人事のホンネ

株式会社オリエンタルランド

2016シーズン 【第3回 オリエンタルランド】
「ディズニー好き」だけではNG! やり抜く信念と広い視野を

オリエンタルランド人事本部人事一部 採用教育グループマネージャー 横山政司(よこやま・まさし)さん

2014年10月01日

■採用実績と職種
 ――2014年春の新入社員の数を教えてください。
 職種が大きく三つに分かれています。総合職は31人。パーク内施設のメンテナンスや、新しい施設の建設、改修工事を担当する技術職が6人、それ以外の専門スキルをもった職種が2人で、新卒採用は全部で39人でした。男性19人、女性20人でほぼ半々です。

 ――総合職で入社すると、どんなキャリアを積むのでしょう?
 新卒で入ると、最初は仕事を覚えてもらうため、全員キャスト(パークで働くアルバイト)と一緒にパークのオペレーション(現場での運営)をします。そこで我々の収益の源泉は何なのか、仕事を通じてしっかり理解してもらう。キャストは二つのパークで1万8000人くらい。彼らを統括する「スーパーバイザー」という役割まで担当してもらいます。それが一人前にできるようになったところで、総合職の社員は現場のマネジメントでキャリアアップする者や、私のように管理や企画など別部門に行く者などに分かれていきます。

 ――技術職以外の専門職はどんな仕事ですか。
 総合職と技術職は毎年必ず採用しますが、それ以外の専門職は各部門のニーズに応じて採用します。2014年に入社した2人は、コスチュームに関する専門職。コスチュームのデザインに基づき材質や生地を決めて形にする仕事と、「イッツ・ア・スモールワールド」などアトラクションの人形のコスチュームをつくったりメンテナンスしたりする仕事で募集し、それぞれ服飾系の学生を採りました。

 ――2015年新卒採用の現状を教えてください。
 内々定者は全体で56人。うち総合職41人、技術職8人、その他専門職7人です。男性は30人で女性が26人です。昨年、東京ディズニーリゾートは30周年を迎えました。新卒は40人前後の採用が続いていましたが、オープン当初に採用した社員が定年を迎えるので、これからは採用数を少しずつ増やしていきます。

面接では素を見せて 小学生時代から掘り下げて聞く

■エントリーシート
 ――エントリー数を教えてください。
 独り歩きするので数字は出していませんが、プレエントリーは万単位、本エントリーは数千の単位です。ここ数年あまり変わりません。

 ――来園回数が多い方が有利ですか?
 「東京ディズニーリゾートに行ったことがない」という人の採用もゼロではありません。「今まで行ったことはなかったが、会社に興味をもったのでエントリーしてから行きました」とか「最近初めて行きました」という人も中にはいる。「なぜ今まで来る機会がなかったのか」「それなのに、どうしてオリエンタルランドを志望したのか」を聞き、なるほどと思えたら良いわけです。何回も来た人じゃないと採用しないということはありません。

 ――逆に「採用面接で『ディズニーランド大好きです』と言うと落ちる」という都市伝説があるそうですね。
 学生のあいだではよく言われているようです。それは半分当たっていて半分外れています。当然ですが「ディズニーランド大好き」以外に志望動機がない人は採用に至りません。例えば「入社して何をしたいですか」と聞いても、「大好きなので、パークで働けるなら何でもやります!」という人。入社後のイメージが全くできていなくて、ただ好きというだけでエントリーした人は難しい。私たちの事業が好きでエントリーしてくれるのはもちろんウエルカムですが、そのうえで「社員としてこういうことを成し遂げたい」とか、東京ディズニーリゾートをビジネス目線で捉え、どう貢献したいかしっかり考えている人と一緒に働きたい。

 ――エントリーシート(ES)は意外にシンプルですね。自己PR的な欄もありません。
 今年の設問は三つだけですが、「ディズニー大好き」だけでエントリーしていないか、企業研究をきちんとしているか、などは見えてきます。自己PRは面接で聞くので、先にもらっておく必要はありません。履歴書にも自己PR欄があるので、そこに書いてくれれば十分。ESの選考の時は設問の回答しか見ていません。名前も大学も性別もまったく見ずに、それぞれの回答だけ読んで合否を判断します。

