2017年05月18日

ロシア疑惑でトランプ政権に暗雲!日本企業も注視

テーマ:国際

ニュースのポイント

 アメリカのトランプ政権の行方ににわかに暗雲が立ちこめ始めました。司法省が特別検察官を任命して、トランプ大統領(写真)による司法妨害など、相次ぐ「ロシア疑惑」の真相究明に乗り出します。特別検察官が大統領の犯罪を捜査して上下両院が弾劾(だんがい)の審議をして有罪判決が出ると大統領は解任されます。ただ、上下両院とも与党共和党が多数のため、簡単ではありません。アメリカでは、大統領の解任にまで至った例は過去ありません。解任のハードルは高くても、手続きが進んでいる間、大統領の力は弱まる可能性が高く、アメリカ経済の波乱要因になります。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)


 今日取り上げるのは、総合面(1面)の「ロシア疑惑究明 新局面 米司法省が反旗 特別検察官を任命」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

次々に明らかになった4つの疑惑

 トランプ大統領のロシア疑惑は主に4つあります。古い順に書くと、①フリン前大統領補佐官が、駐米ロシア大使と対ロ制裁緩和で密約を交わしたという疑惑。②トランプ大統領が米連邦捜査局
(FBI)長官を突然解任した疑惑。③トランプ大統領がラブロフ・ロシア外相にイスラム国のテロ計画に関する情報を漏らした疑惑。④トランプ大統領がFBI長官に捜査打ち切りを要請した疑惑――です(図参照)。
 中でも、FBI長官に捜査打ち切りを求めた疑惑は司法妨害にあたり、司法の独立を重んじるアメリカでは重大な犯罪になります。司法省が大統領の意に反して特別検察官を任命したのは、強い怒りと危機感があったものとみられています。

共和党から賛成者が出る可能性も

 特別検察官が捜査をして重大犯罪だと判断しても、解任までには上下両院の審議があります。まず下院が弾劾訴追審議案を審議し、過半数の賛成が必要になります。次に上院で弾劾裁判を開き、3分の2以上の賛成で有罪となります。今の上下両院は与党共和党が多数なので、簡単ではありませんが、内容次第でハードルはクリアされるという見方もあります。共和党でも司法の独立の大切さを共有している人はたくさんいます。しかもポスト・トランプになるはずのペンス副大統領(写真)は共和党の主流派に受けのいい人物だと言われます。内容が悪質な場合は共和党からも訴追に賛同する人がかなり出るのではないかというわけです。

アメリカ経済が変調すると・・・

 ただ、結論が出るまでには時間がかかりそうです。2~3カ月で捜査がすむとは思えず、疑惑は当分疑惑のままで推移するものと見られます。つまりアメリカは低支持率のトランプ大統領がゴタゴタしながらも運営していくことになりそうで、政治的にも経済的にも不透明感が強まります。特に好調だったアメリカ経済が変調する心配が出ています。すでに、ニューヨークや東京の株式市場は慎重な空気になっています。日本経済はアメリカ経済の影響を大きく受けますから、アメリカの変調は日本の変調にもつながります。日本の企業はアメリカ政治の行方を注目しているはずです。就活生もアメリカの動きはきちんとフォローしておくようにしましょう。

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