ニュースのポイント
「原発ゼロ」を主張する小泉元首相が、安倍首相に「即ゼロ」を迫りました。高い支持率で長く首相を務め、いまだに影響力のある人の発言だけに、今後も論議を呼び、原発ゼロは大きな政治課題となりそうです。経済界にとってはセンシティブな話題ですが、自分の考えをまとめておきましょう。
今日取り上げるのは、1面トップの「原発『即ゼロ』 首相に迫る/小泉元首相会見/『決断すればできる』」、2面の「小泉発言 政権を挑発」です。
記事の内容は――小泉元首相が記者会見で「首相が決断すればできる権力、それが原発ゼロの決断だ」と安倍首相に原発即時ゼロの方針を打ち出すよう迫った。「再稼働すると核のごみも増えていく」として、再稼働反対の立場も鮮明に。これに対し菅官房長官は原発を活用する政策を続ける考えを示し、大手電力幹部は困惑している。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
原発政策の主な動きをまとめると――。
2011年
3月 東日本大震災、福島第一原発事故
2012年
5月 国内の全原発50基停止、原発ゼロ状態に
7月 自然エネルギー固定価格買い取り制度開始/関西電力大飯原発3号機再稼働
9月 野田政権、「2030年に原発稼働ゼロ」の目標を決定
12月 民主党から自民党に政権交代
2013年
2月 安倍首相、「安全が確認された原発は再稼働」表明
6月 成長戦略に「原発の活用」明記
9月 大飯原発4号機定期点検で停止、再び原発ゼロ状態に
10月 三菱重工業の企業連合が原発受注でトルコ政府と合意
民主党政権は原発ゼロの方向性を打ち出しましたが、自民党の安倍政権は「原発の活用」に方向を転換。原発輸出にも積極的ですが、どこまで依存するかの方針は決められていません。この間、停止した原発の再稼働は進まず、ほぼ原発ゼロの状態が続く一方、火力発電の燃料を輸入する費用はかさんでいます。
原発ゼロについて、経済界には「現実的ではない。経済成長にも影響する」として反対論が大勢です。大手電力会社に加え、日立製作所、東芝、三菱重工業という大手原発メーカーにとっては経営を直撃する問題でもあります。ただ、孫正義・ソフトバンク社長は「原発に死ぬまで反対」と明言して自然エネルギー開発に取り組んでいるほか、三木谷浩史・楽天会長や新浪剛史・ローソン社長は原発再稼働に慎重な姿勢で経済界にも様々な意見があります。新聞社の論調(社説などで表明する意見)も賛否が分かれています。全国紙では朝日、毎日が脱原発に前向き、読売、日経、産経は慎重姿勢です。
「脱原発」をめぐっては、10月31日の朝刊オピニオン面で小熊英二・慶応大教授が興味深い文章を書いています。ドイツでは政府が脱原発を宣言したが、実際には多くの原発が動いているのに対し、日本では政府は宣言していないが、原発反対の強い民意で実質的に脱原発を実現しつつあるというのです。ぜひ読んでみてください。
就活では、一般的に政治的な問題への賛否を問われるようなことはあまりないと思いますが、どう思うかは聞かれるかもしれません。原発政策は、日本の経済、社会の将来を左右する大テーマです。日々の記事を読んで、自分なりの意見を持つようにしてください。報道機関の面接では、賛否を含めて意見を求められる可能性があります。マスコミ志望者は必須ですよ。
※朝日新聞デジタルの無料会員は1日3本の記事全文を、有料会員になればすべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。ぜひ登録してください。