2024年12月09日

韓国で「非常戒厳」 日本の改憲論議も深める必要【週間ニュースまとめ12月2日~8日】

テーマ:週間ニュースまとめ

 この週でもっとも驚かされたニュースは、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が出した「非常戒厳」でした。非常戒厳とは、一般的に戒厳令と呼ばれるもので、災害や戦争、クーデターなどの際に政府が軍隊を出動させて暴動を鎮圧したり、国民に外出を禁じたりするために出されます。しかし、今回の戒厳令は大統領が政治的な苦境を打開するために出したことが明らかで、戒厳令の使い方としては異例としか言いようがありません。韓国政治の混乱は続いていますが、尹大統領が墓穴を掘った結果になるでしょう。

 日本の憲法には戒厳令の規定はありませんが、戦前の大日本帝国憲法にはあり、日比谷焼き打ち事件(1905年)、関東大震災(1923年)、2・26事件(1936年)などの際に出されました。今おこなわれている日本国憲法の改正の議論では、緊急事態条項を設けることが論点になっていますが、今回の韓国の使い方を見ると、政府が国民を弾圧する手段にもなる怖さも感じます。日本に緊急事態条項は本当に必要なのか、必要だとすればどんな制約をつけるべきなのか、議論がもっと必要だと思います。(ジャーナリスト・一色清)
(写真・韓国の尹錫悦大統領の退陣を求める集会に参加する人々=2024年12月5日、ソウル/朝日新聞社)

【国際】韓国大統領が「非常戒厳」を宣布 官僚の弾劾訴追で「行政府がまひ」(12/3.Tue)

 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は3日夜、国民に向けた緊急談話を出し、「自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布する」と述べた。尹政権発足以来、多数の政府官僚の弾劾(だんがい)訴追が発議されるなどし、行政府がまひしていることなどが理由だとしている。これを受け、戒厳司令官が一切の政治活動などを禁じる布告令を出した。国民生活が大きく制限される恐れがある。
 尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は4日未明、前夜に宣布した「非常戒厳」を解除した。国会の解除要求決議を受けたもので、戒厳のために投入した軍も撤収させた。(12/4.Wed)
 尹錫悦大統領に対する弾劾(だんがい)訴追案の採決が7日、国会の本会議で行われた。保守系与党・国民の力は党として反対の方針を決め、大半の議員が議場から退席。投票者数が規定に達せず不成立となり、弾劾案は廃案となった。「非常戒厳」を宣布した尹氏はいったん退陣を免れ、職務を継続するが、今後も厳しい政権運営が予想される。(12/7.Sat)

【文化】「伝統的酒造り」ユネスコ無形文化遺産に登録 こうじを使った技術(12/4.Wed)

 ユネスコ(国連教育科学文化機関)は4日(日本時間5日)、日本が提案していた日本酒や焼酎などを造る技術「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録した。パラグアイで開かれている政府間委員会で決議された。国内から登録された無形文化遺産は23件となった。ユネスコの委員会は、伝統的酒造りについて「神々からの聖なる贈り物とされる酒は、祭りや婚礼、通過儀礼、社会・文化的な場などで不可欠」とし、「日本文化に深く根ざしている」などと評価した。

【経済】東京―新宿は50円アップ JR東日本が運賃値上げを申請(12/6.Fri)

 JR東日本は6日、2026年3月からの平均7.1%の運賃値上げを国土交通省に申請した。認可されれば、山手線内の切符の最高運賃は280円から350円となる。消費税の導入や税率引き上げ、バリアフリー料金の上乗せを除けば、運賃改定は1987年の会社発足以来初めて。切符の初乗り運賃は150円から160円にアップ。東京駅からの運賃は新宿駅までが210円から260円に、高尾駅までが950円から1040円になる。

【社会】島根原発2号機、約13年ぶりに再稼働 県庁所在地唯一の原発(12/7.Sat)

 中国電力は7日、島根原発2号機(松江市、82万キロワット)の原子炉を起動し、再稼働させた。東日本大震災後の2012年1月に停止して以来、約13年ぶりの再稼働となる。これにより、原子力規制委員会が新規制基準に適合しないとして、再稼働に向けた申請を不許可にした日本原子力発電敦賀2号機(福井県)を除き、関西以西で現在稼働可能な7原発13基はすべて再稼働した。

【国際】シリアのアサド政権崩壊 反体制派が首都ダマスカスを制圧(12/8.Sun)

 内戦下にあるシリアの反体制派は8日、首都ダマスカスを制圧し、「アサド政権を打倒した」と発表した。政権を支えてきたロシアの外務省は同日、アサド氏の辞任とシリアからの出国を発表。20年以上にわたるアサド政権の統治は、反体制派が進軍を開始してからわずか11日で、崩壊を迎えた。反体制派は「(父の故ハフェズ・アサド元大統領の代からの)50年間の圧政を経て、暗黒時代の終わりと、シリアの新しい時代の始まりをここに宣言する」と表明。「新しいシリアでは、すべての人々が平和に共存し、正義が行き渡る」と主張した。政権側からの目立った抵抗がないまま、首都の制圧を進めているとみられる。
 ロシア国営タス通信は8日、ロシア大統領府の情報筋の話として、シリア大統領を辞任したアサド氏がモスクワに到着し、亡命を認められたと報道した。(12/8.Sun)

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