人事のホンネ

株式会社ワコール

2019シーズン【第11回 ワコール】
ブラジャーを「がむしゃら」に! 仕事に男女差なし

人事総務本部 人事部 人材開発課 寺師尚ノ介(てらし・しょうのすけ)さん

2018年03月20日

 企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2019シーズン第11回は、「世の女性に美しくなって貰う事」を経営理念に掲げる大手下着メーカー、ワコールです。女性中心で男性は肩身が狭いのかと思ったら、イメージとは異なり「男女関係なく、がっつり働く」会社だとか。採用担当も若手イケメン社員でした。(編集長・木之本敬介)

■採用実績
 ――採用実績を教えてください。
 2018年4月入社の総合職の内定者は38人です。文理別では文系が32人、理系が6人、男女別では男性20人、女性が18人です。この他に技術研究職が6人で、品質管理や技術設計部門、ワコール人間科学研究所への配属になります。さらにデザイナー、パタンナーとしてクリエーターが4人入社します。ワコール女子陸上競技部「スパークエンジェルス」でも6人を採用しました。
 また、私たちが「ビューティーアドバイザー(BA)」と呼ぶ販売職は、首都圏、関西、東海、九州のエリア別採用で、計44人でした。
2017年入社は、総合職が28人(男性13、女性15)。この他に技術研究職が3人。クリエーター採用は7人、スパークエンジェルスが2人、販売職は55人でした。

 ――総合職の採用数を増やしたんですね。
 この5年ほど総合職の採用数は30人前後で、2018年卒も同じ予定だったのですが、内定受諾率が高く結果的に増えました。今回は企業を絞って選考に進む学生が多かったことと、人事部側が内定出し後に時間をかけて電話やメールでフォローしたためではないかととらえています。

 ――「技術研究」は理系学生が対象ではないのですか。
 技術研究職は、人間科学研究所か技術設計や品質管理に配属されますが、学術的に学んできた人だけでなく、興味がある学生に来てほしいので、学部の縛りは特にありません。
 主要事業が女性のインナーウェアなので、技術研究職とクリエーター職には主に服飾系や家政系の大学や、専門学校で学んだ方を採用しています。

■女性と男性
 ――全社員の男女比は?
 数が多い販売職は仕事柄「女性限定」なので、全体では8割~9割が女性です。

 ――総合職採用はずっと男女半々程度ですか。
 総合職採用だけでみれば、以前は男性が6~7割で、女性は3~4割でした。近年はだいたい半々でしたが、3年前に初めて女性の採用人数が男性を上回りました。女性の比率を上げようとしたわけではなく、結果としてです。総合職志望の女性が増えているからだと思います。

 ――女性の経営陣や管理職は何人?
 女性取締役はワコールで1人、ワコールホールディングスも社外取締役に1人いるだけ。ワコール全体の女性管理職比率はやっと20%を超えたところです。意外に少ないと思われるかもしれませんが、女性の総合職採用を始めたのが25年ほど前。必要な人材を中途で外から採るのではなく、社内で育てる方針なので、これから多くの女性役員が誕生すると思います。

 ――仕事上の男女の違いは?
 販売職を除くと、社内に「男だから」「女だから」できる仕事、できない仕事はありません。ブラジャーの企画に男性も普通に参加しますし、営業の泥臭い仕事に女性も多く携わります。性差は一切関係ありません。
 ただ、性差による得意な部分、苦手な部分はあると思います。男性にはブラジャーを着用する感覚はわからないし、女性の「かわいい!」という感覚を共感するのは正直難しい。そのため私がセールスマンだったときは、できるかぎり客観的に売場や商品と向き合うようにしていました。性差よりも個人個人のパーソナリティーやコミュニケーション力のほうが重要だと思います。

 ――女性にしかできない仕事もありますよね。
 商品が女性用のインナーウェアなので、デザイン業務やパターンなどの設計業務は女性が中心です。ただ、マーチャンダイザー(MD)やマーケティングといった仕事には男性も携わっています。

