ニュースのポイント
大学入試を「人物本位」に改める大学入試制度改革が議論されています。賛否両論が飛び交っていますが、みなさんがこれから挑む企業の採用試験は、もともと人物本位の選抜です。企業は最初から平等や公平性など追求せず、ひたすら「我が社にとっていい人材」を求めるからです。みなさんにとって、正解のない「人物本位」の採用選考は戸惑うことばかりでしょうが、対応するしかありません。
今日取り上げるのは、オピニオン面(17面)の「脱・点数主義の罠/人物本位入試は『育ちの良さ』次第大学の力も衰える/勉強が人間を作る 改革すべきは制度より教育内容」です。
専門学校や大学の改革に取り組む哲学者・芦田宏直さんのインタビューの冒頭部分の概要は――入試の点数だけで合格を決める点数評価こそが、格差の少ない民主的な社会を作ってきた。人物本位の入試はそれに逆行し、格差を固定化する危険がある。生まれ育った過程や地域で人を評価する身分主義ではなく、努力して勉強した人が世の中の指導的な立場に立つのが学歴主義。「努力主義」ともいえる。人物本位は「本人の努力が届かない、育ってきた環境も含めて人を評価しよう」という考え方。面接で初対面の人に好感を与える能力は、本人の意思や努力より、家庭や地域など環境に左右される面が大きい。人物本位とは「育ちの良さ」を見ることだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
安倍政権が設置した教育再生実行会議(座長は鎌田薫・早稲田大学総長)がまとめた大学入試改革に関する提言は、①現行のセンター試験を改変し、成績を点数ではなく、上位から下位まで何段階かにランク分けして表示②意欲や潜在能力がある学生を迎え入れるため、面接や課外活動、留学の経験などによる人物本位の選抜に転換する――などが柱。具体的な制度設計を議論し、5~6年後の実施を目指しています。提言は点数評価に基づく学歴主義を見直そうというものです。多くの課題を指摘されつつも、改革の方向性については好意的な評価が多いようです。そんな中で、「人物本位」を真っ向から否定し、点数評価こそが格差の少ない民主社会の礎(いしずえ)であるという芦田さんの意見は、大変興味深く新鮮でした。今日の「声」欄にも、反対意見が載っています。
一方で、これからみなさんが臨む就活は、基本的に「人物本位」です。適性試験で足切りをする企業や、朝日新聞社のように時事問題の筆記試験をする企業もありますが、ペーパーテストの高得点者を無条件で採用する企業はありません。すべての企業が最終的には面接試験で採用を決めます。しかも点数評価のような明確な基準はなく、あったとしても明らかにはされません。人が人を選ぶのですから、印象がものをいう世界ですし、面接官との相性が悪ければ選ばれません。落ちた理由すら伝えられず、「お祈りメール」が届くだけ。採用選考は就活生にとっては、極めて理不尽な戦いとも言えます。みなさんは、その企業の土俵で戦わなければならないのです。
ただ、有利に戦うためにできることはあります。基準や正解はありませんが、企業によって傾向や特徴はあります。企業がどんな人材を求めているのか、どんなエントリーシートがNGなのか、情報を集めることです。OB・OG訪問をし、その企業で働いている人から直接話を聞きましょう。さらに「就活ニュースペーパー」の「人事のホンネ」は、みなさんがなかなか聞けないようなことを、各企業の人事・採用担当者から聞き出してお伝えするコーナーです。これからたくさんの企業のホンネを掲載していきます。ぜひチェックしてください。
大学入試改革は、今後さらに大きな議論になっていくと思います。関心が高いテーマなので、グループディスカッションのお題になったり、面接で話題になったりするかもしれません。賛成でも反対でも構いません。あなたなりの意見を言えるよう、新聞記事を材料に考えてみてください。
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