2016年07月21日

変わる「爆買い」…経済情勢で売れ筋変化

テーマ:経済

ニュースのポイント

 日本を訪れる外国人客の「爆買い」が一服しています。訪日客の数は増えているのですが、1人が使うお金の額が減ったためです。売れ筋も変わってきました。どんな業界に影響するのでしょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、総合面(3面)の「訪日爆買い 一服/4~6月/1人あたり消費 2期連続減」と、経済面(8面)の「爆買い変調 焦る百貨店/売れ筋 低価格な消耗品へシフト/円高や税制変更影響」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

訪日客は増えたのに…

 「爆買い」については、この欄や「業界トピックス」のコーナーで何度も取り上げています。訪日客の3割近くを占める中国人の観光客がブランド品や家電製品、化粧品などをまとめ買いすることですね。
 記事によると、その爆買いの中身が変わってきたというのです。4~6月の訪日外国人客の1人あたりの消費額は15万9930円で、前年同期より9.9%減りました。1~3月も前年比5.4%減だったので、2四半期連続の前年割れです。なかでも中国人客の1人あたりの消費額は2割以上減りました。
 ただ、訪日客の数は伸びていて、1~6月の合計は28.2%増の1171万人でした。訪日中国人客も1~5月は前年比45%も増えました。訪日客の数は増えたけれど、あまりお金を使わなくなったわけです。
 日本百貨店協会によると、全国の主な店舗の6月の免税品の売上高は前年同月比20.4%減の130億4000万円で3カ月続けて前年を下回りました。外国人客の数は増えているけれど、宝飾品や時計など高額品の売れ行きが落ち、売れ筋が化粧品や食料品に移ったためです。総合免税店ラオックスの5、6月の客単価も前年同月比で4割減りました。(写真は東京都内の百貨店の免税カウンター)

なぜ変わった?

 原因の一つは円高です。昨年までは、アベノミクスなどの効果で1ドル=120円前後の水準でしたが、中国など新興国の経済成長が鈍ったことから今年に入って円高傾向に変わり、最近は1ドル=105円前後。中国の人民元に対しても円は前年より15%超高い水準です。円安になると中国人にとって日本への旅費や買い物が割安になり、円高になれば割高になります。
 もう一つは、中国の税制変更です。これまで個人が輸入する場合の関税は簡素で、買い物を持ち込むときの税率も低かったのですが、4月から通常の貿易並みの税が課されるようになったのです。
中国人観光客の数は増えていますから、一部のお金持ちだけでなく中間層で日本に旅行に来る人が多くなったという面もありそうです。

ニュースに敏感に

 こうした変化を受けてラオックスの担当者は「今は家電より日用品。訪日客のニーズをつかむ品ぞろえをしたい」と話しています。去年のように高級な炊飯器を並べても売れ残ってしまうでしょうし、売れ筋の日用品をそろえなければチャンスを逃してしまいます。お客さんの好みの動向に敏感でなければなりませんね。
 企業の人はニュースにも敏感です。たとえば、英国が欧州連合(EU)離脱を決めたあと、円高が急激に進み、一時は1元=15円台前半と約3年ぶりの円高元安水準になりました。円高傾向が続くと、訪日外国人客の数や買い物の内容にも影響するでしょう。世界の経済情勢と、みなさんが目指すビジネスは直結しています。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

テーマ別

月別