 ――男性社員は居心地が悪くない?
 全く悪くありません(笑)。そもそも男女間のコミュニケーションが苦手な人はこの会社にいないと思います。女性も「私は女だから」という態度の人はいませんし、僕たちより「男前」の方もたくさんいます。
 ワコールの経営理念は「世の女性に美しくなって貰う」こと。創業者である故・塚本幸一の理念です。塚本は第2次世界大戦でもっとも過酷な戦いとして知られるインパール作戦の生き残りです。その塚本が復員後に「女性がきれいに着飾れる社会、つまり戦争のない平和な世界づくりに貢献したい」という思いで創業しました。
 その理念にみんなが共感、共鳴し、同じ熱量をもち、ブランドに誇りを持って話ができる会社であることが大きな特徴です。

きれいな商品の裏に苦しみも 「会社で働く」「その商品買う」どっちが幸せ?

■インターン
 ――インターンシップについて教えてください。
 1月から3月に、東京地区と関西地区で月1回ずつ実施しました。インターンの目的は採用選考ではなく、外から見るワコールと、中から見えるワコールのギャップを埋めてもらうために実施しています。学生にある先入観や間違ったイメージを払しょくし、働くイメージを具体的にもったうえで選考に進んでもらいたいと考えています。
 具体的には「仕事体感プログラム」という名前で、3~4時間かけて社内の会議や営業の仕事のミニチュア版を体験してもらいます。さまざまな部門の社員が参加し、座談会形式での交流も行います。会社の雰囲気を感じ、コミュニケーションがどう行われているのか見てもらう。腹の内をさらけ出して、「いいな」と思う学生が来てくれればいいし、「少し違うな」と思ったら離れてくれていい。

 ――参加者数は?
 各回100人、東京と関西で午前と午後開くので、月に400人、計1000~1300人くらい参加します。
 男女比は、男子が2~3割で女子が7~8割ですね。エントリーシート(ES)で選考します。1月のインターンの倍率は15倍ほどでした。

■エントリー
 ――採用選考のエントリー数を教えてください。
 提出されたESの数は、2016年卒採用が4713通、2017年卒が4265通。2018卒が4320通でした。プレエントリー数はその3倍、1万2000から1万3000人くらいです。
 2014年卒のころはESが8000から9000通来ていたので、エントリーの段階で学生側が企業を選別していると感じます。
 アパレル業界全般に厳しい流れも感じます。ファッションに憧れを持つ若者が少なくなっているからです。百貨店や量販店といったチャネルが厳しくなり、中堅アパレル業界は右肩下がりで、ファッションの価値が昔ほど高くないというのも事実です。
 消費の面でも、服に使うお金がどんどん減っています。スマホの通信費が上がる半面、服の優先順位は下がりました。

 ――エントリーの男女比は?
 2018卒採用では女子8対男子2でした。あと、関西の学生が多い。男女比と東西比がはっきりしているのが特色です。

 ――男子学生対策をとっていますか。
 基本的に総合職採用の担当は私1人です。つまりワコールで学生のみなさんと一番に出会うのは、私です。女性の会社というイメージが強い当社ですが、男性の私が前に立って話すことで、学生はいい意味の違和感を感じ、「男女関係なく、がっつり働いている会社」だと実感してくれると思います。
 説明会やインターンでは、きれいな仕事をするだけの会社ではないことも伝えます。きれいに見える商品や仕事の裏側にはこんなこともあって、苦しいこともたくさんあるよ、と内情を伝えるように心がけています。

 ――寺師さんが担当になったことが男性重視の表れ?
 男女に差をつけて採用することはありませんが、そもそも男性が働く会社ではないと思っている男子学生が多いのは事実です。そのイメージギャップを埋めるのが私の役割です。最初に接する相手で会社のイメージはかなり変わりますから。
 地域でいうと、関西の学生には知名度がある一方、関東にはなじみがないためイメージが湧きにくいと言われます。最近では、関東の学内説明会やイベントにも積極的に出るようにしています。

■ES
 ――採用スケジュールを教えてください。
 ESを3月下旬から4月上旬に出してもらって、1次面接が4月下旬から5月上旬。適性検査をテストセンターで受けてもらい、2次面接が5月上旬から中旬。3次面接を5月中旬から下旬にかけて行い、最終面接は6月から随時行います。
 2018年卒の内々定は、6月の2週目から随時出して、6月中に出し終わりました。

