人事のホンネ

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【特別編 Part1】
「好き」だけじゃダメ!ただの「ファン」を卒業するには?

2018年04月17日

 「人事のホンネ」では、5年間で約70社の採用担当者に直撃インタビューをしてきました。会社によって個性がある一方、どの会社も求めることや、業界ごとの特徴もあります。そんな中から、就活生が気をつけるべきポイントをテーマ別に整理してお届けします。まずは、「好きな会社」を目指す人へ。(編集長・木之本敬介)

(写真は、東京ディズニーリゾート開園35周年のPRで小池百合子都知事を表敬訪問したミッキーマウス、ミニーマウスと親善大使の福本望さん=16日)

「大好き」だけでは採用されない

 企業を選ぶとき、その会社の商品やサービスが「好きだから」という人が多いと思います。身近な食品や化粧品、家電、アパレルといったメーカーのほか、エアライン、レジャー・アミューズメント、マスコミといった業界には、とくにその傾向が強いでしょう。もちろん、悪いことではありませんし、「好き」がきっかけになるのは当たり前でもあります。でも、「好き」だけでは受かりません。採用担当者はこう言っています。

オリエンタルランド】「ディズニーランド大好き」以外に志望動機がない人は採用に至りません。「入社して何をしたいですか」と聞いても、「大好きなので、パークで働けるなら何でもやります!」という人。入社後のイメージが全くできていなくて、ただ好きというだけの人は難しい。私たちの事業が好きでエントリーしてくれるのはウェルカムですが、そのうえで「社員としてこういうことを成し遂げたい」とか、東京ディズニーリゾート(TDR)をビジネス目線で捉え、どう貢献したいかしっかり考えている人と一緒に働きたい。

 「大好きで何でもやる人ならいいじゃん」と思った人もいるかもしれません。考えてみてください。そもそもTDRを好きではない人、興味がない人はオリエンタルランドを志望しませんよね。大半は大のディズニー好きです。その中で「一番好きなのは私です!」「小さなころからミッキーの大ファンでした。誰にも負けません」と言ったら受かるでしょうか。おそらく「ありがとうございます。これからも遊びに来てくださいね」と言われるのがオチです。単に好きなだけの人は、そのままファンで居続けてくれたほうがいいわけです。求められるのはTDRで遊ぶのが大好きな人ではなく、TDRに来るお客さんにどうしたらもっと楽しんでもらえるかを考えられる人、そこに喜びを見いだせる人です。

自分より「他の人」がポイント

 モノづくりの人気メーカーも同じです。やはり、お客様、「他の人」がポイントです。

資生堂】単に「資生堂が好きなので」と言う人もいます。大変ありがたいことですが、仕事は仕事でハードですから、それだけでは続かない。会社を通じて、お客さまに対してこんなことがしたいという思いがあればモチベーションを保てる。
お客さんにどう喜んでもらえるかという顧客志向が高い人がいい。「好き」や「憧れ」だけではなく、自分が何をやりたいのかきちんと考えてほしい。

バンダイ】「自分の好きな物がある」というだけならユーザーのままでいてもらったほうがお互いのためになる。社員になるためには、「誰かに何かをしてあげたい」という気持ちがセットにないとダメ。自分じゃなくて、周囲の人の「好き」を追求できるかどうか。自分が好きなものがあるからこそ、他人の好きなものもわかってあげられるという風になると一番いいと思います。そこは面接でもすごく質問しますね。
 「おもちゃ好き」より「子どもの笑顔を見るのが好き」が大前提だという気はします。

コクヨ】自分が(文房具を)「好き」なだけではなく、「文房具が世に送り出されるところまで携わりたい」という思いが大事です。「自分が使うだけではなく、人に使ってもらう」という気持ちですね。
 「文具が好きで、持っているだけでわくわくする」と話す人がいますが、他の人にもその気持ちを届けたいのかどうか。そして届けたい「他の人」はどういう人なのか。学生なのか、ご高齢の方なのか、小さいお子さんなのか、働いている方なのか。それぞれの方が文房具を使うのはどういうシーンなのか。

「嫌い」でもいい?

 好き嫌いは関係ない、という会社もあります。

日産自動車】好きなほうが多少はいいでしょうが、選考にはあまり関係ありません。なぜ日産か、なぜ自分はこの仕事をしたいのか、自分は何者かということを自分の言葉で書けて、話せることのほうが重要です。

カゴメ】ESに「生トマトが嫌い」と書いてきた学生がいます。味は嫌いでも栄養価などの価値をちゃんと把握してお客様に提案できれば営業はできるのでマイナス評価にはなりません。好き嫌いではなく、自分が仕事とするものに価値を見いだせる、付加価値をつけられれば大丈夫です。実は私も学生時代は生トマトが苦手でしたが、トマトの価値は十分認識していて今はトマトジュースを毎日飲んでいます(笑)。

 極端な例ですが、トマトを食べるのが嫌いでも、食材としてのトマトに価値を見いだし、トマトからつくった商品を扱う仕事に魅力を感じられる人ならいいんですね。

「好き」はとことん

 人気のマスコミはどうでしょう。

テレビ朝日】テレビが好きでないと務まらないタイトな仕事もあります。そんな時、「名が通っていて面白そうだから来ました」など、ふわっとした志望理由で入った人は、入社後うまくいかないかもしれない。だから、「テレビが好き」というところをきちっと確認します。現場志望に限らず、ビジネスセクションでも技術系でも一緒です。どの仕事に就いてもテレビが好きであって欲しい。熱意も大切な判断基準です。

講談社】出版社の自己PRや志望動機で「本が好き」というのは当たり前で、それだけだと何も言ってないのと同じです。なんで本を好きになったのかを聞きたい。きっかけを聞くことで、その人らしさを引き出せる。憧れだけじゃなくて、自分の職業としての本、雑誌をちゃんと理解しているか。本や雑誌が好きといっても実際はそこに載っている何かが好きなはずで、本や雑誌を通じて伝えたい何か、そういう「好き」を持っているか、それに対する熱量も含め見ています。

 中途半端な「好き」では通用しません。ただ、とことん「好き」なら、熱意も伝わるようです。

「その会社で働く」「商品を買う」どっちが幸せ?

 こんな会社もありました。

ワコール】面接で、商品やブランドが好きと話す人もいますが、それだけで入社はできません。よく会社を調べれば、「この会社で働くのが幸せか」「この会社の商品を買うのが幸せか」の判断がつくと思います。ぜひイベントに来て、社員に会って話を聞いてください。突っ込んで質問してくれれば全部話すので、「自分が働きたい」のか、「消費者でいたい」のか、判断してほしい。

 分かりやすいですね。働きたいのか、商品のファンでいたいのかの選択です。就活生は、「好き、憧れ、有名」という視点で会社を選ぶ「消費者目線」を抜け出して、自分が「働く、つくる、売る」立場に立って考える「ビジネス目線」をもたなければなりません。しっかり企業研究をして社員に会って会社と仕事を知り、会社で何をしたいのか、じっくり考えてください。

みなさんに一言!

 「なぜ」を掘り下げるのも大事です。

ソニー】ソニーの商品が好きであることを切り口とするなら、なぜ好きなのか、どういうところが好きなのかを掘り下げて考えてみたら何か発見や気づきがあるのではないでしょうか。

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