■選考フロー
 ――選考フローは、ESで書類選考して、WEBテスト、面接という流れですか。
 ここ数年の選考フローはほぼ同じです。ESとWEBテストがワンセットで1次選考。2次選考はテストセンターでもう1回テスト。その期間中に自己PR の動画を送ってもらいます。動画を撮ることができない人もいるので、提出は必須ではありません。動画を見て「この人と一緒に働きたい」と思える内容ならテストセンターの結果に加点する。動画の内容あるいは動画を送らないことで減点にはしません。あくまで動画は加点要素です。あまり長い動画だと見きれないので基本的に1分間、今年のお題は「あなたの人生で一番頑張ったことをアピールしてください」といったものです。面接で緊張して本当の自分を出せずに終わる人も多いので、動画では「素」の自分を見せてほしいですね。

 ――自己PR動画とはユニークですね。どんな内容の動画が多いのですか。
 いろいろです。内容がどんなものであれ加点になる動画は、自分の素を出し「この人と一緒に働いてみたい」と思わせてくれるものです。こういう動画を提出していれば、面接で緊張しているときに「動画のイメージと随分違うけど緊張してる?」と声をかけてあげたりもします。それがきっかけでリラックスして面接で良い結果を出した学生もいますよ。中には凝った編集でつくり込んだ動画を提出してくる学生もいますが、編集のスキルを見たいわけではないので、そこはプラス要素にはなりません。

■グループディスカッション
 ――その後は面接ですか。
 まずグループディスカッション(GD)。今年は5人ずつの3グループに分け、1テーマ10分程度で計3テーマについて討議してもらいました。社会に目が向いているかを確かめるテーマ、企業研究をしっかりしていないと議論できないテーマなど。複数のテーマを議論してもらうことで、彼はこのテーマでは積極的に発言していたのに、次のテーマはほとんど発言がなかったとか、多面的に評価できます。苦手なテーマであったとしても、議論に貢献する方法はあるはず。テーマの得手不得手にかかわらず、安定してチームに貢献できていたかなどをチェックして面接に進める学生を決めます。

 ――GDの評価のポイントは?
 ベースは「話す」「聞く」がちゃんとできているかです。言いたいことを分かりやすく伝えられているか、周りの意見をちゃんと聞きとれているか。次に議論への貢献度。貢献の仕方は人によって違います。議論をリードする人、拡散した議論を集約する人、行き詰ったところで全く違う角度からボールを投げ込んで議論を活性化する人など。あらかじめチェックポイントを決め、結論までのプロセスの中でその貢献ができていればポイントをつける。単純に発言量では見ていません。それから議論に臨んでいる雰囲気も見ます。当社の事業はチームワークが大切な仕事なので、うまく議論に入れない人を巻き込める人は印象がいいし、逆に自分と反対の意見の人に攻撃的になる人は、正論を言っていたとしても「どうなの?」となる。

■面接
 ――その後の面接はどんな形式ですか。
 面接は3回。すべて個人面接です。1次も2次も最終も面接官2人対学生1人。1次、2次面接は1人に1時間近くかけます。最終の役員面接も30~40分かけます。
 我々の選考は、いかにその人の素を見るかに一番ウエートをおいています。採用してみたら選考の時と全然イメージが違ったというのでは、互いにハッピーじゃない。集団面接で1人10分程度だと素は見られないまま終わってしまうので、1人1時間かけてじっくり話を聞きます。面接に参加した学生も、1時間も根掘り葉掘り質問されたことで、言いたいことは全部出し切ったと感じて面接を終えることが多いようです。

 ――面接で素を引き出すコツは?
 オーソドックスな面接しかしていませんが、あえていえば大学生以前のことも時間をかけて聞きます。これは、私が社内でキャリアデザインの研修を受けた経験から取り入れました。研修でたまたま同じグループになったメンバーの話を聞いたら、私を含め、大事にしている価値観の原点がみんな小学校の経験でした。これが記憶に残っていて、人の本質を探るには、そのくらいさかのぼって話を聞かないとわからないと思ったんです。
 あと、過去をさかのぼってその人の長い歴史を確認しておいた方が、この先長い時間一緒に働けるかどうか判断しやすい。結婚を決めるとき、直近のことだけ聞いて決める人はあまりいないですよね。

 ――ほかに面接で工夫していることはありますか。
 私が担当する2次面接では、面接が始まるまでの待ち時間に学生に「モチベーショングラフ」を描いてもらいます。小学校からの人生を振り返って、ハッピーなら上に、アンハッピーだったら下に、バイオリズムのような曲線を描く。面接の最初に「小学校はこんなことがあって楽しかったけど、中学校は部活が厳しくて……」などと説明してもらってから、一つひとつ深掘りしていきます。