 ――ESに、自分のキャッチコピーを書かせて、それが伝わる写真をアップロードさせる項目がありますね。
 どんな学生が来るのかあらかじめ知って臨むと面接がスムーズになります。就活用の作られた顔ではなく、フラットな状態のあなたはどういう人間で、どんな事が好きで、何を頑張ってきたのかを理解するには、写真と文字がセットだとしっかり伝わってきます。
 写真は、サークル、部活、アルバイトのほか、旅も多いですね。中には写真と面接の印象がちぐはぐな人もいます。自分を誇張したり、よく見せようとしたりして写真のイメージと実際に会った人物像に違和感を感じる事も。面接で確認しますが、素を見たいので取り繕わないでほしいですね。

 ――「あなたにとってのがむしゃら体験」とあります。聞き方がユニークですね。
 採用ホームページ(HP)も「がむしゃらに輝け。」をコンセプトメッセージにしていて、学生時代の「がむしゃら」エピソードを教えてくださいという趣旨です。
 会社のイメージを勘違いしないでほしいという狙いもあります。ブラジャーと「がむしゃら」はイメージが結びつかないと思いますが、社内に入ると意外に近い。なりふり構っていられない仕事もあります。たとえば、きれいなブラジャーがたくさん並んでいる裏で、ポロシャツ姿で汗だくになって作業することも。必死に頭をひねり悩みながら企画やプロジェクトを完遂させていく仕事もあります。どんな場面でも、どんな場所でも一緒にがむしゃらに働ける仲間を求めているというメッセージを込めています。

 ――「変革力を物語るエピソード」の欄の狙いは?
 求める人物像は「自律革新型人材」です。会社の理念に共感し、チームワークを大事にしながら、力を発揮してほしい。そのうえで、チャレンジングに自己研鑽を怠らず仕事に取り組んでほしいのという定義です。
 これからの時代、経験したことがないスピードで変化が起きます。市場環境も変化が当たり前です。どんな環境でも、しっかり自分の意思を持ち、声を上げ、新しい活路を見いだせる人材を求めています。
 2018年のワコールの年間行動テーマは「出る杭になれ!」です。会社全体で変化するぞ、変化を受け入れられる人間になることを目指しています。

 ――ESで重視するポイントは?
 腹を割って自分を出してくれることが大事です。うまく書こうと思えば、きれいな文章で書けますが、それであなたのこと伝わってきますか? 面接の準備資料なので、「私はこういう人間です。こういうことをしてきて、こんなことが好きで、だからこの会社で頑張りたい」と自分の言葉で自分自身をちゃんと表現してくれているかを見たいです。

 ――女性の志望動機は「商品が好き」が多いのでしょうか。
 面接で、商品やブランドが好きと話す人もいますが、それだけで入社はできません。男女ともにです。「消費者目線」から抜け出せないと当社で働くイメージに結び付きづらい。みなさんワコールが好きで入社を志望すると思いますが、単に「好きで」より、たとえば「スポーツを続けてきて、ワコールで展開するスポーツブランドに支えてもらった。商品をつくる側になってこの思いを届けたい」という考えを持つほうが、働くイメージを抱きやすいはずです。

 ――「消費者目線」から抜け出すにはどうしたらいい?
 よく会社を調べれば、「この会社で働くのが幸せか」「この会社の商品を買うのが幸せか」の判断がつくと思います。ぜひイベントに来て、社員に会って話を聞いてください。突っ込んで質問してくれれば全部話すので、「自分が働きたい」のか、「消費者でいたい」のか、判断してほしい。
 「会社が好き」と言うのに「何がしたいか」を答えられない人も困ります。具体的にどんなことがしたいのか、志望動機、職種選択がぼんやりしている人ですね。ESからも話しても、すぐ分かります。

 ――男性の志望動機は?
 男子は下着以外の事業を志望する人が多いです。スポーツブランド「CW-X」は、コンディショニングするウェアをコンセプトに、ランナーなどに人気です。大リーグのイチロー選手のスポンサーもしているのですが、健康志向の高まりを受けてウェルネス事業を希望する学生も多いです。

人気記事