2020年06月01日

激化する米中対立 コロナ終息や世界経済復調にマイナス【週間ニュースまとめ5月25日~31日】

テーマ:週間ニュースまとめ

 アメリカと中国の対立が深まっています。中国は日本の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)を開き、香港での反体制的な言動を取り締まる法律を採択しました。1997年にイギリスから中国に返還された香港は50年間、独自の制度を保証されています。「一国二制度」といいます。しかし、今回採択された法律は香港の人たちを中国に従わせようとするもので、一国一制度になる恐れがあります。アメリカのトランプ大統領は中国が香港への影響力を強めることを警戒して強く反発、中国や香港に対する制裁の方針を打ち出しました。また、世界保健機関(WHO)から脱退することも発表しました。「WHOが中国に支配されている」という理由からです。こうしたアメリカの強硬姿勢にはトランプ大統領の置かれている立場も背景にあるとみられています。トランプ大統領は、新型コロナウイルスの感染抑え込みに失敗し、秋の大統領選に向けて苦しい立場に追い込まれています。中国を激しく攻撃することで、強い大統領として支持を得たいという思惑があるのではないかというわけです。アメリカでは今、白人警官が黒人男性を死亡させた事件をきっかけにした抗議行動が激しくなっています。このことも差別問題に鈍感だとされているトランプ大統領には不利な状況となりそうです。苦境が強まれば強まるほどトランプ大統領の中国攻撃は強まる可能性があります。そして世界の2大国の対立が深まれば深まるほど、新型コロナの終息や世界経済の復調にはマイナスになります。米中対立から目が離せなくなっています。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)

(図解は、ヒートアップする米中対立)

【政治】政府、緊急事態宣言をすべて解除 経済対策200兆円規模(5/25.Mon)

 政府は25日、新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川の5都道県の緊急事態宣言を解除することを決めた。4月7日に7都府県で出され、一時全国に広がった宣言は、47都道府県すべてで解除された。決定に先立ち記者会見を開いた安倍晋三首相は、緊急経済対策として今年度第2次補正予算案(事業規模100兆円程度)を27日に閣議決定すると表明した。首相は、宣言解除を受け、イベントの開催や外出などについて「感染防止対策を講じることを大前提に、本格的に再開していく」と表明。イベントの規模を数千人規模へ順次拡大するとしたほか、接待を伴う飲食店やバー、ライブハウスなどの営業再開に向けて6月中旬をめどに指針を策定し、感染防止対策に対して最大200万円を補助する考えを示した。25日に改定された基本的対処方針では、外出自粛やイベントの開催制限、施設の使用制限などについて、おおむね3週間ごとの3段階で段階的な緩和を打ち出した。

【国際】中国、香港治安法の導入方針を採択 一国二制度が岐路に(5/28.Thu)

 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は28日、香港で反体制的な言動を取り締まる「国家安全法制」の導入に関する決定を採択し、閉幕した。立法権を持つ全人代常務委員会が関連法案の制定作業に着手する。法律は早ければ8月にも可決し、施行される。「香港人が香港を統治する」との原則の下、維持されてきた「一国二制度」は岐路に立った。米国が強く反発しており、米中両大国の対立もさらなる緊張局面を迎えそうだ。香港の憲法にあたる香港基本法 23条は、国家の分裂や政権転覆の動きを禁じる法律を「香港政府が自ら制定しなければならない」と定める。だが、2003年に50万人規模の反対デモが起きるなど、香港市民の度重なる反発により現在まで制定に至っていない。決定は、香港政府に「早期の立法化」を求める一方、中国も香港の治安維持に責任を有し、立法権限を持つ点を明確にした。23条を骨抜きにし直接統治に乗り出す手法とも取れるが、全人代常務委の王晨副委員長は「昨年の風波(騒動)で香港の発展が害され、国家安全の危機に直面した。憲法に合致する手続きで、一国二制度は揺るがない」と主張した。

香港の自由がなくなる? 今さら聞けない「一国二制度」とは【時事まとめ】も読んでみてください

【経済】日産、6000億円超の赤字に転落 過剰値引きで悪循環(5/28.Thu)

 日産自動車が28日発表した2020年3月期決算は、1年間の最終的なもうけを示す純損益が6712億円の巨額の赤字となった。最終赤字は、リーマン・ショックがあった2009年3月期(2337億円の赤字)以来11年ぶり。カルロス・ゴーン前会長が大なたを振るい、多額のリストラ費用を計上した2000年3月期の6843億円に次ぐ規模となった。もとからの販売不振に、新型コロナウイルスの感染拡大が拍車をかけた。さらにゴーン時代の拡大路線の転換を加速するため、稼働率が落ちた工場の閉鎖や価値の引き下げなどで6030億円を特別損失として計上。赤字が拡大した。前年の純損益は3191億円の黒字だった。

【国際】トランプ氏、WHO脱退を表明 香港優遇措置も見直しへ(5/29.Fri)

 トランプ米大統領は29日、ホワイトハウスから対中政策を発表した。「中国に支配されている」とした世界保健機関(WHO)からの脱退と、「一国二制度」を前提とした香港への優遇措置の見直しが主な柱で、強硬な姿勢を打ち出した。中国の反発は必至で、米中対立がさらに激化しそうだ。トランプ氏は会見で、中国政府が新型コロナウイルスの感染拡大を隠蔽(いんぺい)したと主張。「WHOへの報告義務を無視し、その後もWHOが世界に誤った情報を出すよう、圧力をかけた」と述べた。WHOについても「米国が年間4億5000万ドルを拠出し、中国は4000万ドルしか拠出していないにもかかわらず、中国が完全に支配している」と批判し、「改革を求めたが、彼らは動くことを拒んだ。我々はWHOとの関係を終了させる」と表明した。

【科学】米有人宇宙船打ち上げ成功 シャトル以来9年ぶり(5/30.Sat)

 スペースシャトル退役以来9年ぶりとなる米国の有人宇宙船が米東部時間30日午後(日本時間31日早朝)、フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられた。米航空宇宙局(NASA)の飛行士2人を乗せて国際宇宙ステーション(ISS)に向かう軌道に投入され、打ち上げは成功した。今回の試験飛行が順調に終われば、8月末の次の飛行には日本の野口聡一飛行士(55)が乗る。宇宙船は、米宇宙企業スペースXが開発したクルードラゴン。ISSに向かう初の民間有人宇宙船で、同社のファルコン9ロケットで打ち上げられた。シャトルにも搭乗経験があるベテランのロバート・ベンケン飛行士(49)とダグラス・ハーレー飛行士(53)が乗り、試験飛行に挑んだ。

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