ニュースのポイント
東芝が利益を水増ししていた問題で揺れています。約6年間にわたり1500億円以上水増ししていたとされ、今日、田中久雄社長が辞任を表明するようです。企業の不祥事から、社風や体質が垣間見えることがあります。これからの対応にも注目しましょう。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、1面トップの「東芝利益水増し1518億円/第三者委報告/経営判断と認定」です。総合面(2面)に「時時刻刻・東芝不正 トップ起因/『チャレンジ』高い収益迫る/現場に圧力 水増し拡大」と「いちからわかる!東芝の会社運営ってちょっと違うの?」も載っています。
記事の内容は――東芝の決算を調べてきた第三者委員会が20日、報告書を東芝に提出した。2008年4月から2014年12月までの利益の水増しは、営業利益から本業以外の損益を差し引いた税引き前利益で1518億円に上った。第三者委は、水増しなどが「経営判断として行われた」とし、一部は経営トップが積極的に関与したと認定した。日本を代表するグローバル企業が会社ぐるみで不正決算をしていたことで、株式市場だけでなく、社会的な信頼も大きく揺らぐ。東芝は経営陣の大幅刷新や抜本的な再発防止策を迫られる。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
東芝といえば日本を代表する大手総合電機メーカーです。大手8社を改めて整理すると以下のようになります。
①産業用の発電設備などに重点を置く「重電3社」=日立製作所、東芝、三菱電機
②家電製品中心の「家電3社」=パナソニック、ソニー、シャープ
③IT分野に軸足=富士通、NEC
各社の2015年3月期決算では、三菱電機は売上高、営業利益、純利益がすべて過去最高を更新、日立は2年連続で営業利益が過去最高となるなど多くが好調でしたが、東芝は不適切な会計処理があることがわかり、発表を延期しています。
報告書によると、今回の東芝の不正決算の経緯は――。2008年のリーマン・ショックで業績が落ち込み、立て直しを迫られた当時の佐々木則夫社長(現副会長)は、目標どおりの利益を出せない部署に会議の場やメールで「チャレンジ」と称して目標実現を強く要求。目標は、実現できそうもない高い水準だったため、現場はこの指示で会計を操作せざるを得ない状況に追い込まれ、インフラ、パソコン、半導体などの各事業で水増しが行われた。2013年に社長になった田中氏も問題を認識しており、2015年3月までに解消した事業もあったが、多くは続けていた。東芝の
会計監査をしている
監査法人が高すぎる利益に疑問を持ったが、経理担当者がうその資料をつくるなどして水増しの事実を隠していた。
企業の不正な会計処理はこれまでにも度々発覚し、大きな問題になりました。代表的な例に、西武鉄道(2004年)、カネボウ(同)、ライブドア(2006年)、IHI(2007年)、オリンパス(2011年)などがあり、株式市場で上場廃止になったり、経営陣らが逮捕されたりしたケースもあります。西武鉄道を傘下にもつ西武ホールディングスは昨年、東京証券取引所に再上場を果たしましたが、カネボウ、ライブドアは他社に買収されました。
第三者委の報告書には「東芝においては上司の意向に逆らうことができないという企業風土が存在していた」との表現があります。会社組織にトップダウンの指示はつきものですが、指示の内容が「おかしい」と思っても、そうは言えない雰囲気があったとの指摘です。風土や社風は、これから働く会社を決めるみなさんにとってとても大事なポイントです。どの会社を受ける人も、これまで会社説明会やOB・OG訪問、リクルーターとの接触で、風土や社風を感じ取っていると思います。これからの面接も、会社がみなさんを選考するだけでなく、みなさんが会社の雰囲気を感じ取ることができる機会です。学生への接し方、上司と部下の話しぶりなどから、自分に合いそうなのか探ってください。東芝については、これからまとめる再発防止策にどんな取り組みが盛り込まれるのか、注目してください。
※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。