているところに行かないと実現しません。つながっていてもソニーや松下電器(現パナソニック)を選んでいたら、私は今ごろ海外関連の仕事には就けていなかったでしょう。P&Gは私にとってそういう会社だと思ったからこそ就職を決めました。
 我々の産業も含め、今後思いっきり変化していきます。みなさんは、これまでではなくこれからを見て、自分がなりたい姿に近付くためのチャンスを将来得られる会社かどうか、しっかり見極めてください。

株式会社ファーストリテイリング

【アパレル・ファッション】

 ファーストリテイリングは企画、生産、販売までを一貫して行うSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)のビジネスモデルにより、ユニクロ、ジーユー、セオリーなど複数のブランドを世界中で展開しています。中核事業のユニクロは1984年広島市に1号店を出店以降、高品質でリーズナブルな価格、ベーシックなカジュアルウエアのブランドとして、17の国と地域に約1,700店舗を出店しています。ファーストリテイリングは、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」を企業理念に掲げ、世界中のあらゆる人々の生活を豊かにする服とサービスを提供し、世界ナンバーワンのアパレル企業になることを目指しています。